3-13 四龍さん、ご対面~

味噌の評価は半々だった…。

辛いだの、色が黒いだの…。

文句言う奴は食わせないぞ!と思いながらも、味噌に砂糖を混ぜ、田楽風に食べさせてみたら、これが大ヒットした。

我が種族に!と我先に味噌を欲しがるも、ビッグフットさんに味噌全般の権利を渡した事を伝えたら、がっかりしてた。

そんなに美味しかったのか?


 城の生活も順調に進んでいる。

麓の集落も舗装が進み、一軒また一軒と家が建てられ、今じゃ通りを構成するまでになっている。


 これで、大体のところは片付いたかな?

下着もボディシャンプー、シャンプーとリンスも順調に生産されている。


「ダーリン、後は街にお風呂を作ろうよ。」

「いいけど、誰が入るの?」

「そりゃ、城に来るヒトがそこでお風呂に入れるようにすれば、お風呂の気持ちよさを分かってもらえるからね。」

「そうすると宿屋も必要になるね。ドワさんズとホビさんズの出番だね。」

「それでね、おっきなお風呂を作ってみんなで入れるようにすればいいよ。」

「銭湯みたいなものね。」

「んと、スーパー銭湯ね。」

「って事は、サウナとか岩盤浴とかも作ろうか、それと、そこでご飯が食べれるようにすればいいのかな?」

「それ良いね~。」

「でも、この国って、料金というかお金の概念が無いんだよね…。」

「あ…。」


 まどかさんとの会話は面白い。

いろんなアイディアが出るが、貨幣という概念と価値観が無いから、すべて物々交換になっている。

それもまた面白い。


 ルナさんと一緒に“モノの価値”、つまり貨幣の浸透に着手することにした。

拳大のイモ、卵1個、小麦小カップ1杯を1イーモとし、そこからモノの価値を決めていく。

1イーモを銅硬貨一枚、10イーモを銀貨一枚、100イーモを大銀貨一枚とした。

勿論、硬貨は城のドワさんズ造幣局が作って、出来た硬化にはまどかさんが彫られており、なかなかシュールな出来栄えで、まどかさんなんて『これ誰?』って聞いてたくらいだった。

あとは、王国や周辺の国との取引だが、そろそろ事を起こす時期かもしれないが、アルル、ルナ、ターニャと慎重に相談しながら進めないと…。


 順調すぎて怖いくらいだ。

幸せってこんな事を言うんだろうね。


 なんだかんだで老子様が来る20日が過ぎた。


「魔王、シメさん、お久しぶりですね。」

「あ、老子様だ。ダーリンを拉致る日って今日だっけ?」


 拉致るとは聞き捨てならぬぞ。


「はい。今日がその日ですよ。」

「むー。仕方ないか…。

 ダーリン、早く帰ってきてね。チュ!」

「まどかさん、大丈夫ですよ。

 お土産いっぱい持ってかえってきますからね。」

「うん!楽しみにしてるね。

 あ、老子様、三龍さんにもよろしくとお伝えください。

 それと、うちのダーリン、“ふしだらな”者ですが、どうぞよろしくと。」

「すまん…、まどかさん…、

 そこは“ふしだら”ではなく、“ふつつか”だ…。いつの間にか俺、エロいヒトになってるぞ。」

「あ!そうだっけ?

 ま、ダーリンは元気だから問題ないっか。」


 元気? 俺53歳…、そろそろ腹上死も考えておかないと…。


「では、シメさん行きましょうか。」

「え、は、はい。んじゃ、行ってくるね!」

「気を付けてね~!」


 レインさんと籠に乗り、老子バスに乗る。

ネ〇バスよりも早いんだろうな…。この間よりも早く雪山に到着する。


「着きましたよ。」

「ありがとうございます。

 って、やっぱ寒いですね。」

「籠部屋ですからね。中に入れば暖かいですよ。」


老子様が俺好みの女性の姿になってレインさんと一緒に部屋に入っていくと、大きな声が聞こえる。


「やぁ!待ってたよ!」


 そこには、俺的にドストライクな女性が三人座っている。


「へ?あ、三龍さんですね。はじめまして。」


挨拶するが、誰が誰だか分からないが、おそらく赤い髪の女性がハバムート様、青い髪がリヴァイアサン様、金髪がフレイスヴェルグ様でしょうか?


「シメさん、合ってますよ。」


お、また心を読まれたか。


「ハバちゃん、リヴァちゃん、フレイスちゃんも、先ずはシメさんの食事ですよね?」

「そうだよ。先ずはシメさんがこの世界で作ったモノを堪能しよう。」

「ピッツァとお好み焼きですか?」

「それと、この間、ビックフットに作ってた鍋ってのもお願い!それも辛いやつね!」


 なんかハバムートさん、ノリノリなんだけど…。


「あの…、みなさん、すみませんが、私は皆さんの事を何とお呼びすればいいでしょうか?」


 そうなんだよ…。

53歳のじじぃに、ハバムートさん…ま、いける。リヴァイアサンさん?さんを2回つけるのか?ヴァリトラさん?って、絶対に舌噛むわ。

さらにフレイスヴェルグさん…、ごめんなさい。もう噛まずには言えませんよ。


「できれば、噛まないようなお名前でお呼びしたいのですが…。」

「ん?そんなの適当で良いよ。

 私らも夫となるシメさんの事、何て呼べばいいか分からないしね。

 で、そこの娘。そちはシメさんの事を何て呼んでるんだ?」


ハバムートさんがチラッと視線をレインさんに向ける。

あ、レインさん硬直しちゃった…。


「ハバムートさん、すみません。レインは私の第5夫人であり秘書なんですよ。

 あまり、睨まれると彼女も委縮してしまいますからね。」

「お、おぉ…、すまなかった。

 別に威圧するつもりはないのだけど、つい、いつもの癖で…。

 で、何と呼んでいるんだ?」

「ひゃ、ひゃい!カズしゃまと呼んでおります!」


レインさん…直立不動で回答…。

それに噛んでるし…。


「そうか、カズしゃまか…。いいな、それ。その呼び方、もらい受ける。」

ブレイク・ライヴリー似のハバムートさんはフンスカし始めた。


「あ、ズルいですよ。ハバさん!じゃぁ、私はカズしゃんで!」

ニーナ・ドブレフ似のフレイスヴェルグさん。


「む…、出遅れた…。では私はヴァリさんと似せてシメしゃまです。」

マデリーン・ストウ似のリヴァイアサンさん。


完全に“しめ鯖”にしか聞こえません…。


「これで、決まりましたね。

 あとは、シメさんが私たちをどう呼んでいただくかですね。」


 皆、目を輝かせながらこちらを見る。

舌噛むのは嫌なので、女優さんに似てるから、そのまんま女優さんの名前を拝借することとした。

多分、著作権とか有名税とか要らないよね。

異世界だから関係ないよね…、そんな事を思いながら、


「では、ハバムートさんをブレイクさん、リヴァイアサンさんをマデリーンさん、フレイスヴェルグさんをニーナさんとお呼びしてもいいですか?」

「はい((はい))!」


彼女たちにまぶしいばかりの光が纏う。


「うぉ!なんだ?」


「シメさん、彼女たちの今までの名前は二つ名と同じなんです。

 例えば、火龍の長がハバムートと呼ばれているだけで、一人一人の名前は持っておりません。今、固有の名前を付けていただき、彼女たちはそれを受け入れました。

これで、シメさんが彼女たちの主となりました。

おめでとう!みんな!」


老子様が、ウキウキした顔で説明してくれるが、なんだ?この展開は?

どっかのラノベに似たような展開があったと思うが、長たるモノが名無しなのか?

どんなチートな設定なんだ?


「カズしゃま、ありがとうございます。

 これで、私もランクアップし、あなたにお仕えすることができます。

 赤龍として末永くお願いします。」


え?火龍から赤龍?なんじゃそれ?

って、事は…?恐る恐る2名を見る…。


「私は水龍から青龍へと。」

「私は光龍から黄龍へとランクアップしました。」


 どんな設定なんだよ…。

それに、何だ?そのランクアップってのは?

火から赤なら良いけど、光から黄って…。弱っちくなってないかい?

なら、今まで何百の種族に名前を適当に付けていた俺だが、彼女たちは何も変わらなかったぞ…。それに、アルルさん、ルナさん、ターニャさん、レインさんだって変わってないじゃんか!どういう理由か、教えてもらおうか!え!設定さんよ!


「シメさん、彼女たちは魔王に名付けてもらっていますよ。」


あ…、そうでしたね。ごめんなさい。

それに、まどかさんの民でした。

おっさん、早とちりです。


「で、シメさん、そろそろ私にも付けてもらえないでしょうか?」

「へ?老子様は老子様では?」

「イヤです!そんな様付けと年老いた名前。私も、みんなと同じようにランクアップしたいんです!それに、シメさんといろいろ…、ゴニョゴニョ…。」


うん…聞くのは止めよう。

皆ドストライクだから…。


「老子様、分かりました。

 では、老子さ…ヴァリトラさんを、ナタリーさんとお呼びします。」


「はい!」


刹那、彼女を光が纏い、ランクアップしたようだ。


「シメさん、ありがとうございました。

 これで、私も白龍となりました。」


へ?何で白なんだ?

赤、青、黄と来たら、緑かピンクがお約束じゃないのか?


 どうなってんだ!設定さんよ!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る