一年付き合ってた彼女が医大生とラブホから出てきた(NTR……涙)。帰り道、川で幼女が溺れていたので助けて家まで送ってあげたら学園のアイドルの家だった。
第14話 自問自答 ~蒼太SIDE~、 ~美月のあのね帳~
第14話 自問自答 ~蒼太SIDE~、 ~美月のあのね帳~
その日の夜。
俺はベッド脇の床に座ってベッドに背中を預けながら、手の中にあるスマホの画面を見つめていた。
画面に映っているのは「優香」という名前と、とびっきりのSランク美少女が可愛らしくはにかみながら、ほっぺの横でダブルピースをしている写真だ。
偶然に偶然が重なって仲良くなった学園のアイドルの連絡先を、俺はさっきからずっと見つめ続けていた。
「げっ、もう10時じゃん。連絡してみようかなと思ってから1時間以上たってるぞ……」
優香に連絡しようかどうかグダグダと悩んでいるうちに、いつの間にかこんな時間になってしまっているなんて。
「でもなぁ……俺から連絡するとちょっとやらしいよなぁ……」
美月ちゃんを助けた恩人という断りづらい立場なのをいいことに、学園のアイドルである優香とお近づきになろうとしていると思われるかもしれない。
「っていうか間違いなくそう思うよな。俺が優香でもそう思うぞ」
その場合、優香の中の俺の評価は地の底まで落ちてしまうだろう。
女の子の弱みに付け込むゲス男。
というか優香だけに限らず、女の子相手にそれをやった時点で男として相当終わってる。
「それに彼女に振られたばかりで即、次の女の子にアタックしてる尻軽チャラ男とか思われるのも嫌だよな」
葛谷とのことは、俺の中でもうガツンと大きく区切りがついている。
だけどそれはあくまで俺の心の中の話にすぎないのだ。
端から見たら俺は失恋したばかりの男子なんだから。
「妹を助けてくれたからちょっと優しくしてあげただけなのに、自分に気があるみたいに勘違いしてくる、しかも女の子なら誰でも好きになる勘違い男、とか思われたら最悪すぎるぞ……」
優香と連絡先を交換したとはいえ、俺たちはクラスメイトにもかかわらず今日初めて話したような浅い間柄だ。
浅いっていうか昨日までは文字通り「ゼロ」。
本来なら、異性として好意があるとかそういう以前の段階だ。
「でも仲良くなれるなら優香と仲良くなりたいって、思っちゃう自分がいるんだよな……」
お姫様みたいに美人で綺麗で可愛い優香。
だけどそれを鼻に掛けたりはせずに誰にでも優しくて。
しかも家に帰ると、優しくて面倒見のいいお姉ちゃんへと早変わりするのだ。
そんな優香に俺はどうしようもなく魅力を感じていた。
というか俺に限らず、こんな素敵な女の子に魅力を感じない男なんていないだろ?
それはさておき。
「振られたことについては、美月ちゃんを助けた時に俺の中でリセットボタンが押されたみたいな感覚があったんだよな……」
葛谷に振られたのは本当に辛かった。
イケメン医大生と腕を組んでラブホから出てきたのを見た時は、何も考えられなくて頭が真っ白になった。
本当に心臓が止まるかと思った。
だけどあの時。
振られたことを考えるよりも何よりも、川で溺れている美月ちゃんを助けないといけない――って強い気持ちに突き動かされて、強引に前を向かざるをえなかったことで。
俺は幸運にも、わずかな時間でそれを吹っ切ることができたのだ。
だからそのきっかけとなった美月ちゃんに、俺は本当に感謝していた。
「だけどそれって俺がそう思っているだけで、周りから見たら――特に優香から見たら、女の子なら誰でもいい尻軽チャラ男なんだよなぁ」
彼女と別れたら速攻で別の女の子に乗り換える男とか、男の俺から見てもクソすぎる。
控えめに言って人間のクズだ。
「うん、やっぱり連絡するのはやめておこう。どう考えてもそれが正解だよ」
せっかく話すようになったのに、余計なことをして嫌われるのは嫌だもんな。
「それに優香が連絡してこないのに俺から連絡するのは、やっぱり下心があると思われそうだし」
堂々巡りの結果、俺はそう結論付けると。
目に入るたびに嫌な気持ちを思い返さずにはいられない(吹っ切れたとはいえそれとこれとはまた話が別だ)葛谷の連絡先を削除したり、番号の着信拒否を設定してから、立ち上がって机の上に転がっていた充電ケーブルをスマホに突き差した。
「さーてと、宿題でもして寝るか。明日数学で当たりそうだから、ちゃんとやっておかないとだし」
そして勉強机に向かうと、雑念を追い払うようにやり残していた数学の宿題を解き始めたのだった。
~あのね帳(姫宮美月)~
先生、あのね、今日は、そうたお兄ちゃんが、できました。
そうたお兄ちゃんは、美月を、たすけてくれた、とっても、かっこよくて、とってもやさしい、お兄ちゃんで、お姉ちゃんと、おつきあいをします。
美月も、だいすきです。
また、あいたいな。
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