2-8 いいえ、大改造です!
しかし、ふと気づいた。
「なぁ、まどかさん…。
謁見の間から通路を通り執務室に行った訳だよな…。
でも、2階には執務室は無かった。それに同じ階に寝室もなかった…。
部屋は、この4階にあるのか?」
「あ~、ダーリン、良く気付いたね~。
実はこの4階にもあたしの部屋はないんだよね~。」
「んじゃ、どこにあるんだ?」
「別棟だよ。」
頭がついていかない…。
「すまんけど、もう少し分かりやすく教えてくれないかな?」
「ジュークさん、それは私が説明した方がいいですね。」
ルナさんが咳払いして話し出す。
「謁見の間の奥の通路と別当の執務室の通路を空間魔法で繋げてあります。」
「へ?何て?」
「ですから、本館の2階の通路と別館の通路の空間を繋げて行き来しているんですよ。」
口をあんぐり開けてしまった。
なんてこったい…。この世界にはワープがあるんだ。
「空間と空間を繋げる魔法は、皆使えるの?」
「皆ではありません。ごく少数の者しか使えませんね。」
「そうか…。」
「ダーリン、どうしたの?」
「うん…、何でもない…。」
であれば、トイレも50m行かなかくても済む。
問題は何処と何処を繋ぐかだが…。
「あ~、何か変な事考えたでしょ?
うーんと、あたしの部屋とダーリンの部屋を空間魔法でくっつけると、すぐ夜這いに行けるとか、トイレとお風呂も簡単に行けるとか…。」
「あはは…。
でも、俺の部屋もあるの?」
「あ、そか。結婚したんだから、あたしの部屋で一緒で良いか。」
「いや、できれば俺の部屋も欲しいな…。」
「む~。仕方ないなぁ。
でもダーリンの部屋とあたしたちの部屋はくっ付けるからね。
ルナ、お願いね。」
「お任せください!」
「ごめん。ひとつ確認したいんだけど…、
まどかさんの住んでいる部屋とアルルさん、ルナさん、ターニャの部屋は階が分かれているとか、別棟と別棟にあるとか問題があるの?」
「ん?全員別棟の3階で隣同士の部屋だけど?」
「あの…、まどかさん…、ルナさん…、
すごーく、どうでも良い事に魔法って使ってませんか?」
隣同士なら、べつに魔法で繋げる必要なんてないじゃん。
もし、別棟の3階に部屋が空いていたら、俺の部屋を作ってもらえればそれだけで問題は無いんだけど。
「あと、この城は風呂が一個しかないの?」
「そうですね。本館に1個です。」
「男女別に分けたりしない?」
「そうした方が…いいですよね?」
「うん。その方が良いと思う。それに無駄にだだっ広い風呂なんだから、真ん中に壁作って、出入口を二つにすれば、すぐに風呂は完成すると思うけど。」
「あ、そうか!
修学旅行で行った旅館のお風呂、壁はあるんだけど、湯船の下の方にお湯の通り道があって、ひとつになってたよ。」
なんだ?その羨ましいお風呂は?
「まどかさん…、その旅館教えてください…。」
「ダーリンには必要ないよ。」
ちっ!
「ならさ、別館にもお風呂作っちゃおうか!」
「へ?」
「だって、私たちだけで入りたいもんね。ね~アルル、ルナ、ターニャ。」
「我らだけで入る風呂は欲しいな…。」
「そうですね。皆で密着しながら入るお風呂って…、甘美ですね。」
「密着…ですか…。んふふ~」
三者三様だが、皆、どこかに旅立とうとしているので、早めに戻ってきてもらうため、4階もスタッフの部屋とした。
一つの別棟は男性兵士用の部屋とした。
種族がバラバラなので、部屋ごとに割り振りしていかなければいけないが、その辺りはアルルさんとるルナさんに任せる。
残るはまどかさんが住む棟だが、こりゃ、城のシンボルのようなひと際高い塔だな…。
如何にも狙ってくださいとでも言わんばかりの塔となっている。
「恰好の標的ですね…。」
「でも、見晴らしは良いよ。」
「そりゃそうですよね…。でも、遠くから一発で狙われますよ。」
「あ、それは大丈夫だよ。
城には結界が張ってあるからね。」
なんだ?その結界って?
「結界って何ですか?」
「んと、敵の攻撃とか、侵入を防ぐ魔法かな?」
「んじゃ、城の守りって要らないし、勇者自体、城に入れないって事じゃないですか。」
「あ、そうだね。あはは~、それはいけないね。勇者は入る事ができるようにしておかないとね。」
「いや、そんな事しなくていいですよ。
それより、3階より上には何があるんですか?」
「何もないよ。
一番上に展望台があるだけ。」
「無駄な構造…ですよね。展望台があるだけで敵から狙われ、その下に居るまどかさん達に危害が及ぶって…。
前言撤回します。
先ほど兵士用に充てた塔とこの塔の使用を逆転しましょう。
つまり、向こうの塔にまどかさん達が住む。
こちらの塔に兵士たちが住む。兵士たちは展望台を物見櫓として使えますからね。」
「あ、そっか。ダーリンあったまいい~。」
「ジュークさん、そうすると、明日から城の大工事が始まりますね。」
「そうだね…。いろんな種族から人手を集めなくちゃいけなくなるけど、給金とか大丈夫?」
「給金とは?」
「お金の事。」
「あ、王国で使っている貨幣とかですか?」
「そう。沢山必要じゃない?」
「いいえ。」
「何で?」
「彼らには、三食食べさせれば満足ですからね。」
「へ?それだけだと可哀そうだよ。
なら、ターニャ、彼らが必要としているものがあれば、それを作ってあげるというのはどうかな?」
「カズさんが、そう思われるのであれば良いと思います。」
「という事だけど、まどかさんは?」
「そうだね。ごはんだけだと、集落に戻ってから何もなくなっちゃうもんね。
ならさ、本館から始めて、工事終了後はそのヒト達を2階のパーティールームに招待して、婚活パーティーするってのはどう?」
まどかさんが、今日イチで冴えた!
「まどか、それ、良い考えだよ。」
頭を撫でると、途端にクネクネし始めた。
「おぉ、なんと!カズ殿の一撃で魔王様があのようになられるとは…。」
「私も、ああなりたいです…。」
「もう一度、撫でてもらいたい…。」
この三人も早いところ、こちらの世界に呼んでこないといけないな…。
「それじゃ、御触れを出してもらって、大工さんとかを集めてください。」
「はい((はい))!」
・
・
・
「あーーーー、極楽、極楽…。」
「労働をした後のお風呂は気持ちいいものですね。」
「しかし、やはり広いよね。
ここの辺りから半分に壁を付ければ、問題ないよね。」
「むーーー。ダーリン、仕事の話はしないの!
せっかく、皆で気持ちよくお風呂に入っているんだから!」
「ごめんなさい。」
「それじゃ罰として、今日は身体も洗ってもらおうね!」
「賛成~((はーい))。」
ま、そのつもりだったから良いんだけどね…。
別に強がりじゃないから!
なんて思いながら、まどかさんから順に洗っていく。
全員を洗い終え、湯船に浸かりながら、ふと思う。
「まどかさん、そう言えばマッサージって、この世界には無いの?」
「うーん…。無いかな?」
「肩凝りとか筋肉痛はどうしてるの?」
「治癒魔法かけるか、ポーション飲むか…それくらいしかないけど。」
「え?あんなに気持ちいいのに?」
三将さんズが眼を輝かせる。
「カズ殿、そのマッサージとは何でしょうか?」
「緊張した筋肉をほぐすって感じかな。」
「是非、それをしていただきたいのですが…。」
「別に良いよ。」
「むーーーー!ダメ!最初はあたし!」
まどかさんがいきなり俺の前に立つが、目の前に可愛いお尻があると鼻血が…。
「いいですよ。それじゃ、まどかさん、ターニャさん、アルルさん、ルナさんの順でいいですか?」
「ん!それなら問題ないよ!
よし!寝室に行こぉ~~!」
・
・
・
「まどかさんもターニャさんもアルルさんも寝ちゃったよ…。
んじゃ、最後、ルナさんね。」
風呂から出て、まどかさんの寝室に皆が集まり、マッサージを始めたんだが、まどかさんから肩と背中をマッサージしてたら、皆寝てしまった…。
「ジュークさん、そんなに気持ちいいモノですか?」
「それは…、寝てるまどかさん達に聞いてください。
それじゃ、始めますよ。」
ルナさんをうつ伏せに寝てもらい、肩から背中へとほぐしていく。
「あ…、すごく気持ちいいのですね…。」
「そうなんですか?」
「肩から背中にかけてが気持ちいいです。」
「うん。結構凝ってるね。皆、お疲れなんだね。
それと、これまでいろいろとまどかさんを助けてくれてありがとね。」
「いえ。これも私達の仕事だと思っていますので。」
「でもね、頑張っちゃいけないよ。何事もほどほどが一番だからね。」
「ええ。あ、そこ気持ちいいです。」
「うん。ここが張っているから、少し力入れるからね。ひょいっと。」
「ん…。いた…、でも気持ち良いです。」
「これからは、俺が君たちをケアしてあげるからね。」
「ありがとうございます。」
「そんなお礼なんか要らないよ。夫婦なんだからね。」
「では、後ほどジュークさんをマッサージしますね。」
「ルナさん、ありがと。」
30分後、4人が爆睡している姿を見て、ほっこり微笑んでいる俺が居た。
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