2-7 リノベーションですか?

「まどかさん、前の世界でブロックで積まれた塀って覚えてる?」

「うん。覚えてるよ。」

「そのブロックとブロックをくっつけるのがセメントね。」

「あ、それ見た事ある~。あれがセメントなのね。

 それじゃ、コンクリートとどう違うの?」

「ごめんなさい…。よく分かりません…。」


確か、セメントに砂利を入れればモルタルまでは分かるんだが、それに何を加えればコンクリートになるのかが分からん…。


「ダーリンにも分からないことがあるんだね。」

「そりゃ沢山あるよ。だから、みんなで助け合っていければと思うよ。」


 皆がうんうんと頷いている。


「だよね~。あたしたちって、ダーリンにだっこにおんぶなんだよね。

 でも、それが当たり前になっちゃいけないんだよね。

 あたしたちもがんば…踏ん張らないとね!」


よし、これで一つは解消したね。

次は城のスペース…。

レインさんに案内されて城を見学したけど、ただ広いだけだもんな…。


「それじゃ、今度は城の中を変えていきましょうか。」

「はい((はい))。」


まどかさん、アルルさん、ルナさん、ターニャさん、そしてレインさんと一緒に城の中の部屋を一つ一つ見ていくこととした。


「地下から上に行きましょう。」


地下から部屋を見ていく…。


「まどかさ…まどか、何故に牢屋があるんですか?」

「あ、ここね。良く分かんないから放置してあるんだ。」

「要らない部屋なら、地下を研究室と工房に変えましょうか。」

「そだね~。」

「あ、あと、備蓄倉庫も作っておいた方がいいですね。調理場から直接階段を作れば備蓄してあるモノを取りに行く事も簡単ですから。

 それと、まどかさ…まどか、冷蔵庫ってないよね。」

「んむー。ダーリンはどうしても“さん”付けするんだね。」

「パブロフの犬でしょうかね?」


照れながら頬をぽりぽりとかく。


「そんな犬はここに居ないけど、ん~ま、いっか。さん付けでいいよ。

 でも、寝室はダメだよ。」

「ひゃ!ひゃい。」

「よし!供述取った。んで、冷蔵庫だっけ?電気がないからね。

 でも、それらしいものはあるよ。」


供述ではなく、言質というんだが、まぁそのうち教えていこう。

それに冷蔵庫に似たようなものがあるんだ。


「それらしいというのは?」

「じゃじゃーん!あそこだよ!」


まどかさんが一つの部屋を指さした。


「うん…。普通の部屋だよね…。」

「ここが冷たい部屋、つまり冷蔵庫でーす!ささ、入ってみよう!」


ドアを開け中に入ると、お!寒い。普通に冷蔵の部屋となっている。


「これはいいね。で、この原動力というか、なんで涼しいの?」

「コホン、ジュークさん、それはこれです。」


ルナさんが一つの木箱を指さす。

中をのぞくと、青白いゼリー状のようなモノが入っているが、これは何だ?


「これは?」

「正真正銘の“アクアスライム”です!」


スライム君、どれだけ優秀なんだよ。

何故に冷気が出るのが知らないが、スライム飼ってれば冷蔵庫もクーラーも要らないって事か?


「スライムって便利ですね…。

 もしかして、ゴミとかも食べてくれるとか…。」

「はい!ゴミを食べるスライムは“クレイスライム”ですね。」

「あ、だからゴミ処理が不要なのか…。

 って事は、一家にそのスライムを飼ってれば生活に事欠かないと…、そんな感じなの?」

「流石に暖はとれませんが、おおむねその通りです。」


 スライムさん、俺、あんたの事尊敬するよ。

アクアスライムは冷房とか万能、クレイスライムはごみ処理=ル〇バか…。

ふと、ひとつの考えが閃く。


「まどかさん、スライム使いっている?」

「ん?スライム使いって、テイマーの事?

 ないなーい。そんなヒトいないよ。」


まどかさん、ケラケラ笑っている。

しかし、これだけ重宝される生き物なんだが、誰も気づかないのか?

なら、俺がスライム使いに…と思うが、スキル無いわ…。

単にペットという事で飼うか?


「そうか…、これだけ重宝される生き物なのに勿体ないよ。」

「スライムには意思がないから、飼いならすことも無理だよ~。」


あ…、俺の考えた事、撃沈…。


地下室から1階に移動する。

玄関、吹き抜け、階段、調理場にだだっ広いダイニングに風呂…、あと、良く分からない部屋沢山…。


「ここにずらっと並んでいる部屋は何に使うんですか?」

「はい。ここは各種族のリエゾンが執務する部屋となっています。」

「って、誰もいないし、埃っぽいんだけど…。」

「ここ数十年、使われていませんので。」

「種族間の連絡などはどうやって行っているの?」

「基本、長がこの城に来て魔王様から命令するという形です。」

「そのためにわざわざ長を呼ぶんだ…。無駄だね…。」

「では、どのようにいたしましょうか。」

「この部屋をルナさんの執務室とするでしょ。

 そうすると後の部屋の横壁を取っ払って、全部族が一つのスペースで仕事をすれば、部族への伝達も早いよね。ま、ここで働くヒトは事務官って優秀な人って感じかな。

 それに、部族同士の連携も出来るようになる半面、部族のいさかいも出てくるから、そこをルナさんが統括する、こんな感じでどうかな?」

「各部族、何名ほど拠出させましょうか。」

「ま、2,3名でいいんじゃない?でも、承認欲求のあるヒトは極力避けてね。」

「承認欲求とは?」

「自分だけ認めてもらおうとか、ヒトよりも偉いんだって思うヒトの事ね。

 何事も協調性をもって仕事ができるようにね。」

「はい!ジュークさん、その様にいたします!」


次に2階…、謁見の間もここにあるのか…、それに、ここも使っていない部屋ばかりだ。


「1階の空いているスペースと、このフロアをメインに、城の内部で勤務しているヒトの居住スペースとしちゃいけないかな?」

「城で生活しても良いのですか?」

「それは、まどかさんが決める事だから、どう?まどかさん。」

「別に良いんじゃない。にぎやかな方が良いもん。」

「そうすれば、まどかさんの口調もストレスなく、今のように話すこともできるしね。」

「あ、それ良い考え~。なんか魔王だから威厳を持つとか、合わないもん。」

「魔王様、城の中はそれでも良いですが、公式の場はいけませんよ。」

「はいはい。そこはわきまえておきまーす。」


 次に3階…、ここも使ってない部屋のオンパレード…。だんだんと飽きてきた…。


「何で、こんなに使っていない部屋が多いんだ…?」

「さぁ…。」

「さっきの2階の話、撤回!この階をスタッフの住む部屋にして、2階は会議室、部族長が来られた時の休憩室。あとは、パーティールームで。」

「え!ダーリン!パーティーするの?」

「へ?これだけの部族が居れば、少しガス抜きしておいた方がいいでしょ。

 それと、調理場もあの広さで大丈夫かどうか、料理人のヒトに聞きながら改築してくと良いと思うけど…。どうかな?」

「パーティーやりたーい!」

「アルルさん、ルナさん、ターニャはどう?」

「大勢で食事するのは楽しいと思いますが、皆座って食べるのでしょうか?」

「あ、そんなパーティーもあるけど、立食も有かな。

 部族長だけでなく、婚活パーティーも有だよね。

 好きなモノを食べ、おしゃべりできる事を定期的に開けば良いんじゃない?

 ただし、生産が軌道に乗ったらだけどね。」

「婚活パーティーとは?」

「結婚相手を見つけるパーティーの事ね。

 あ、異種族の交配ってできるんだよね?」

「はい。いろんな種族がいますからね。」

「アルル、ルナ、ターニャ…、あなた達はダーリンと結婚してるからダメだよ。」

「あ、そうでした。なら、私たちは必要ありません!」

「そうじゃなくて、この城で働いてくれる女性たちの出会いの場にするんだよ。

 ね、レインさん。」


 レインさんの顔が真っ赤になり、噴火した…。


 4階に行く…。しかし、何階あるんだ?


「まどかさん…、この城って何階建て?」

「まちまちだよ。

 今、ここは本館で4階建てだけど、別館が2棟あるよ。」


 つぎはぎの城だった事を思い出した。

気が遠のいていった…。

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