第1章 魔国ですか?魔王ですか?
1-1 蘇生されました…?
「……coror2xu94t?」
「jfdsivn9weiorjojoecoror2xu94t?」
煩いな…。
何言ってるのか分からないから、放っておこうか…。
「jfdsivn9weiorjojoecoror2xu94t?」
だ・か・ら…、何言ってるのか分からないんだよ。
眼を開けると、知らない天井だった…。
あれ?俺…死んだんじゃなかったのか?
確か、腹に槍かなんかが刺さって、倒れたんだよな。
あ、それと高校生4人はどうなった?
なんて言ったっけ? あぁ、みずほちゃんだったか…。
って、ここは何処だ?
上半身を起こそうとすると、腹に痛みが走る…。
「痛っ!」
腹を押さえる…。
そこに、声が聞こえる。
「huidhfivrueqoijqojerwr」
声のする方を見ると、女性が3人立っている。
一人は甲冑、一人は何というか法衣のような服、もう一人は何というかローブのようなマントのような…、なんだかよく分からない。
3人に言葉が分からないというジェスチャーをする。
すると、法衣のような服を着た女性が何やら呪文のようなものを唱えるや否や、頭の中に凄い程の情報が入って来る。
だんだん気持ち悪くなってきて、口を押える。
「あ、この人、吐きそうです。」
「やばい、吐かれると掃除が面倒だ。ターニャ、これ以上は無理だ。」
おいおい、掃除が面倒だとか何言ってるんだ?
って、え?何これ?奴らが喋っている内容が理解できるぞ。
「気持ち悪…。」
「大丈夫ですか?」
「大丈夫のように見えますか?」
「いいえ。」
「では、大丈夫ではないという事です…。」
「すみません…。」
あ、委縮させてしまったかな…。
「あの…、すみませんが、ここは何処でしょうか?」
「はい。ここは魔国です。」
「確か、自分は死んだと思ったんですが…」
「はい。一度は死にましたね。」
「では、ここは死後の世界ですか?」
「いいえ。あなたは生きています。」
「死んだ人間を生き返らせたという事でしょうか?」
「そうです。蘇生をしたというのが正解なのでしょうね。」
という事は死ぬ直前で助けられたという事か?
でも、一度死んだから蘇生されるのか?
頭がこんがらがってきた。
「すみません。頭がついていかないのですが、もう少し質問をさせていただいてもよろしいですか?」
「何なりと。」
「では、自分は一度死んで、生き返ったという事ですか。」
「はい。私の魔法で生き返りました。」
「え、魔法?あ…、その前に助けて、というか生き返らせていただき、ありがとうございました…、が正解でしょうか?」
「よく分かりませんが…、蘇生魔法ですので、生き返ったで良いと思います。
あ、それとどういたしまして。」
なんか律儀だ…。
「次に、何故言葉が分かるようになったのかですが、これも魔法ですか?」
「はい。この世界の言語、知識、常識をあなたの脳に入れようとしましたが、すべては無理でした。」
「すみません…、いきなりとんでもない量の情報が入って来ましたので…。」
「いいえ。その辺りはこちらも初めてでしたので、全部入れようとした私達も間違えたと思っています。その…、すみませんでした。」
なんか両方でペコペコ頭を下げている。
「ところで、自分の他に死んだ者はどうでしたか?
特に若い男3人と女の子1人ですが…。」
「あなたのような珍しい服を着ていた者達ですか?」
「そうです。」
女性は表情を曇らせ目を伏せる。
「アッシュしました…。」
アッシュ?えと、アッシュって灰って意味だったよな…。
すると蘇生に失敗したという事か?
「ありがとうございました…。
蘇生はできなかったという事ですね…。で、失敗した者は灰になったと…。」
「はい…。死後、時間が経過していたことと、もう一つは彼らのレベルが高過ぎました。」
「勇者として召喚された者でしたからね…。」
「やはり、あの国はまた勇者を召喚したか…。」
甲冑を着た女性が独り言ちする。
「で、あんたも勇者なのか?」
「いいえ。巻き込まれた者ですので、即刻退場となりました。」
「だろうな…。いくらなんでも、おっさんが勇者とは思わないな。」
「そりゃどうも。」
「で、女の子もアッシュしたという事ですか?」
「ええ。すみません。もしかしてあなたの娘さんですか?」
「いいえ。でも、彼女は自分に通訳もしてくれた優しい子でしたから…。」
心の中で拝む。
守れなかった自分を悔いた。
「しかし、あなただけでも助けられたことは私たちにとって嬉しい事です。」
「ん?それは何故ですか?」
「同じ世界から召喚された方ですから、勇者の考えが分かるのではないかと思い…。」
それ間違いです…。
若い世代の子と俺のようなおっさんが考える思考回路は違うよ…。
「残念ながら、若い子が考える事を理解できるとは思えませんね…。」
「そうですか…。」
「では、私も用済みのようですので、アッシュするなりしてもらえると、先ほどアッシュした女の子の所に行けるのではないかと思うのですが…、どうでしょうか。」
「あなたをアッシュするつもりはございません。
それに先ほど脳に知識を入れ込む際、少しあなたの脳内を拝見させていただきましたが、この世界に無い専門的な知識がおありのようですので、その知識を我々に伝授していただくことはできませんか?」
「自分はしがない下着メーカーの工場で働いていた者ですよ。
そんな大層な知識などありませんが…。」
「それでも構いません。
できれば、あちらの世界から召喚された勇者に引けを取らない技術などがあると嬉しいのです。」
「ですから、自分は下着を作る工場で働いていた者ですって。
そんな勇者が持っているような力に対抗できるような下着なんて無いですよ。」
「あの…、下着というのは何でしょうか?」
え?そこから?
そう言えば、ここに居る女性3人だけど、凄く綺麗だ。
この人?ヒト?どう呼べばいいか分からんが、下着という言葉自体が無いかもしれない。
「えと、下着というのは、男性や女性が肌に密着して着るモノですが…。
あ、肌着とも言いますね。」
「なんだ、肌着の事か。」
「はい。それを作っていた者です。」
「その…、あなたが着用しているものも肌着というものですか?」
え?俺?布団の下に手を入れて確認する。
お!履いてる。ボクサータイプのパンツだ。
「はい…。」
「それは女性も着用するのでしょうか。」
「え?」
「同じものを着用するのですか?」
「いいえ。女性は女性用の肌着を着用します。
って、一人女性がいましたよね。その女性が着用していたと思いますが…。」
「残念ながらアッシュしましたので…。」
「そうですか…。良かった…。」
みずほちゃん、君の尊厳は守られたよ。
「しかし、下着…いや肌着ですよ。」
「肌着一枚で変わる事もあります。」
あ、そうだよな…。
生理だとか、妊娠とかも専用の下着もあるんだし…。
「そうですね。では、追々作っていきましょう。」
「良かった。あ、そう言えばお名前を聞いておりませんでしたね。
っと言いましても、種族などの事もまだご理解いただいておりませんので、私共の方から名乗らせていただきます。
先ず、私ですが、魔国三将の一人、慈将のターニャと申します。
種族は精霊族のルナです。」
「次はあたいだ。
魔国三将の一人、鬼将のアルルメイヤだ。
種族は同じく精霊族のイフリート。」
「最後に私は、魔国三将の一人、智将のルナリアと申します。
種族は精霊族のシェイドです。」
将軍さんだ…。それに綺麗だ。
「自分は、七五三 一三(シメ カズミ)と言います。
種族は…、ヒトで良いんでしょうか?
齢は53歳とヒト族という中ではもう棺桶に片足突っ込んでいるようなおっさんです。
どうか、よろしくお願いします。」
3人にお辞儀した。
「ま、それだけはっきりとモノが話せてるなら、回復してる証拠だな。
明日にでも歩くことができると思うから、今日のところはもう一度身体を休める事だ。」
えと、アルルメイヤさんだっけ?甲冑の女性が胸を張って言う。
「そうですね。病み上がりの方にこれ以上お時間を割いてもらうこともいけませんので、私達は退室いたしますが、何かありましたら、ここにあります呼び鈴を鳴らしてください。
そうしますとメイドが来ますので、何なりとお申し付けください。」
慈将のターニャさんか…。
「いろいろとありがとうございます。
すみませんが、最後に一つだけお願いがあるのですが…。」
「何なりと。」
「トイレはどこでしょうか…。」
おっさん、もう爆発寸前なんです…。
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