第47話 姫宮親衛騎団との戦い

「以上を踏まえた上で、紺野蒼太。何の取り柄もない平凡なお前は『姫』には相応しくないと我々は判断した。よってこうして警告をしに来たわけだ」


「いえあの、無関係の先輩方に勝手に判断されても困るんですが……」


「お前の言い訳は必要としていない。お前が今後すべきことはただ一つ。2度と『姫』と馴れ馴れしくしないということだけだ」


「な――っ」


「なんだ文句でもあるのか? カースト下位のモブ男の分際で我らが『姫』の周りをうろちょろするなどと、あまりにも己の分をわきまえていないと言わざるを得ないからな」


 なんだと?

 己の分を弁えろだと?


 ここまでは先輩の顔を立てないとな――なんて思っていた俺だったが、この物言いにはさすがにカチンときてしまう。


「なんでそんなことを、俺が先輩らにイチイチ言われなくちゃいけないんですか。俺が誰と仲よくしようが、先輩らとは関係ないでしょうが。勝手なことを押し付けないでください」

 ついつい強い口調で反抗しちゃったんだけど――。


「いいや、関係はある」

「……はい?」


 えっ?

 それはもう自信満々に、超速攻で断言されてしまったんだが?


 えっ、マジで何なのこの人ら?

 いやマジで何なの?


「我ら『姫宮親衛騎団』は『姫』を外敵からお守りする盾であり、そして同時に『姫』に近づこうとする良からぬ虫を排除する剣でもあるのだ。こうやってお前のような分不相応に警告をするのも我らの務めなのさ」


 どうも彼らの中ではそういうことらしかった。


「なんですかそれ。そんなのは先輩らの勝手でしょう。それを俺が強制される筋合いはないでしょうが」


 言いがかりというのも馬鹿らしいメチャクチャなことを言われてしまい、さすがの俺もいい加減イライラが募ってしまう。

 自然と完全に売り言葉に買い言葉になってしまった俺の言葉を聞いて、


「おいおい、こいつ調子に乗ってるみたいだから少し痛い目をみせてやろうぜ」

 チャラ先輩がいけすかない半笑いをしながら、仲間たちを煽りたてるように言った。


「そうだな。ここは少し痛い目を見させてやるか」

 その声を受けてゴリ先輩が一歩前に出ると、人を殺しそうな目でボキボキと指の骨を鳴らす。


「ちょ、ちょっと!? 痛い目って、さすがに冗談ですよね?」

「俺は冗談が嫌いでな。座右の銘は有言実行だ」


「いやあの、暴力とかさすがにやめません?」


「おいおい、勘違いするなよ紺野蒼太。これは暴力じゃない、後輩への愛情の詰まった可愛がりだよ」


 いつの間にか俺は逃げられないように4人に周囲を囲まれていた。

 ちょっとぉ!?

 そういう昭和漫画のイカれたノリを――俺は良く知らないけど昔の漫画はこういうのが普通だったらしい――令和のリアル高校生活に持ち込むのはマジで勘弁してほしいんですけど!?


 ケンカ経験ゼロ。

 よわよわ男子高校生・紺野蒼太。

 冗談抜きで絶体絶命の大ピンチ――!


「顔はやめろよ、目立つからな」

「承知」


 はやし立てるように言ったチャラ先輩に背中を押されたように、ゴリ先輩がいかつい拳を振り上げる。


 ケンカ慣れしていない俺が反射的に身体をすくませ、迫りくる恐怖を前に目をつぶって歯を食いしばった瞬間だった――、


「4人がかりで蒼太くんに暴力を振るおうだなんて! あなたたち、こんなことして恥ずかしくないんですか!」


 ビックリするくらい強い口調で非難する優香の声が、校舎裏に響き渡ったのは――!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る