第73話 勉強会がなんちゃってお茶会に……
「ううん、全然待ってないよ。いろいろと用意してくれてありがとな、優香」
「どういたしまして。はい、蒼太くんの紅茶だよ」
俺は優香から紅茶のカップを受け取ると早速、軽く口に含んだ。
子供っぽく見られたくなくて見栄を張ってお願いしたストレートの紅茶は、だけど思ったほどは苦くなくて、むしろ飲みやすく感じる。
もしかしたら薄めに入れてくれたのかな?
その場合、俺が見栄を張ったことに優香が気付いている可能性が高いのだが、もちろん追求するのは
せっかく優香が気づかって黙ってくれているのだから、敢えて自分から恥をかきに行く必要はないだろう。
「飲みやすくて、すごく美味しい」
俺が素直な感想を伝えると、
「えへへ、良かった♪ 実は最近、紅茶を入れる練習をしてるんだよね」
優香がとても嬉しそうに笑った。
「バッチリ練習の成果が出てるな。それとその美味しそうなマカロンも、食べてもいいかな?」
俺は次に、小皿に綺麗に盛り付けてあるマカロンを所望した。
……いやほら、放課後ってお腹がすくだろ?
目の前に美味しそうなマカロンがあって、紅茶で一服したら、つい食べたくなっちゃうだろ?
だから決して、勉強会がなんちゃってお茶会になっちゃってるわけじゃないんだよ。
古来より、腹が減っては戦はできぬって言うしな。
まずは入れたての紅茶とマカロンを食べて、テスト勉強という戦に挑むための腹ごなしといこうじゃないか。
以上、言い訳終わり!
「もちろんどうぞ。蒼太くんに食べてもらうために持ってきたんだし。はい、どうぞ召し上がれ」
春風のような優香の優しい笑顔に誘われるようにして、俺はマカロンを1つ口へと入れた。
――!
とたんに上品な甘みが口の中に広がっていく。
マカロンってかなり甘くてガチの甘党向けなイメージだったんだけど、このマカロンは甘さがやや抑えられていて、とても食べやすかった。
「マカロンもすごく美味しいよ」
「ほんと? ちょっと甘すぎるかなって思ったんだけど」
優香が少しホッとしたように言った。
「ほんとほんと。多分だけど、美月ちゃんも美味しいって言ってただろ?」
「言ってくれたんだけど、あの子ってば甘いものなら何でも美味しいって言うから」
優香が小さく苦笑する。
「あはは、子供らしくて可愛いじゃん。それで、もう1つ食べてもいいかな? すごく美味しくて1個じゃ我慢できないっていうか」
「もちろんどうぞ。いっぱい食べてね」
俺はお言葉に甘えてセカンドマカロン、サードマカロンを頂戴した。
――と、そこで俺はふと気付いたことがあった。
マカロンたちはみんな綺麗なお顔をしているけれど、よく見ると微妙に形が不揃いなのだ。
ってことは、これってもしかして優香の手作りじゃないかな?
「あのさ」
「なになに?」
「もしかしてこのマカロンって、優香の手作りだったりする?」
「えへへ、実はそうなの」
「やっぱりな。優香はお菓子作りも上手なんだな」
「この前の日曜日に作ったんだけど、ちょっと作り過ぎちゃって。だから蒼太くんに消費するのを協力してもらおうかなって、思ったんだよね。ごめんね、残飯処理に付き合ってもらっちゃって」
なんとも申し訳なさそうに言いながら、パタパタと両手を左右に振る優香。
「残飯処理なんてそんな。お世辞抜きですごく美味しいし、むしろ
学園のアイドルの手作りマカロンを食べられるなんて、むしろラッキー以外の何物でもないぞ?
「じゃあ、よろしくお願いするわね。ところで――」
「ん?」
「蒼太くん、何か悩みごとでもあるの?」
優香が突然、心配そうな様子で尋ねてきた。
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