2-6 視察(エルフの畜産)そして…城の改築

 エルフの集落に着く。


「これは魔王様、わざわざお越しいただき恐縮でございます。」

「うむ。息災であったか。」

「はは。」


いつもの会話があり、この集落でフォウルを飼育してもらう事となっている。


「ジューク様、フォウルは平飼いがよろしいですか、それともケージ飼いにしましょうか。」


うぉ、いきなり専門用語が出てきた。

平飼いってのは地面で飼育する方法で肉用に飼われているんだよな。その反対にケージ飼いは採卵する目的で飼育する方法だったと思う。


「肉も卵も必要ですが、エルフさんにとって最もやり易い方法は何でしょうか?」

「そうですね…。私たちは木の上で生活しておりますので、労力から言えばケージ飼いでしょうか。ただこの飼い方には問題があり…。」

「排泄物の処理ですね。」

「さすがジューク様ですな。」

「その処理をどうするのかが問題だという事ですね。」

「そうです。だれにやってもらうのか、それをどのように処理するのかです。」

「では、私の考えをお伝えしますね。

 まず、すべての排泄物を引取っても良いのですが、それですと、エルフさんの収益にはなりません。」

「と言いますと?」

「フォウルの排泄物には土に良い栄養が含まれています。

 排泄物を発酵・乾燥させることで農業に必要な肥料になるのです。」

「なんと!そのような使い方があるとは知りませんでした。」

「ただし、どの排泄物も同じですが、発酵する際匂いが出ます。その匂いを何とか処理できれば問題ないとは思いますが、匂いを取る素材があれば教えていただきたいのです。」

「おぉ、ジューク様自ら我々のような民に教えを請われるとは、なんと腰の低い方であられるか…。では、我々の種族に伝わる匂いを除去する方法を伝授いたします。」


平身低頭が功を奏したよ。

スライムのコアを粉末にして発酵している場所に撒けば匂いが除去できる方法を教えてもらった。って、確か水分などを取る方法も同じだったよな…。

そうすると、スライムのコアの粉末ってのは“味の〇”のようなものだろうか?

あ、食べられないけどね。


それじゃって事で、後でオーク数名をここに寄せて排泄物を処理する施設を作ってもらうようスズさんに依頼した。


「まどかさん、取り合えずのところはこれでいいですかね。」

「ダーリンってすごいんだね。」

「え、何が?」

「だって、種族間の交流をしようとしているんだよ。

 これまで種族は種族だけで生活していたからね。」

「でも、得意な分野で生活を豊かにできれば、お互いウィンウィンになるんじゃないかな?」

「ウィンウィンって?」

「お互いが良い条件で取引ができたりすることかな。」

「そか。良い言葉だね。

 そっか~ウィンウィンかぁ~。」


 まどかさん、妙に納得している。

さて、残るは城の中だ。


「さて、まどかさん、最後は城の内部を変えますよ。」

「え、部屋とかの模様替え?」

「そんなベタな冗談ではなく、一体何人の人が働いていて何をしているのか、トイレ事情や逃げ道、籠城戦となった際の兵の置き方、備蓄倉庫諸々ですよ。」

「え~~、そんな面倒っちい事やだよ~。」

「こりゃ、まどか!魔王たる者すべてを掌握して初めて“魔王”と呼ばれるんですよ。」

「え、今 “まどか”って呼んでくれた?」

「あ!…ホントだね。」

「やった~!嬉しい!なんか良いね。これであたしも晴れてダーリンの妻になったよぉ~。」


こりゃ!籠の中でピョンピョン跳ねないの!


 城に着き、アルルさん、ルナさん、ターニャさんと合流し、これまでの進捗状況を聞くため執務室に入る。


先ず、兵士だが300人は集まったが、その部隊編成についてどのようにした方がよいかという点。

次に下着や石鹸などの研究・製造を行うスペースが少ないこと、魔法の体系が種族ごとに違い、治癒魔法という概念が余りない事、そして家畜の排せつ物の問題…。

いろいろな壁に当たっている…。


「それじゃ、みんなで話し合って決めていきましょうか。」

「まず兵士は300人という事でしたが、全員が歩兵という訳ではないですよね。」

「はい。歩兵は180、騎馬が40、弓が60、砲台となる魔法が20です。」

「種族ごとに分かれているって感じなの?」

「歩兵以外は種族に分かれてます。」

「だとすれば歩兵を種族ごとに分けると何部隊になるんだろうね。可能であれば歩兵30を6部隊できれば御の字かな。後の舞台は半分に分ける感じでどうかな。」

「合計で12部隊にするということですね。分かりました。」

「部隊を分けたら、それぞれの練兵をどうするのかも決めないといけないね。

 それに城の警護もあるから、歩兵と弓兵はそっちに回せるとして、騎兵と魔法をどうするかか…。」

「ダーリン、ちょと待って。話についていけてないよ~。」

「まどか…、そうだね。あのね、全部一緒の部隊にしてしまうと警護とかしてもらうと、休めなくなっちゃうでしょ。ローテーションするようにできないかなって。

 それに、部隊を分けることで、お互いをライバルだと思って向上しないかなって。」

「あ、そういう事ね。おけ~。」

「んで、騎馬と魔法だけど、平時の時、騎馬は種族の集落の連絡調整をしてもらうと言うのはどうかな?あ、もちろんルナさんお手製のマジックボックス付きのバッグを持って。」

「ジュークさん、それは良い考えですね。

 ドワーフの工房で作ったものを各種族の集落に渡しにいけますね。」

「騎馬もローテーションさせればいいでしょ。あとは砲台となる魔術師?魔導師?だけど、皆得意な魔法があるんだよね。」

「はい。カズさんもご存じのとおり火や水、土といった属性魔法もあれば、光や闇といった魔法を得意とする魔導師もいます。」

「えと…、光ってこの明るい光だよね?闇って何?」

「闇は敵の視界を失わせたり、暗くしたり、あとは惑わしたりできます。」

「そうなんだ…。

 あ、惑わすって例えば麻痺とか麻酔とかも入るのかな?」

「そうですね。出来るモノもいると思います。」

「それじゃ、治癒班に普通は居てもらい、戦闘の時だけ加わってもらう事でいいね。」

「カズさん、どういう意味でしょうか。」

「んと、平時は病気などは治癒で良いんだけど、ケガした時は痛いでしょ。例えば、その痛みを和らげるというか麻痺させることができれば、治療も効率的に出来るんじゃないかと思ってね。」

「カズさんは、一体どのような頭の構造をされているんですか…。

 私達が思いつかないような考えを即座にポンポンと出して解決してくださるのは、スキルで言うと“指導者”と言われるのですが…。」

「ターニャ、別にスキルが無くても、知識と経験が活かされるんだと思うよ。」


 軍事の経験は単にシミュレーションゲームだけだけど…。


「あと、光のヒトはいろいろと動いてもらうといいね。

 明かりが必要だったりする場所もあるから。

それと、火と水、土の魔導師さんが平時は土木作業に使えるから。」

「土木作業とは?」

「道を作ったり、河の護岸を固めたりするんだよ。」

「道も整備するのですか?」

「そうだね。その方がみんな市に来やすくなるんじゃないかな。

 あ、あとは市が開かれる場所も整備できるよね。」

「あの、ジュークさん…、理解がついていけないのですが…。」

「多分、みんなはこの世界のことしか分からないと思うから仕方がないんだけど、俺とまどかは転移者でしょ。向こうの世界にあって、こっちの世界で出来るモノもあるんだよ。」

「そそ!それが昨日の唐揚げとか、下着とかシャンプーとかね。」

「そうでした。

 では、具体的に何をなさろうとしておられるのでしょうか。」


そりゃ、いろいろあるんだけど…。

あ、ドワさんの洞窟にあったもので一つできるモノがあった。


「まどかさん、ドワさんの洞窟にあった白い粉覚えてる?」

「ダーリン、さんづけはイヤ!」

「あ、ごめん…。」

「で、ドワーフの洞窟にあった白い粉?あ、麻薬?」

「何で麻薬があんなところにあるの。」

「あはは、冗談だよ。冗談。あれって石灰だよね。」

「うん。あの石灰と粘土を混ぜて焼いたものを石膏と混ぜて粉末にすると何ができると思う?」

「石灰と粘土を混ぜて焼く?陶磁器?」

「それ粘土だけでいけるね…。セメントができるんだよ。」

「え、セメント?セメントって何?」


やはり、そこから説明しなくてはいけないね…。

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