一年付き合ってた彼女が医大生とラブホから出てきた(NTR……涙)。帰り道、川で幼女が溺れていたので助けて家まで送ってあげたら学園のアイドルの家だった。
第78話 なんていうかその、めちゃくちゃいい雰囲気じゃね????????????
第78話 なんていうかその、めちゃくちゃいい雰囲気じゃね????????????
「ご、ごめん。別に急ぎじゃないから優香から先に使ってくれ」
俺は慌てて謝罪すると、優香の英和辞典の優先権を譲った。
「ううん、私も別に急ぎじゃないし。だから蒼太くんから先に使って?」
しかし優香も遠慮するように、俺に優先権を渡そうとしてくる。
「こういう時はやっぱり持ち主から使うべきだと思うぞ?」
「ううん、私はほんと、ぜんぜん後でいいから」
「いやいや優香が先に使って」
「いいよ、蒼太くんから使ってよ」
「いやいやここは優香から先に」
「ううん、蒼太くんからどうぞ」
そしてお互いに、妙な譲り合い精神を発揮してしまう俺と優香だった。
「…………」
「…………」
どうぞどうぞと譲り合ううちに、再び黙って見つめ合ってしまう。
優香の瞳が何かを期待するように潤んでいるように見えてしまうのは、果たして俺の気のせいなのだろうか?
あとさ?
なんていうかその、めちゃくちゃいい雰囲気じゃね????????????
妙な雰囲気に駆り立てられて、心の奥底に秘めていたあれやこれやが、言葉としてあふれ出てしまいそうだ――
「ゆ、優香。俺さ……」
「う、うん。なに、蒼太くん?」
優香が真剣な表情になる。
「俺は優香が――」
俺がなんともこそばゆい雰囲気に
ふと、俺たち以外の小さな視線の気配があることを俺が感じとったのは――。
俺は恐るおそる、優香の部屋のドアの方へと視線を向けた。
すると――、
「じーっ……」
わずかに開いた入り口のドアの隙間から、美月ちゃんがジッと俺たちを見つめているのが目に入った。
「美月ちゃん!?」
美月ちゃんが見ていたことを認識した瞬間に、俺は慌てて優香と触れ合っていた右手を引っこめた。
競技かるたの全国大会で上位入賞できそうなほどの、神速の手さばきだった。
「え、美月!? いつからそこにいたの!?」
俺からわずかに遅れて美月ちゃんの存在に気が付いた優香が、これまた素早く右手を引っこめる。
こちらも俺に負けず劣らずの鋭い手さばきだ。
やるな優香。
次に会うのは全国大会の決勝戦だな。
待ってるぜ、絶対に勝ち上がってこいよ。
――とかなんとか意味不明なことを考えてしまうくらいに、俺は焦ってしまっていた。
焦っている時って頭が真っ白になって何も考えられないか、もしくは本来考えないといけないことは考えられないのに、どうでもいいことを考えちゃうよな。
別にやましいことなんて何もなかったのに、俺の心臓はバクバクと早鐘を打つ。
高鳴る鼓動をなんとか落ちつかせようと、俺は胸を軽く手で押さえながら深呼吸をした。
そんな俺と優香を気にするでもなく、
「入りますね」
ドアを開けて美月ちゃんがとてとてと入ってきた。
「や、やあ美月ちゃん。家に帰ってたんだなぁ」
そんな美月ちゃんに、俺はまだ内心では焦っているのを隠しながら、さも何事もなかったかのように冷静な振りをして会話を始める。
「はい! 帰ったら蒼太おにーちゃんのお靴があったからビックリしました」
「お、お友達の家に行っていたのかな?」
「そうです。それでちょうど今、お友達のお家から帰って来たところなんです」
「そっかぁ~」
「なんとなく今日は早めに帰ってきたんですけど、蒼太おにーちゃんが来てたから良かったです!」
「ふーん、そうだったのかぁ。俺もせっかく優香の家に来たんだから、美月ちゃんにも会えて良かったよ」
……若干、わざとらしかっただろうか?
「ほんとですか! 嬉しいです。ところで2人で何をしていたんですか? 静かに見つめ合っていましたけど。にらめっこですか?」
ぎ、ギクゥッ!?
いきなり核心を突かれてしまったぞ!?
なんて答えればいい?
俺が頭をフル回転させていると、
「お姉ちゃんたちは、2人で熱心に勉強をしていたのよ? ね、蒼太くん?」
優香が少し上ずった声をさせながら、俺と美月ちゃんの話に入って来た。
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