第55話「もぅ、蒼太くんのすけべ……」

 その後、3人でしっかりと準備運動をした。


「いち、に! さん、し! にーに! さん、し!」


 可愛らしく号令をかけながら、小学校で習ったという準備運動を一生懸命にやる美月ちゃんはとても微笑ましい。


 しかし身体を反らせたり、ひねったり、さらには前に倒したりする度に、やわやわと揺れては形を変える優香の大きな胸から、俺はやっぱり目が離せないでいた。


「もう蒼太くんったら、さっきからどこを見てるのよ?」

 そんな俺に向かって、優香がジト目をしながら、蚊の鳴くようなか細い声で抗議の言葉を告げてくる。


「? 蒼太おにーちゃん、どこを見てるんですか?」

 そして美月ちゃんは不思議そうな顔をして、純真無垢な瞳を向けてきた。


「いやその、なんていうかだな……」

 汚れなき幼女に向かって、濁りきった真実などとても告げられず、しどろもどろになってしまう俺。


「なんですか? 蒼太おにーちゃんはなにを見てたんですか? 美月、気になります。教えてほしーです! おねがいします!」

 しかし美月ちゃんは興味津々といった様子で、追及の手を緩めようとはしないのだ。


「えっと、だからそのな? いわゆる一つの男の子の夢とロマンを見ていたというかだな」

「難しくてよくわかりません、ごめんなさい。でも、難しいことを知っていて、さすがは蒼太おにーちゃんだと思いました! すごいです!」


「う、うん……そうなんだ。あはは、あははは……」

 虚言を弄して美月ちゃんを言いくるめた上に、すごいと言わせてしまった罪悪感に、俺は激しくさいなまれた。


 しかしそこで、


「もぅ、蒼太くんのすけべ……」


 真っ赤な顔をしながら、恥ずかしそうに胸を抱きかかえて俺の視線から隠した優香に怒られてしまう。


「ほんとごめん! 反省してます!」

 俺は慌てて両手を合わせて心からの謝罪をした。


「あの! 蒼太おにーちゃん、『すけべ』ってどういう意味なんですか?」

 しかし、ここでまたもや純真無垢な美月ちゃんの瞳が俺へと向けられる。


「あーうん、その、なんだ。すけべっていうのは、言い換えれば『えっち』ってことでだな……」


「!!?? 蒼太おにーちゃんはえっちなんですか!?」


 美月ちゃんが目を見開いて、とても驚いた顔をした。


「まぁうん、人並みにはえっちかな?」


 優香にいろいろと気付かれてしまっている以上、この場では最早言い訳をすることができなかった俺は正直に答えた。

 答えざるを得なかった。


「あの! 蒼太おにーちゃんは優しくて素敵な人なので、あまりこういうことは言いたくないんですけど!」


「はい」


「えっちなのはいけないって先生が言ってましたよ! えっちな蒼太おにーちゃんは、ぷんぷんです!」


「本当にごめんなさい」


 気になる同級生の女の子の前で、その子の妹の小学校3年生の幼女から「えっちなのはいけません」とプンプンされてしまう、どこに出しても恥ずかしい高校2年生の俺だった。


 だけどこれだけは言わせて欲しい。


 超お年頃な男子高校生に、最近気になっている可愛い女子のおっぱいがビキニ水着から溢れそうになっていて、しかも動くたびにたわわに揺れる様子を見るなというのは、これはもう無理ってなもんだと思うんです!


 いやほんとマジな話!

(青少年の熱い主張)



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