1-6 試作品を作って…みる?

「で、生理用品はできた…と。

 あとは本チャンのパンツのデリケート部分ですが、コットンでいきましょう。

 それならこの世界でも多くあるんじゃないですか?」

「コットン?あ、綿ですね。はい。それをどうやって作れば良いのですか?」


 皆真剣に聞いてくる。

あの…、おっさん凄く恥ずかしいんですが…。


「それじゃ、型紙を作って縫っていくという感じにしましょうか。

 型紙は……、こんな感じで前、後ろと。

 パンツの方はゆるい生地で作って、上部にアラクネさんの糸を入れる部分を縫い付けて、前と後ろを縫ってもらい、デリケート部分にコットンをプラスで縫い付けてください。」


 アラクネさん、凄く正確でミシンのような細かい縫い目だ。

うん!匠の域だね。このレベルだとミシン要らないな…。


 そうこうしているうちに試作品が一枚出来上がった。

サイド部分を引っ張り、お尻の部分も引っ張り、伸縮を試す。

・・・

うん。向こうの世界の感触とほぼ同等だ。

ただ、ゴムの部分が少し太くなってしまった。


「シメ殿、出来たのか?」


まどかさんが眼を輝かせている。


「いえ、これでは腰の部分ゴムが太くて、着けた際にゴム跡が残ってしまいますね。

 もう少しゴムを細くしましょうか。」


 少しだけ手直しし、もう一度確認する。


「まぁ、試作品としてはこんなものでしょうか。」

「おぉ!シメ殿、でかした!では、我が早速試して…」

「魔王様、お待ちください!魔王様に何かがあってはいけません!

 ここは私達三将が自らの身体を盾に…」


 あの…、一個しか出来てませんが…。


「あ…、アラクネさん、ここまでの手順分かりましたか?」

「ええ。問題ありません。」

「では、同じものをあと3つ作ってくれませんか?

 自分はその間、ブラジャーの型紙をおこしますので。」


まどかさんと三将ズがワイのワイのやっている間に作業を進めていく。


 ブラジャーか…。

これが問題なんだよな…。

ブラジャーってサイズが沢山あって大変なんだよ。

トップとアンダーの差でカップ数が決まるし…、そんなに種類あってもねぇ…。

であれば、タンクトップでって、あ、そうか。


 早速型紙をおこしていく。

弱い伸縮の生地は胸に、強い伸縮の生地はそれ以外に使えるように型紙を作っていく。


アラクネさんが3つの試作品が終わったってことで、こちらを作ってもらう。

その間、俺はコットンを縫い合わせ、中に綿を入れたパットも作ってみた。

ちょっとしたお遊びだよ。


 サイズは、まぁ見た目で…。

まどかさん、ルナリア様、ターニャ様が普通サイズ、アルルメイヤ様が大きいサイズで作ってもらうとするか…。


「のう、シメ殿、それはどんなブラなんじゃ?」

「あ、これですか?これはチューブブラですよ。

 簡単に言えば、腹巻の胸版ですね。」

「カズ様、それは“さらし”とどう違うのか?」


 アルルメイヤ様が聞いてくる。

って言うか、なんか皆声が似ているから、誰が呼んでいるのか分からないんだよね。


「“さらし”は巻き付けるものですが、これは巻き付けるというよりもつけるというものになりますね。もう一つ違うものを作りますので、待っててください。」


 今度はスポーツブラの型紙をおこして、アラクネさんに縫ってもらう。


「はい。これがスポーツブラですね。

 今、できるものはこれくらいでしょうかね。」

「シメ殿、でかした!

 早速我が試着を…」

「ですから、魔王様は私達が試してみてからです。」

「まぁ、肌に悪いモノではないと思いますし、チューブブラ2つとスポーツブラ2つ作ってもらいますので、各々試着されてはいかがですか?」

「おぉ!そうじゃの。

 では、我はスポーツブラの方を所望する!

 よし!早速着替えるぞ!」


って、おい!ここにおっさんが居るんだぞ!

こら!皆で脱ぎ始めるんじゃない!

残念な気持ちを持ちながら、速攻で後ろを向いた…。


「なんじゃ、シメ殿は見てくれんのか?」

「あの…、着替えるところなんて見たらセクハラというよりも犯罪ですよ。」

「シメ殿、この世界にセクハラという言葉はないぞ。それに見られても何とも思わんのは我がおかしいのかの?」

「はい。おかしいです。

 異性がいますのに、羞恥心が無いという事は、魔王様が超越されているのか、それとも私が異性として見られていないのか、どちらかですね。」

「うぬ。おそらく後者じゃの。」


俺…撃沈…。



「うむ。なかなかつけ心地が良いの。」

「まだ試作品ですから、これをもっと改良していく必要がありますね。

 それにあの時用と懐妊された時のものも必要になるでしょう。」

「あの時?あぁ、月のモノか。」

「こちらでも、そのように言われるのですね。」

「そうじゃな。面白いの。

 では、アラクネよ、主らの種族で裁縫の得意なモノを10人ほど連れて来て、下着を作ってもらうとするか。」


 アラクネさん…、一応数えるときには“人”なんだ…。


「魔王様、承りました。

 かくなる上は、粉骨砕身の思いで作業に取り掛かります。

 それと…、試作品で結構ですので、我々にも着ける許可をいただければ。」

「うぬ、構わん。アラクネは大きいからのぅ。」

「はい。肩が凝って仕方がありませんので…。」


 アラクネさん、大きいんだ…。それに大きいと肩が凝るのは万国共通か…。


「のう…、シメ殿よ。少し良いか。」

「魔王様、何でしょうか?」

「もう少し、良さげなモノは作れんかの?」

「良さげと申しますと…、あ、普通のブラジャーという事ですか?」

「いや、それもあるが…、色じゃよ色。肌着だから白というのも飽きるでの。

 他の色もあると良いのじゃが。」

「であれば、アラクネの布に染料を染み込ませれば、色が着きますね。

 魔王様のお好きな色は何でしょうか?」

「それは…ゴニョゴニョ…。クロじゃ…」

「分かりました。では黒も調達しましょう。」

「それとな…、むー…。後で話す!」


まどかさん、顔が真っ赤だ。

まぁ、いろいろな下着を作っておけばいいんだから。

それと男性用も作らないとね。


「さて魔王様、これで下着…肌着は解決でしょうか?」

「そうじゃの。シメ殿には無理を言った。すまなかったの。」

「これで一つ課題が解消という事でしょうか。」

「そうなるの。じゃが、まだまだ課題はあるのじゃよ。」

「そうですか…。では、そのお話しをお伺いしましょうか。」

「では、執務室に行こうか。

 アラクネ、あとは頼んだぞ。三将はついてまいれ。」



 まどかさんの執務室にて…、


「はぁーーー。疲れたぁーーーー。

 もう、こんなしゃべり方疲れるだけじゃん。」

「まどかさん、お疲れですね。」

「マドゥーカ様が普通にしゃべられますと威厳が無くなってしまいますからね。」

「だって、私威厳とかそんなの要らないし…。」

「でも、この数十年こうやって話してたんですよね?」

「うん。そうだけど…。」

「じゃぁ、ここにおられる三将の皆さんのためにも、このまま続けた方が良いと思いますよ。それに、疲れたら自分がまどかさんの話し相手になりますからね。」

「うん!シメさん、ありがとね!

 なんか、シメさんと話してると、ストレスが解消されるよ。

 しかし、シメさん!下着をこんなスピードで作っちゃうなんてすごいね。

 これまでの数十年が何だったのかって思うよ。」

「まぁ、餅は餅屋ですからね。」

「シメさん、餅屋だったの?」

「いえ…。モノの例えです。その道のプロに聞けば早いって事です。」

「そうなんだぁ~。私、向こうの世界は中学までしかいなかったから、そこまでのボキャブラリーとか知識しか無いんだよね。」

「それでも、ボキャブラリーという単語を知ってるのは凄いと思いますよ。」

「えへへ。ありがとね。

 あ、それじゃ、シメさんがいろいろと言葉とか知識とか教えてくれると嬉しいな。」

「はい。良いですよ。自分の知っている事であれば何でも教えますね。」

「ふふ。ありがとね。」


 そんなやり取りを見ていてか、ルナリア様が提案する。


「マドゥーカ様、ではカズ様を相談役として雇われては如何でしょうか?」

「相談役?ルナリア、どういう意味?」

「はい。マドゥーカ様の話し相手兼この国の内政・外交の相談をさせていただく方です。」

「あ、それいいね。そうすれば毎日シメさんと話ができるんだよね。」

「そうですね。

 それに、今のように明るい表情でお話しされている姿を見るのは初めてですから。

 カズ様には、この城にずっと居ていただきたいですね。」


 なんだか、俺の居ないところで話が着々と進んでいくのだが…。

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