第3章 龍との出会い

3-1 婚活パーティーなんですが…

「さて、皆の者、よくぞ城の仕事に就いてくれた。例を言う。」


まどかさんの爆弾発言から2日、ようやく城のリノベーションが完成した。

2階の広間で城改築記念兼婚活パーティーだ。

総勢700人以上が参加している。

勿論、城のリノベーションをしてくれたドワさんズとホビさんズも参加している。


 あれから2日昼夜問わずジレ製作にあたった。

俺は製作してくれるアラクネさん達の肩をマッサージした。

そしたら、まどかさんに叱られたが、間に合わせるためにも皆一生懸命だったよ。

そして、今朝がたようやく800枚が完成した。


 兵士さんは黒、城のスタッフさんはアイボリー、メイドはメイド服、そしてドワさんズ、ホビさんズの大工さんは茶色だ。

皆がソワソワしている。

そりゃそうだろね。これほどまでの種族が一同に集まっているんだ。


 広間の真ん中に長テーブルが一列に並び、これでもかというくらい料理が並んでいる。

四隅にはドリンク。今回は蒸留酒は置いていない。

そんなの置くとどんな状態になるのか分かっているからね。


広間の少し高い所で、まどかさんが演説をしている。

今朝まで人前でしゃべるのはイヤだと駄々こねていたのだが、今晩サービスするって言ったら、二つ返事だった…。ふふ、チョロいぜ。


「さて、我が長々と話すのも興が覚めるというもの。

 最後に一つだけ皆に伝えておく。

 我とアルルメイヤ、ルナリア、ターニャは、ここにいる我の相談役であるシメ殿と夫婦になることとなった。

 今日は、若い皆に報告すると共に、我に続く者達を祝福しようと思う。

 良きパートナーが見つかるよう祈っておるぞ。」

「魔王様、おめでとうございます!」

「うぉーーーー。アルルメイヤ様ぁ~。」

「ルナリア様、羨ましい限りです。」

「ターニャ様ぁ~、私をツバメに~!」

「シメ様…、羨ましい…。」


あ、こっちでもツバメって言うんだ。

しかし、皆の熱気が凄いね。


「皆、グラスは行き届いたか?

 では、これから変わっていく魔国に!」

「魔国に(((魔国に)))!」


 さて、ここからが婚活パーティーだ。

皆がいろいろな人を会話をしている。


うん、良い傾向だね。


「まど…、魔王様、おめでとうございます。」

「ダーリン、何言ってるの!今日から魔王様じゃなく、まどかで良いんだよ。」

「それにしても、この場で報告するとは思いませんでしたよ。

 種族の長には、どう伝えるのですか?」

「あ、それね。彼らが明日伝えるから大丈夫でしょ。」

「いや、そうじゃなく、明日からいろいろな長が挨拶に来ますよ。」

「それも、必要ないって言っておくね。

 あ、それよりも、各種族の仕事って決まったの?」

「はい。ルナさんが差配してくれましたよ。」


 アルルさんは兵士の訓練、と言っても今は鍛錬と銘打った道路整備を実施中。

ルナさんは得意な部分を活かす仕事を割り振り、差配している。

ターニャさんは、その中でも魔法を得意とする者への教練をしている。

 そして、まどかさんと俺は、種族が集まる場所に街を作るべく、毎日予定地に行き街の造成を行っている。


 皆朝食をとり、別々な行動をとるが夕方には城に戻り、夕食とお風呂と寝室を共にする。

まどかさんも約束を守ってくれて、俺とまどかさんと1名で寝るようにしている。

 しかし、まどかさんは体力が有り余っているのか、昼も夜も元気だ。

それにまどかさんは、城の中では少しだけ魔王風のしゃべり方を普通にしている場面も出てきて、そのギャップが種族のエリートさんには萌えるらしい。

皆、ダメだぞ。俺の妻だからね。


「まどかさん、そう言えばスライムをテイミングできる種族っていなかったんですよね。」

「うん。でも、やってくれるって言ってくれた種族がいたんだよ。」

「え、そうなの?どんな種族なの?」

「トロールっていう種族でね、主に石使いなんだけどクレイスライムを使えるらしいよ。」

「そうなんだ。でも、彼らはそれで良いの?」

「良いって。それに彼らは静かな所が好きなようで、仕事があればそれで問題ないんだって。」

「なんか、申し訳ないね。

 彼らは石とかに詳しいの?」

「うん。鉱物にも詳しいよ。」

「であれば、鉱物を研磨するのも上手なのかな?」

「今度聞いてみよう。」


まどかさんとしていると、アルルさん、ルナさん、ターニャさんが戻って来た。


「お疲れ様、皆はどう?」

「ジュークさん、皆楽しんでますよ。」

「ルナ、カップルは誕生したのかな?かな?」

「魔王様、まだ早いですよ。

 カップルとなっても、結婚までは時間がかかりますからね。」

「そうかなぁ~。あたしとダーリンなんて会ってすぐに結婚だったよ。」

「それは波長が合ったんですね。」

「うん!そう考えれば、ターニャもそうでしょ?

 アルルとルナはどうだったの?」


 あ、アルルさん、ルナさんがモジモジし始めた。


「それは、魔王様が波長が合うという事は、魔王様と契約している私も同じであって…。」

「そうです…。ビビッときました。」


 精霊って契約したまどかさんの性格を受け継いでいるのかな?


 少しエッチい事も考えてしまい、すぐさま煩悩を退散させる。

ふと、左後ろにレインさんが立っていることに気づく。


「レインさん、ここはもう良いから、婚活パーティーに参加してきてね。」

「いえ、私はカズ様の秘書でございますので、この場を離れることはございません。」

「いや、そんな事言ってたら、美味しい食事も楽しめないから。」

「残り物を食べますので問題ありません。」


 うーん…。どうしようかな…。

彼女にも良い旦那さんを見つけてあげたいんだよね。


「それじゃ、魔王様が命令すれば参加してもらえるのかな?」

「いいえ。そのような命令があっても、私はカズ様の秘書でございますので。」


 埒があかない…。

困り果てた俺の姿を見て、まどかさんがニヤニヤとした顔で近づいてくる。


「ダーリンは鈍感だからね。

 レイン、そんなんじゃダーリンは落とせないよ。

 もっと、アピールしないと!」

「ま、魔王様…、な…、何という事を仰るのですか?

 わ、私はカズ様の秘書でありますので、カズ様の傍を離れることはできません。」

「そんな事言っちゃってぇ~。

 レインちゃんも、ダーリンの事が好きだもんね。」

「ひゃ!? ま、魔王しゃま?」


 あ、噛んだ…。

何、この慌てようは?どうしたレインさん?


「ね、レイン。あたしがこれだけ言ってもダーリンは分かってないんだよ。

 これを鈍感以外に何って言うのか、ダーリンに聞きたいんだよねぇ~。

 あのね、レインはダーリンの事が好きなの。

 でね、できれば5番目の妻にして欲しいって思ってるんだよ。」


 はぁ?まどかさん、何言ってる?

たしかにアルルさん、ルナさん、ターニャさんは精霊だし、まどかさんと契約しているから納得したけど、レインさんは一個人として見てあげないといけないんじゃないのか?


「あの…、まどかさん?」

「何?鈍感ダーリン?」

「鈍感なのは否定しませんが、なぜにレインさんも?」

「だって、レインの眼を見れば分かるよ。

 それにあたし賢者だからね。」


 賢者はヒトの好き嫌いが分かるのか?


「あー、もう!レイン、ダーリンはこんな鈍感だけど、凄くやさしいからね。

 もう、早く自分から言っちゃいなよ。」

「ひゃ!? 私からでしょうか?」

「だって、あたしも自分から言ったよ?

 そうでもしないと、鈍感さんをゲットできませんよ。

ね!アルル、ルナ、ターニャ。」

「その通りですわ。」


 あ…レインさんが頭ぐるぐる回っている感じだ。

なんだか、可哀そうになってきた…。


「あの…、もしレインさんを苛めていたり、揶揄っているんだったら、この辺にしておきましょうね。」

「揶揄ってもいないよ。早く言っちゃいなよって言ってるだけだよ。」

「何なら、俺から言いましょうか?」

「え?それはダメ!だってあたしたちは自分から言ったんだからね。」


 言ったのはまどかさんだけだったと思うんだが…。


「わたしを…、…にしてくだ…い。」


へ、レインさん、何を言ってる?


「カズ様、わたしをあなたの妻にしてください。」

「きゃー!レイン格好いい!

 うん!認める、認める! んじゃ5番目ね!」


あ、え?は? 俺の意思は?


「あの…、レインさん、それで良いのですか?」

「ひゃい!問題ありません。

 それに、ずっとカズ様の傍にいたいでしゅ…。」


 噛んだ…、でも可愛い。


「まどかさん…5人目なんですが…。」

「問題ないよ!ダーリンなら10人でも100人でも問題ない!」


三将ズもうんうん頷いている…。


何かがおかしいぞ…。

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