2-10 セメントとモルタル

 結局、昨晩は皆で悩みながら時間切れとなり、何故かまどかさんの部屋で、全員で寝ることとなった。


朝チュンはありませんよ。

やはり、アルルさんもルナさんも皆でというのは恥ずかしいようで…。

勿論、俺も無理ですが…。ん?体力が、です。


…という事で今日は特例措置としてレインさんが籠をドワさんの集落まで運んでくれることとなった。


「カズ様、このままドワーフの集落に向かえば良いですか?」

「うん。お願いします。」


 籠が移動している間、レインさんと少しお話しする。


「各種族の集落って離れているの?」

「そうですね。ドワーフとホビットは比較的近い場所に集落を作っていますが、他の種族は別個に集落がありますね。」

「それって地図に落とすことはできない?」

「できますよ。では、帰りましたら、早速作りますね。」


 優秀な秘書さんだ。

そんな話をしながら、数十分後にドワさんの集落に到着する。


「たびたびお邪魔してすみません。

 先日お伺いした際、洞窟の中に白い粉のようなものがあったのを思い出して…。」

「おぉ、ジューク様。お越しいただき感謝申し上げます。

 それと、城の改築に我々を使っていただき…。」


 長々となるので、早々に切り上げて洞窟の中に入ると、やはり積んであった。


「これは何かに使うのですか?」

「いやぁ、下の階層を掘っていくと結構石が出てくるので、こうして粉砕して保管してあるだけなんです。これと言った使い道は無いんですが、ジューク様はこれを何かにお使いになるんですか?」

「はい。もし、これが自分の知っているモノであれば、面白いものが出来ると思いまして。

 早速、触ってもよろしいですか。」


 了解を得たので、触ってみる。

白い粉…、やはり石灰だ。


「粘土は採れますか?」

「違う洞で採れますが?」

「では、粘土とこれをこねて焼いてもらい、もう一度粉砕してもらえますか?」

「え?二度手間になるんですが…。」

「騙されたと思って、一度お願いします。」


 狐につままれたような顔をしながらも、やってくれる。

焼いたモノを粉砕すると、白色ではなく灰色になるんだ。

出来たモノは…、そう、セメントだ。


「では、これを使って実験してみますね。」


左官屋さんが持っている鏝(こて)を作ってもらい、木の板を準備する。

セメントと水、砂を混ぜる。

混ぜたものを木の板に乗せ、鏝で壁につけていく。


「ジューク様、これは何でしょうか?」

「これはモルタルって言って、これを塗って時間が経つと固まるんだ。

 固まるとより強くなるんで、壁材などにも使えるものだよ。

 それと、石灰は石灰で農作業時にも必要になるから、残しておくと良いよ。」

「ほう…、それは凄いものですな。

 で、これはどれくらいで乾くんですか?」

「ま、一日あれば固まると思うけど、できれば2日は置いた方がいいね。」


「この灰色の粉に水を入れて、砂を混ぜるのですか?」

「砂も入れるし、小石とかも入れると良いんじゃないかな。

 そのあたりは、いろいろと試験してもらえると嬉しいけど。」

「分かりました。では、蒸留班と同様、少し人数を割きましょう。」


 ドワさんズ5名が担当となった。

しかし、ドワさんって、皆同じに見えるのは俺だけだろうか…。


「そう言えば、蒸留酒の出来栄えはどう?」

「ジューク様、よくぞ聞いてくださいました!

 あれは凄い道具ですな。あんな強い酒を飲んだのは初めてです。

 皆、あの酒の虜となっており、作れば作っただけ飲んでしまうというのが日常です。」


まぁ、あれだけ強い酒は一定の部族しか飲まない、というか飲めないので、今は良いが、少しは備蓄しておくと、生活が楽になることを伝え、石灰とセメントをもらい、ゴブリンの村に寄る。

 ゴブリンの村に、石灰を少し土にかけると良いことを伝え、城に戻る。


「カズ様、籠を置いた後、私は如何しましょうか。」

「そうだね…、魔王様が住む棟で合流しようか。」

「はい。承知しました。では、後ほど。」


 ホント優秀な秘書さんだ。

テキパキと仕事をこなしているよ。

 俺は棟に向かって歩く。

歩いている場所は道だろうと思うが、こちらの路は土だ。

当然、雨が降ればぬかるみになる…。

それを避けるために道の舗装は必要だし、壁の強度を上げるためにはモルタルが必要だ。


「魔王様、いますか?」

「ぬ?あ、ダーリ…コホン、ジュークではないか。

 何用じゃ。」

「棟の壁を強くするためのモノを持参しました。」

「ん?コンクリートか?」

「いえ、セメントです。

 これに砂を混ぜると、モルタルになる…んだと思います。」

「それは本当か?」

「今、ドワーフの種族の洞窟に同じものを作り、それを乾燥させております。

 出来上がりは明日ですので、その後にでもお使いください。」

「なぁに、ジュークが作ったモノであろう?

 なら、早速使わない手はない。使い方を教えてもらえぬか?」


 手ほどきをして、モルタルを壁に塗っていく。

左官道具は10個ほど作ってもらったので、10人のドワさん、ホビさんが担当で壁に塗っていく。


「ほう、出来栄えが綺麗じゃな。」

「そうですね。」

「で、これを既にドワーフに作らせているというのじゃな。」

「お察しのとおりです。

 明日にでもなれば、多くの素材が集まります。」

「さすがジュークよ。」

「さらに、混ぜるモノを工夫してもらい、道路などにも使えるように依頼してあります。」

「そうか、でかしたぞ。ジューク!」


これで、壁と通路も出来上がるだろう。

レインさんと合流し、次なる場所に移動する。

あとは、改築記念、婚活パーティーをしなければいけない。

早速、ルナさんの居る本館に行く。


「ルナさん、大丈夫ですか?」

「これはジューク様。工事も順調に進んでいます。」

「それじゃ、城で働いてもらっている女性陣に婚活パーティの事を話さないといけないね。」

「そうですね。では、メイド長を呼びましょう。」


颯爽と登場したのは、如何にもできるメイドさんだ。

ロッテン〇イヤーさんに似ている。もしかして『アー〇ルハイド!』とか言ってるんだろうか…。


「あの…、よろしいでしょうか?」

「はい。構いませんが?」


うぉ!取っつき難い…。


「現在、この城で働いている女性は何名いますか?」

「はい、ジューク様。

 城のメイドが30名、調理が10名の40名です。」

「その方はこの近くに住んで、通っておられる?」

「左様です。」

「では、この城の改築が終わりましたら、城の本館で部屋を与えて住み込みで働いてもらうという事で如何でしょうか?」

「え、そんな大それた事はできません。」

「いいえ。大それたことではなく、その方が効率的なんです。

 幸い、この城にはお風呂があります。

 お風呂も男性用、女性用と別れていますので、安心して入ることもできますし、何よりボディシャンプーとシャンプー・リンスを使ってもらい、綺麗になってもらいたいんです。」

「え?あの三将軍様がお使いになられたものを私たちも使えるのですか?」

「そうです。それに、これまではこの城で働いている女性は婚期が遅れるという噂話もありましたが、今回この城を改築していただいている方とのパーティーを開きたいと思います。まあ、ドワーフとホビット族がメインなんですけどね。」

「え、婚期の話もジューク様はご存じであったのですか…。

 おみそれいたしました…。

 実は、メイドの中にも、婚期を逃した女性も何人も居り、どうしようかと思っておりましたところなのです。

 それに、メイドの中にもドワーフもホビットも居りますので、それは良いお話しだと思います。」

「それじゃ、完成した際にはパーティーをしますので、皆で参加してくださいね。」

「え、でも、その時の給仕はどなたがするのですか?」

「給仕が必要ないように立食でやることとして、飲み物も自分で注げば問題ないですよ。」

「そんなやり方があるのですね…。さすがジューク様です。

 では、早速皆に話をしてきます。」


 ロッテン〇イヤーさん、踵を返し生き生きと走って行った。


そう言えば、アニメ番組の「アル〇スの少女ハ〇ジ」のロッテン〇イヤーさんは、確かフロイラインと呼ばれていたよな…。

という事はMiss.なんだよな…。


 もしかして、メイド長さんもフロイライン?

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