Epilogue

Epilogue

 あれから10年…長いようで短かかった…。


 子供たちは元気にスクスクと育っている。

4年前にアルルさん、ルナさんにもめでたく子供ができ、2年前にまどかさんが第2子を産んでくれた。


 おれの周りは、いつも5体のちびドラちゃんと3体の精霊ちゃん、そして3人のヒト型の子供たちが群がっている。ドラちゃんと精霊ちゃんは生まれたままの大きさ…。

いつ大きくなるのかな?

ゆく末が楽しみだ。


 “色”というスキルだが、まどかさんの言うとおり、相手の色に染まること、つまり仲良くなるようだ。

なので、まどかさんをはじめとする妻たちとも仲が良い。


 ブレイクさん、マデリーンさん、ナタリーさん、そしてニーナさんの四龍さんは、城に住んではいるが、月に数日別荘となった前の家に行き、掃除をしがてら世界の情勢を見守っている。


 魔国改め『マドシメ国』というアンニュイな名前は、正式に国家として認められ、隣国以外の様々な国と交易を行っている。

輸出品は勿論、下着、ボディシャンプー、シャンプー&リンスとウォ●ュレット。

輸入品は、調味料と香辛料。

まぁ、自給自足もできるから、そんなに輸出をするわけでもなく、ゆるゆるとやっているが、先方は俺たちの品を喉から手が出るほど欲しい逸品となっている。


 さて、勇者一行だが、シュン坊はめでたく王族を追い出されたシャルルさんと結婚し、王都で俺たちが卸す品を売る商店を営んでいる。

 しかし、シュン坊のいつもの癖、つまり、綺麗な女性を見ると”結婚してくれ!”と叫びまわる姿を目撃されるとの事。

その都度、シャルルさんにぶん殴られているといった微笑ましい報告も入って来る。


 あかねさんは、城で人狼さんと結婚し毎日モフモフしている。

彼女は、企画・デザインの仕事を担当し、来月から売り出す化粧品の最終調整をしているバリバリのキャリアウーマンとなった。

 ひよりちゃんは、エルフのイケメンと結婚し、エルフの郷で薬師として才能を開花した。

 ガチムキ好きのみほちゃんは、ムキムキ虎族と結婚して、フーギの街でネイリストとして店を構えるようになった。


 皆、“迷い人”として前の世界に帰るという道は諦めたようで、皆、自分の考えで動き、生活を謳歌している。


 あかねさん曰く

『だって、この世界に居ても前の世界と同じ食べ物も食べられるし、それにギスギスした社会じゃないし…。

 素を出しても、皆が受け入れてくれるから、過ごしやすいんだよね。』だそうだ。


 三将さんズは、相変わらずまどかさんの手足となり動き回っている。


・・・


「まどかさん、この陳情書だけど…」

「お米はあの地では育たないから無理だよ。」

「だよね。んじゃ、大麦とか蕎麦とか、寒さに強い作物の方がいいよね。」

「あ、お蕎麦食べたい!んじゃ、お蕎麦作ってもらおうか?」

「そうすると、石臼か水車が必要だよね。」

「ん?何で?」

「蕎麦を粉にしないといけないからね。」

「あ、そうなんだ。さすがダーリンだね。じゃ、早速蕎麦を作ってもらおう!」

「んじゃ、蕎麦の実を探すところから始めないといけないね。」

「あ、蕎麦の実であれば、倉庫にあったと思うよ。」

「10年以上前のモノ?」

「ううん。あそこは時間停止機能付きの倉庫だから問題ないよ。」

「じゃ、レイン、すまないけど蕎麦の実を渡して特産品として作ってもらってね。」

「カズ様、分かりました。」


 まどかさんと二人でいろんな話をする。

二人だとサクサクと仕事が進んでいくんだよね。


「しかし、この世界って面白いね。」

「ダーリン、いきなりどうしたの?」

「この世界ってさ…、前の世界よりも時間が進むのが早いと思ったんだけど、実際こうして暮らしてみると同じ時間に感じるんだよね。おかげで長生きできるから嬉しいんだけど。」

「うふふ。そうなんだよね。

 だって、あたしなんてここに来てから、もうすぐ100年くらいになると思うけど、身体なんてまだ30代前半だもんね。」

「だね…。俺50代だけど、なかなか齢とらないし、体力も衰えたって感じがないんだよなぁ。」

「あ!ダーリンは多分齢はとるとは思うけど、今の体力のままだと思うよ。」

「へ?」

「だって、四龍の主でしょ?

 四龍さんは1000年以上生きるんだよ。その主がぽっくり逝っちゃだめでしょ。

 その称号を持っているから、多分、すごく長生きすると思う。」

「え?それじゃ…まどかさんは?」

「あたしもちゃんと称号もらってるんだよ。」

「賢者以外に?」

「うん。“四龍の主の妻”って。」

「そりゃ、凄いね。

 って事は、俺たちはずっと一緒なんだね。」

「うん。レインもアルルもルナもターニャもね。」


 みんなで楽しく生きていける。家族が増え、どんどん賑やかになっていく。

ちょっぴり喧嘩もするけど、それは愛情の裏返しだ。

相手の事を思っているからこそ喧嘩もするんだ。


 こんな何のスキルも持たないおっさんが良く生きて来れたと実感する…感無量だ。


「あ、ダーリン泣いてるの?」

「え?あ、泣いてたかな?ま、この齢になると涙もろくなってね。」

「ダーリンは優しいからね。」


 帰ってきたレインさんも交えて三人でお茶をする。


「まどかさん、そう言えば思い出したことがあるんだけど…。」

「ん?何?」

「前に居た厨二病の“迷い人”って、たしか管理者だとか、この世界を作った方とか話してたよね。」

「あ~、なんかそんな話もあったね。

 でも、あれって厨二病のヒトが勝手に作った話だったんでしょ?」

「最初は俺もそう思っていたんだけどね…。

 でも最近では、ホントにいるんじゃないかって思うようになったんだ。」

「それは何故?」

「だってさ、俺、何のスキルも持っていなかった”おっさん”だよ。

 そんなおっさんが、瞬殺されたら即蘇生され、まどかさんと出会って子供が生まれ、平和な生活を過ごせるって、何か神がかっているというか、ご都合主義のように感じるんだけどね。」

「あはは、そんな考えするダーリンって面白いね。

 あ、思い出した!

 あたしも、もしそんなヒトがいるんだったら、ダーリンと会って結婚して、子供を産めたことを感謝したいって言ってたんだよね。」

「そうそう。そうだったね。

 いるかどうか分からないけど、お礼は言っておくべきだよね。」

「そうだね。」

 

「それじゃ、ダーリン、レインも居る事だし、3人でエッチい事しよっか?」

「はは…まどかさんはブレないね。」





「ふー。一時はバレるかと思ったけど、あのシメさんというヒト、なかなか鋭いね。」

「そうね…。

 でも、あんなピュアなおじさんが来てくれたから、この世界も平和になったし…、ラッキーだったね。」

「うんうん。それにさぁ…一番最初にパッケージ見た時、いきなり魔王とか勇者とか、どこのラノベのストーリーなんだ?って思ったよね。

 それにさ、ヒトがどの種族よりも上だなんて、どんなストーリー展開なんだって、最初びっくりしたもんな。」

「そうそう、このソフト作ったヒトって、K●K?って思ったもんね。」


「しかし、エンディングがこんな世界で良いのかい?もっと戦闘とかざまぁとか入れなくて良かったの?」

「まぁ良いんじゃない?ユルユルした世界、えぇと、なんて言ったっけ?

 あ!スローライフだ。そんな世界も良いじゃん。」

「よし!それじゃ、この世界は、後は自動モードにして次の世界のパッケージを開けようか?」

「OK!じゃ、次はどの世界にする?」

「うーん…、そろそろ純愛ストーリーってのも良いんじゃない?」

「それって、青春している厨二病の世界とシンクロしちゃうよ。」

「そっか、うーん…」

「ま、ゆっくり考えようよ。時間は無限にあるんだからさ。」

「そうだね。んじゃ、お風呂入ってこようか?」

「さんせーい!で、その後はエッチい事する?」


二人の神様が次のパッケージを開け、別の世界を作り出すのはもう少ししてからの事…。


               ~Fin~

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チートスキルを持たないおっさんが異世界に行っても、瞬殺されるだけでした… 白眉 @kazaya

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