3-9 布団とお味噌汁…
「老子様、ありがとうございました。
これで、まお…まどかさんを幸せにできます。」
「そうですね。
彼女も短くはありましたが60年は悩んでいたと思います。」
は?まどかさんって齢が70以上って事?
でも、まどかさんの容姿を見ると十数年しか経っていないように見える。
あ、そう言えば前の世界とこの世界では時間の進み方がおかしいと思ってた。
やはり、この世界は5~6倍速く時間が進んでいるのかもしれない。
「シメさんは年齢なんて気にするんですか?」
「いいえ。まどかさんはまどかさんですし、アルルもルナもターニャも、そしてレインも齢を気にして夫婦になったという訳ではありませんから。」
「ふふ。それであれば、私達も候補になれる訳ですね。」
「へ?でも龍ですよ。」
「でも、今は幼女の姿です。」
「ロリコンはストライクゾーンではないので…。」
「では、明日はもう少し妖艶な容姿に変化してみましょうかね。」
「それは…。」
「ふふ、それは次回にしましょう。それに他の三龍にもシメさんを会わせたいので。」
老子様、何言ってるんだろう…。
いきなり5人も妻が出来て、ただでさえ…ゲフンゲフン。
将来は腹上死だな…。
如何にも“愚者”らしい死に方かもしれない。
話についていけないレインさんと一緒に客室に行く。
おぉ!布団だ!
でも、一つしか敷いてないが…。
あ、俺たち夫婦って事を忘れてた。
「あのカズ様…何故ここにはベッドがないのですか?」
「あ、これは俺が前に居た世界でのベッドなんだ。」
「なんだか、薄っぺらいですね。」
「あぁ。でも温かいぞ。一緒に寝るか?」
「はいっ!」
布団の中に二人で入る。
敷布団と掛布団…、この感覚が懐かしい。
「カズ様、中は温かいんですね。」
「そうだな。」
「カズ様、ひとつよろしいでしょうか。」
「ん?」
「老子様とのお話しですが、カズ様がスキルを2ついただいた所までは理解できたのですが、スキルを使うことができないというのはどういう事でしょうか。」
「あぁ、“愚者”と“四龍の主”だっけ?
あれは二つ名と同じような意味なんだ。
ヒトに相応しいあだ名みたいなものだから、スキルとは少し違うんだろう。」
「でも、愚者は意味がわかりませんが、龍の主ですよ。
それは龍王という意味ではないのでしょうか?」
「へ?そりゃ違うと思うよ。
だって、四匹の龍の主だって事だから、他の龍の事なんて知らないよ。」
「でも、老子様もそうですが、千年以上生きて来られた龍は龍の長なのでは?」
「いや…。多分違う…。違うと信じたい…。」
俺が龍のトップ?そんな訳ないよ…な?
「それと、トロットカードでしたか?」
「あ、タロットね。」
「そうそう、そのカードとは何でしょうか?」
「うん…。俺も詳しくは覚えてないけど、占いとかで使うカードなんだ。
カードにはいろんな絵が描いてあって、カードに描かれた絵が正位置だったり、逆位置だったりで、運勢なんかを占うって感じかな?」
「カードには何が描いてあるんですか?」
「ごめんな。しっかりと覚えてないんだよ。
まどかさんの隠者、あ、賢者の事ね、俺の愚者、それに…、戦車とか太陽とか魔術師ってのがあったと思う。それにそのカードごとに意味があるって事くらいしか覚えてないんだよ。ごめんな。」
「いえ。それでも四龍のスキルをいただいた方が魔国に二人いるのは凄いことなのではないでしょうか。」
「いや、それは分からないよ。
老子様からいただいたスキルってのは、単なるお飾りだと思っているし、スキルってのも自分で見出すものだって言ってたからね。
見いだせなかったら、何も無いって事だと思う。」
「でも、カズ様は見出されたという事ですね。」
「あぁ。俺は見つけたよ。
“無”の意味も、それに“愚者”の意味もね。
だから、これからも魔国が豊かになるように、いろんなモノを産み出していくよ。」
「下着のようなモノですか?」
「あれもそうだね。もっと、すごい下着も作っちゃうかもね。」
「え!それはどういうモノですか?
是非、着てみたいです!」
あ、ヤバい部分に踏み込んじゃったかな…。
「ま、追々ね。」
「もう!でも良いです。カズ様とこうやって二人で寝れるのですから。」
「あ…、それまどかさんの前で言っちゃだめだよ。あとでとんでもない事になるかもしれないからね。絶対内緒にしておきなよ。」
「えー。こんな体験言いたいですぅ。」
「そうすると、レインとの夜はなかなか来なくなるけど…。」
「いえ、それは困ります。
でも、いずれバレることですし…。
うーん…仕方ありません。
今日はカズ様に魔王様抜きで愛していただくことにいたします。」
へ?レインさん、何言ってるの?って、言ってる傍から…もう。
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・
目覚めると正目の天井が見えた。
ここはアパートか?と思うが、横にレインさんが気持ちよさそうに寝てる。
うん。アパートじゃないな。
厠に行って用を足す。
厠のドアに『便所』って紙で貼ってあるのはいただけないよな。
台所に行き、朝食の準備をすることにした。
老子様も朝餉は欲しいだろうからね。
流し台の下の瓶に目が行く。
ん?この瓶の中身は何だ?と蓋を開ける。
「うぉ!すごい!」
大きな声を上げてしまった。
中には味噌が入っていた。
「これ、少し分けてもらえないかなぁ…。」
独り言ちする…。
「ええ。良いですよ。」
うぉ!びっくりした!
後ろに艶やかな女性が立っている。
うん。俺好みの女性だが…、もしかして老子様?
「老子様…ですか?」
「そうですよ。昨晩、この姿の方がお好きだと聞きましたので。」
「そりゃ好きですが、ダメですよ。そんな姿してたら、まどかさんが妬いてしまいます。」
「それも面白そうですね。
あ、でも、そんなことすると、お食事を作ってもらえなくなりますね。では!」
あ、昨日のちっぱい…、もとい幼女に戻った。
「その方が気が休まります。ありがとうございます。」
「でも、この姿で魔王に会うと、逆に怪しまれませんか?
シメさんの性癖がロリコンだって。」
「うぅ…。どちらもキツイです。」
「では、そうですね。シメさんの齢に似合う女性になりましょうか。」
「それも地雷埋めてますけど…。」
でも、これで味噌が入るのであれば問題ない。
「あ、そう言えば、食後は何飲まれますか?」
へ?和食の朝餉の後ですか?
そりゃ、緑茶…、お!緑茶も飲めるのか!
「もしかして、緑茶もあるのですか?」
「ええ。ありますよ。それに、シメさんも好きなコーヒーも。」
「うぉ!すごい!それも分けていただけますか?」
「構いませんよ。
ん~、そうですね。月に一度こうやって食事を作っていただけると嬉しいですね。」
「分かりました。それくらいであれば問題ないと思います。」
「それじゃ、契約成立という事で。」
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美味しいお茶をすすりながら、四龍さんの事を聞く。
この世界には三つの大陸があり、三つの大陸にそれぞれ火龍ハバムート様、光龍フレイスヴェルグ様、そして地龍ヴァリトラ様が住み、大陸を取り巻く海に水龍リヴァイアサン様が住んでいるとの事。
月に一度集まって情報交換を行うが、ガールズトークが凄くて一晩話すこともあるそうだ。…って、全員女性というか雌というか…。どう呼べばいいんだろうか…。
「女性で良いですよ。」
「すみません。また心を読まれましたね。」
「心というより、シメさんの表情で分かりますよ。
さて、それじゃ、ビッグフットの郷までいきましょうか。」
この姿で行くんだろうか?
それに外は寒いんですが…。レインさんがまたくっついてくるな、なんて思いながら、老子様に連れられて、籠のようなものが置いてあるだだっ広い部屋に行く。
「これに乗っていくんですか?」
「はい。」
「んと…、誰がこの籠を持ってって、老子様がですか?」
「ここには私しかいませんから、その選択肢しかありませんね。」
「龍で…ですか?」
「そうしませんと、籠が持てませんから。」
「はい…。すみません。いろいろとご迷惑をおかけします。」
「それじゃ、参りましょうか!」
老子様はウキウキと姿を元に戻した。
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