第4章 勇者と王国と魔国と…

4-1 俺に…?

 あれから半年…、魔国は順調に発展している。


 よせば良いのに、今は下水道の整備を行い、下水処理施設まで完成させてしまった。

これで、衛生面は1ランクも2ランクも上がった。


まどかさんがウキウキしながら駆け寄って来る。


「ダーリン、いい知らせと悪い知らせがあるけど、どっちからがいい?」

「んじゃ、いい知らせからお願いね。」

「は~い!

じゃじゃーん!あたし、妊娠したよ~!

 ダーリンの子がここに居るんだよ~!」


 まどかさんが自分のお腹をさする。


え?

眼が天になった後、1mくらい飛び上がった!


「まどかさん、ありがとー!」

「ん!あたしも嬉しい!こんな齢で子供を授かるなんて…。」


いや、まどかさん、見た目30前ですよ…。


「それでね、ターニャもなんだよ!」


うぉ!いきなり2人!こんなおめでたい事ないじゃないか!


「まどかさん、ターニャ…、ありがとな…。俺…、すっごく嬉しいよ。

 この齢になって、子供授かるなんて…。俺、踏ん張るよ!」

「うん、2人の子供のパパだもんね。

 そのうち、何人のパパになるのか分からないけど、それでも100人は欲しいな!

 あ、あたしが100人産むって事じゃないからね。」


まどかさん、なんてこと言ってるんだ?

そんなにできる訳ないじゃないですか…。旗が出ますよ…旗が。


「それで、悪い知らせとは何ですか?」

「うん。お腹にダーリンの子がいる間は、なかなかエッチい事できない…。

 どうやって、ダーリンパワーをもらうのかが問題なんだ…。」


ん?それは俺にとってすごく良い事なのではないか?


「そうですね…、でも一緒に寝てるから問題はないのでは?」

「それじゃ、物足りないんだよね。もう少し欲しいんだよね…。

 あ、サキュバスに聞いてみよっと。」


 まどかさんがルンルンで去っていく。

しかし、なんだろう…、嬉しさ2倍だ…。

一人ほくそ笑んでいると、アルルさんとルナさん、ターニャさんが現れる…。

アルルさんとルナさんの眼が血走っている。


「カズ殿、先ずはおめでとうございます。

 ですが、何故、ターニャが?」

「ジュークさん、ズルいです。私も欲しいです。」

「カズさん、ありがとうございます。幸せです。」


「と言っても、こればかりはどうしようもないから…。」

「では、今宵からは私とルナがお供いたします。」

「へ?」

「お子ができるまで、カズ殿には踏ん張ってもらいます!」


アルルさん…ルナさん…、何フンスカしてるんですか?

ターニャにこそっと聞いてみる。


「私達、精霊族が子を宿すという事は奇跡に近いのです。

 その軌跡を私がいただきました。

 やはり、そんな奇跡は皆も体験したいのです。」

「そんなものかな…?」

「はい!そんなものです。アルルもルナもああやっていますが、私に出来て自分たちに出来ないこと…、内心は辛いんだと思います。なので、カズさんが…。」


 皆まで言わなくていいです…。

子供は可愛いから、何人でも欲しいです!

前の世界では、こういった行為自体、なんだか嫌だったけど、ここに来てみんなと触れ合いながら愛し合うって事が幸せに感じている。


「よし!俺、踏ん張るよ!

 それと、おむつ作らないといけないね。」


 俺、決心した!

100人でも200人でもドンと来い!

腹上死するまで…ゲフンゲフン。


「あの…、カズ様…、少しよろしいでしょうか。」

「ん?どうした?レインさん。」

「魔王様にはまだ伝えていませんが、どうやら私も…。」


 ん?レインさんとはまだ両手くらいしか…。


「ありがとう!レイン、早速まどかさんに伝えないとね。」


 こうして、魔王様ご懐妊の知らせは魔国全土に伝えられ、その夜から三日三晩、魔王様ご懐妊、第二婦人ターニャ様、第五婦人レイン様ご懐妊祝いとして魔国あげてのどんちゃん騒ぎが繰り広げられた晩、まどかさんの部屋に四龍さんがやって来た。


「魔王、シメさん…、

そろそろ私たちも子を産む時期に近づきましたので…、その……。」


 ちょと待て!

半年前、ここに来る時に繁殖期って言ってたやん!

この半年、何やってたんだ?

え? 良い思いをしていたんだって! 

まぁ…、その…、その通りなんだけど…。


「みんな、よかったじゃん!あたしと一緒だね。

で、卵を産む時期とかは分かるの?」

「はい。

 順に言いますと、私が4,5日後、マデリーンが一週間後、ニーナが10日後、ブレイクが二週間後ですね。

 それまでに卵道を貫通しておかなければなりませんので、もうしばらく甘美な世界をお願いしますね。」


言ってることは最ものようには聞こえるんだが、要はエッチい事の回数増やせって言ってるだけだと思うんだが…。

それに卵道を通りやすくするようにって言ってるが、卵ができる前に普通は…ゲフゲフ。

龍さんの器官は良く分からんよ…。


「でも、有精卵…ゴホン…、子どもが入ってる卵とそうでない卵って、どう見分けるのかな?かな?」


まどかさんが珍しく真剣に聞いてるよ。


「それは母ですからね。」


 うん…。多分そういう答えなんだろうね…。


「そっか~!みんな生まれると良いね!

 みんな生まれると、7人になるのかな?

「あ、あとね、あたしとレインはヒト型の種族なのでどんな姿で生まれるんだよね。

じゃぁ、ターニャや四龍さんはどの姿で生まれるの?」

「母方の遺伝を強く受けますので、精霊は精霊の姿で生まれますし、龍は龍の姿で生まれます。」


 そうすると、精霊さんは光のようなものが生まれ、龍は龍が生まれると…。

うん…ファンタジーだ…。細かく考えるのはよそう…。

精子と卵子の構造や、遺伝子ゲノムが頭の中を錯綜し、GやらAやらがマシン語のダンプリストのごとくリストアップされゲシュタルト崩壊し始めている…。


「どんな姿で生まれようと、俺の子に間違いはないんだから問題ないよ。」


こめかみを押さえながら、そう答えると、皆がクネクネし始めた…。

さぁ!という事で、そこから先は…。ハイ甘美な世界へ突入していきましたよ。



 あれから二週間…。

俺、踏ん張ったよ…。

その結果かどうかは分からないが、ナタリーさん、ブレイクさん、マデリーンさんが1個、それに、なんとニーナさんが2個産んでくれた。


 龍が卵を2個産む事は稀であるとの事で、四龍さんもびっくりしてた。


 あとは、アルルさんとルナさんだけど、彼女たちはこれだけの子供が生まれるから、自分たちは先ずは子育てを手伝うという事になり、産着やおむつなどの製作に集中している。


 俺はと言えば、産まれてくる子供たちの多さに驚いてはいるが、一度に8人のジュニアができることを嬉しく思い、アルルさんとルナさんと一緒におむつの製作にいそしむ。

 一つ驚いた事は、龍種は卵を産んだら温めるという事はしないようだ。

龍は爬虫類なんだ…と実感したね。

ただ、暖かい場所で保管する必要があることから、別棟の2階に保温できる部屋が作られ、そこで大切に温められている。

 産んだ四龍さんはと言えば、別荘に戻り部屋を掃除するなどはしているが、基本住む場所は魔王城としたようで、子どももここで育てたいって言ってる。


 あれよあれよと言う間に月日が流れていく。

その間、魔国で産出される下着やボディシャンプーなどは、勇者を召喚した国(リルクア王国)の他にも、北と隣接しているクリソール王国やマッシュハウター自治領などにも輸出され、莫大な利益を上げる状態となっている。

もはや経済大国だ。


 ある日、ナタリーさんが執務室に駆け込んできた。


「シメさん!そろそろ生まれますよ!」

「へ?もう孵化するの?」

「孵化ではありません!生まれるのです!」


 ナタリーさんに叱られたが、保温部屋に行くと、ナタリーさんの卵にヒビが入っていた。


 やっぱ卵じゃん…。

と思うな否や、ナタリーさんにお尻をつねられた…。

あ、心が読めるんだった…、と反省しながらも、ジッと卵を見る。


 ヒビが大きくなり、何かが見えた。


「うぉ!ドラゴンだ!」

「当たり前です!」


もう一度お尻をつねられたが、そんなのどうって事はない…。今産まれてくる命に集中する。

踏ん張れ!踏ん張れ!と念じる。


「産まれ…た…。」


黒いドラゴンだった。

そのドラゴンが俺を見つめる…、そして恐る恐る出した手の上に乗り、俺の掌を舐める…。

あかん…、メロメロだ…。


いつしか、そのドラゴンに頬ずりしながら泣いていた。


「ナタリーさん、ありがとね。生まれてきた子もありがとね…。」

「シメさん、ありがとう。

 これで、この子もシメさんのことを親と理解してくれたみたいです。」


ん?

親として理解って?

あ!刷り込みか!

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