3-12 爆弾発言!
「それと、もうひとつシメさんが結論をだしておかなければならない事があります。」
俺?これ以上何か結論を出すものってあるのだろうか?
「シメさんは、“愚者”の逆位置で動かれるという事は再生を行うという事であり、“無”というスキルからも有を生み出すという事になりますね。」
「そういう事になります…。」
「魔王…まどかさんは、賢者であり、有の良し悪しを評価するもの、そしてその深慮により、ゼロという概念を理解している存在となります。」
「よく分かんないけど…。」
「有は無、つまりゼロから生まれます。
ゼロの概念とゼロを持つ者が一緒になるという事、これがどのような意味を持つのか、お分かりでしょうか。」
「ゼロを持つ者とゼロを理解する者…ですか?」
「簡単に言えば、ゼロとゼロを足すとどうなるんでしょうかね?」
「ゼロとゼロを…ですか?」
単純に言えばゼロとゼロを足してもゼロのままだ。
しかし、老子様の話は単純な算数ではない。
無から有が生まれる。それを理解する…。
ゼロとゼロ…?
0と0…?
ん?0という文字と0を合わせると、8になるぞ。
8は末広がり、違うな…、9は賢者、0は愚者…。8って何だ?
「老子様、タロットの8でしょうか?」
「シメさんは、流石試験をパスした者ですね。
確かにゼロとゼロの文字を合わせると8になります。
因みに8は、“力”です。その意味は、不可能を可能とする力という意味があります。
でも、それだけでは正解とは言えませんね。もう少し考えてみてください。」
「ダーリン…、8もそうだけど、これ横にすると、なんて文字になるんだっけ?」
ん?8を横に…?
「まどかさん、それが答えだよ。
8を横にすると∞(無限大)という文字というか数字になるよ。」
「って、これが正解なの?」
「やはり、お二人となると速いですね。
そうです。無限大になります。
無限大は永遠、エターニティとも言われますよね。」
「って、事は?」
「あなた達お二人は、この世界を作ったお方に選ばれたという事になりますね。
そして、そのお方に会わねばならない存在なのです。」
なんか急転換なのだが…。
なんで俺とまどかさんが二つで一つになったら、世界を作ったヒト?神?設定者?そんなヒトに会わなきゃいかんのだ?
「老子様、理解できないんですが、俺とまどかさんが二人でその世界を作ったヒトに会わなきゃいけない義務ってあるのですか?」
「それは、まどかさんとシメさんが決める話ですね。」
いきなりそんな事言われても…。
「あたしは別に会ってもいいよ。」
「へ?まどかさん、何言ってるの?相手は神様かもしれないんだよ。」
「神様か誰かは知らないけど、違う世界からヒトを連れてきて、そのヒトが勇者って言われて誰かを倒すって設定を作ってるなら、一言文句言ってやろうと思ってね。」
あ、そう言う事か…。
俺たちは、好き好んでここに来たわけじゃない。それに、みずほさんのようにこっちに来てすぐに死んじゃうような事もなかった。あ、俺もすぐに死んだか…。
前の世界のヒトにしてみれば迷惑以外の何物でもない。
「そうだね。それは言ってもいいかもね。」
「ま、あたしのように前の世界で苛められてた者からだと、なんて言ったっけ?
あ、現実逃避だ。現状から逃げることができたから良かったんだけど…。それでも家族が居るから…。」
「そうか…。俺は一人身だから、その部分は何とも言えない。
でも、前の世界に居ても何も動けない、動かせないという事であれば、俺はこの世界に来てまどかさんに会えて夫婦になれたことは感謝しないと。」
「そうだね。ダーリンと一緒になれることができて、ありがと、って言わないとね。」
「ふふ。お二人は本当に仲良しなんですね。」
「いずれ、その時が来ますから、それまで待っててくださいね。
さて、伝える事は伝えましたので、私はこれで帰りますが、シメさん、次に来られる日ですが、20日後という事でお願いしますね。
その時は他の龍も来ますので、そうですね…、4日は滞在していただくことになりますが、まどかさんよろしいですか?」
「え~、4日もダーリンが居なくなるの?
それ寂しいよ。もう少し短くならない?」
「4日が最短ですね。
でも、シメさんがこちらに帰って来る時は、凄いお土産がありますから、期待して良いと思いますよ。」
「え、お土産?なになに?」
「まどかさん、今、言ってしまうと楽しみが無くなってしまいますよ。」
「そうだよね~。んじゃ、お土産を期待して4日は我慢するかぁ~。」
「ふふ。では、まどかさん、シメさん、またお会いしましょうね。」
老子様が部屋を出ていく。
なんか、適当に決まっていくんだが、それで良いのか?
まぁ、まどかさんなら、それで良いんだと思う。
それに、俺もこの世界での流れに慣れてきて、居心地が良いようにさえ思うようになっている。
「まどかさん?」
「ん?どしたん?」
「なんか、凄い事になっちゃって、ごめんね。」
「ううん。ダーリンなら何かを変えてくれると信じてたよ。」
「しかし、ゼロとゼロなんだってね。」
「うん。面白い考え方だね。」
「哲学なんだろうか…。なかなか理解が出来ない話なんだけど、あれだけ自信もって言われると本当のように聞こえるから凄いよね。」
「え?本当の事だよ。」
「ん?まどかさん、今なんて?」
「この世界を作りし者、変革を求めるも力及ばず隠遁する…。
この世界の理を解いた者にのみ扉が開く…だったかな?
確か、勇者時代に禁書庫で読んだ経典の一説にあったよ。」
「ごめん…、今度は俺が話についていけてないんだが…。」
この世界に飛んできたことだけでも奇天烈な事であり、ラノベのような事があるんだ…とだけ思っていたが、ここに来てタロットカード、∞、神、理etc.…多分なファンタジー要素が強まってきているんだが?
「まどかさん…、めっさファンタジー要素強くない?」
「うんうん。あたしもそう思ってた。
でもさ、こうやってダーリンに会えて夫婦になれたことだけは、ファンタジー万歳!って思うんだよね。」
「そうだね。でもおっさんだけど。」
「それ言うなら、あたしはおばあちゃんだよ。」
「ははは。良いね、こういう会話って。なんだか温かい。」
「うん。ダーリンと会えたこと、本当に嬉しいんだよ。
さ!二日会えなかった分、いっぱい愛してね!」
まどかさん…凄いね…。
でも、俺も負けないよ…。
昼の最中からこの世界の事を忘れ、二人だけの世界に入っている。
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「うん!やっぱり、ダーリンパワーをもらわないと元気がでないね。」
「そのパワーというのが何かが分かんなけど…、そう言ってくれると嬉しいよ。」
「うふふ。もう出ないよね?」
「そのうち“打ち止め”って旗が出ますよ。」
「あはは、それ良いね。やってみようか?」
「腹上死しますって。」
「仕方ないなぁ~。じゃ、また今晩って事で。
あ、そう言えば老子様が言ってたお土産って何だろうね?」
「ごめん。言うの忘れてた。
老子様のところから味噌とコーヒーと緑茶をもらってきたんだ。」
「え?お味噌?んじゃ、お味噌汁が飲めるって事?」
「うん。作ろうか?」
「ううん。あたしが作りたい。
これでも家庭科の実習で作った事あるんだよ。」
「それ以降の調理は…」
「ぜっんぜーん、やってませーん。
だって、生み出すことが怖かったから。」
そうだった…。
しかし、中学校の調理の実習レベル…。
少し不安なんだが…。
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「ダーリン、どう?」
「うん。普通に美味しい。」
「ふふ。褒められた~!嬉しい!」
「しかし…」
「ん?」
「豆腐が欲しい…。」
「だよね…。」
「あ、そう言えば火龍ハバムート様の地には大豆があるんだって。」
「え?それなら豆腐ができるの?」
「うん。それに、発酵技術を得れば、醤油もできるし納豆もできる。」
「えーーーー納豆ぉ~。
あれ、ネバネバしてて美味しくないもん。」
「まどかさん…、俺が真の美味い納豆を食わせてあげるよ。」
「美味しくなかったら3回ね。」
「善処します…。」
ハバムート様、どうかおいしい大豆さんをお土産にください…。
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