4-11 スキル発動

「王様、ありがとうございます。

 では、紹介を続けさせていただきます。

 この四人は、皆さんからは四龍と言われる龍さんです。」


「…龍がヒトの姿に化けるなど聞いたことは無い…。」

「誰だ?今しゃべったの。

 王様が静かにしろと言われてるんだ。

 お前ら三下がしゃべる場じゃないんだよ。

 今、しゃべった奴出てこいやぁ!」


 皆が黙る。

 でも、それだけではまた同じ状況となるのは必至だ。


「レイン、今、四龍さんを侮辱した奴は誰か分かるか?」

「はい。この男です。」


 太っちょの親父がレインに連れられてくる。


「なぁ、あんた…、王様がしゃべるなって言われてるのにしゃべるのは、王様を侮辱したって事になるんじゃないか?」

「は?何を言うておる。お前なぞに命令されるいわれはない!」

「しょうがないね。王様、こういう輩がいるのを取り締まらないと、あんたの国はお終いになるよ。仕方ないね。アル君、こいつを感電させちゃっていいよ。

 でも、手加減してあげてね。

 殺しちゃだめだよ。」


キュイ!


 うぉ!すごい勢いの電撃が太っちょに直撃した。

うわ、焦げ臭いわ、って、この太っちょ、ヅラだったのか…。

ヅラがズレてピカピカの頭から煙が出てる。


「ま、死んでないから、この辺にしておくけど、王様と俺達の話を遮る奴は容赦しないから、そのつもりで。」


 あ、今の一言なのかアル君の電撃なのか分からないけど、皆、チビってるよ。


「で、四龍がヒトになれないなんて誰も思わないならそれで良いけど、少なくとも、俺たちが帰る頃にはアンタ達はもう一度ビビることになるからね。」

「わ、分かった…。

 では、今日はどういった要件でお越しになったのじゃ?」


 言葉はよく分からないが、俺達を敬っているのか、自分を上げてるのかどっちなんだ?

まぁ、どうでも良い事なので、放置しておこう。


「あんたたちが召喚した勇者の件だけど。」

「あの勇者たちがどうしたんですか?」


 王様の横に居た女がいきなりしゃべり始めた。


「何て言ったかなぁ…、あ、シュンだっけ?

 あんな弱っちい勇者が来ても、魔国はどうって事ないんだけど。

あいつらを送ってきた王国に挨拶しておこうと思ってね。」

「で、シュンはどうなったんですか?」

「あ?そんなにあいつの事が好きだったのかい?」

「え?そんな事…。」

「だそうだ、王様。」

「知っておる。儂が若ければと思うが、すでに55歳じゃ。」


へ?俺と2つしか齢が変わらんけど…。

それに、いやに老け込んでる。これが政治というプレッシャーなのか?


「安心しろよ。あいつは死んでない。何なら、後で送り返すから。

 それより、勇者が好きなアンタ。召喚の際にも居たよな。

 えと、名前は…。」

「シャルルと申します。

 あの時は貴方様には申し訳ない事をしました。」

「まぁ、今となってはどうって事ないから、気にしなさんな。

 ただ、一点聞かせてくれ。

 何故、他の世界からヒトを召喚するんだ?

 それに魔王なんてのは存在していないぞ。」

「う…、それは…。」

「まぁ、王族しか知らない禁忌の術という事であれば納得するが、もう一度確認するけど、森の神殿で召喚をしていたという事は認めるんだな。」

「はい。」

「では、何のために召喚したんだ?」

「魔王を討伐するためです。」


よし、言質取った。

魔王を討伐するために勇者を他の世界から召喚すると言ったシャルルを見て、掌でその言葉を覆うように取り除く。


「もう一度聞くが、召喚というものを知っているか?」

「いえ…、私どもは召喚というものを存じ上げておりません。」


召喚という存在に情報を書き加えて、召喚ではなく、迷い込んだという体にし、もう一度取り除いたものを出す。


「今一度聞くが、召喚は知らない。でも他の世界のヒトが居る。

 これは、どのように説明するんだ?」

「彼らは、この世界に迷い込んだと認識しております。

 その者を勇者として崇め、魔王を討伐するのです。」


シャルルの前に掌を覆い、勇者と魔王という言葉を取り除く。

なんか、かったるいが、一つ一つ潰していかないとすべてが終わらないから…。


「で、迷い込んだヒトはどうするんだ?」

「迷い込んだ人は…」

「だよな…、シャルルさんが引き取ったって事なんじゃないか?」

「はい…。でも、他の女性も居ました。」

「居たね。でも、そのヒト達は普通に暮らしてるんだろ?」


誘導尋問のようにこちらの都合の良い答えを導きだしていく。


「そうですね。私が知らないという事だけのようですね。

 普通に暮らしてもらえれば良いですね。」


「最後だけど、魔国は知ってるよな。」

「はい。存じ上げております。」


同じように魔国の存在を消し、書き加えた存在を渡す。


「くどいけど、この国の北にある地は誰の土地なんだ?」

「あそこは、誰も住んでいない土地です。

 他国からも雪深く、未開の地であることから、どの国も干渉はしておりません。」

「では王様、あの土地を収めるにはどうしたら良い?」

「未開の土地故、宣言すれば良い事であるが…。」

「では、宣言すれば我々の土地として扱ってもらえるのか?」

「そうである。ただし、どこぞの国が保証しなくてはならぬが…。」


 お、王様、ニヤリとしたね。

やはり政治家だね。


「その保証をこの王国が持つためには、何か土産が必要という訳だな?」

「そうである。そうじゃの、産品の融通とか金品などが通例じゃが。」

「やっぱ、アンタ達は何処まで行っても、上から目線なんだな。」

「な、何を言うんじゃ!これは当たり前の事じゃ。」


いい加減、バカな親父は放置して、その国の保証というものも消し、納得すれば承認するというように書き換える。


「で、俺達が住んでいる場所を国はどうすればいいんだ?」

「宣言すればよいだけじゃ。

 ただ、国境などの問題はあるので、その辺りは隣接する国同士で話し合うことになるが。」


まぁ、こんな所かな。


「では、そう言う事のようなので、お手間を取らせた。

 俺たちは自分の国に戻るが、これからも仲良くしてくれな。」

「ちょ、ちょと待ってくれ。

 有効の印に何か置いていってはもらえぬだろうか?」

「は?この王国には、既に貿易は始まっているけど?」

「主らの国では何が作られているんじゃ?」

「え?聞いてないの?

 俺達の国では、下着とかシャンプーとかを卸しているけど?」

「何?何じゃと?

 儂は何も聞いておらんぞ?シャルル、そちは聞いておるのか?」

「ひゃ、ひゃい!」


 あらら…、下着とかシャンプーとかシャルルさんが独占してたんだ…。

って、シャルルさんが立っている下に水たまりができちゃったね…。

泣き崩れるシャルルさんを眺めていると、急に後ろの扉が開かれる。


「伝令!

 王都北の湖に生息し、国民を苦しめていたポイズンフロッグが池ごと消滅しました。」

「は?」

 王様はキョトンとする。


「あ、すまん。あの池だっけ?赤龍のブレスで吹っ飛ばした。」

「へ?」

 王様、俺の顔見て再びキョトンとする。


「伝令!

 王都北の不毛の地を言われてた山岳地帯に湖が発生しました。」

「伝令!

 毎年反乱していた川の護岸が強化され、川の流れが変わりました。」

「伝令!

 荒れ地となっていた王都北の地が誰かの手により耕されております!

 それも広大な土地です。」


「へ?」

「王様、すまんが、それらはここに居る四龍のブレスがもたらした結果だ…。」


いきなり、横にいたヒト達が平伏する。


「な…、一体どうしたんだ?」


王様が、玉座を下り、俺達の前に傅いた。


「シメ様、マドゥーカ様、我らの地を四龍様のお力で豊かにしてくださり、感謝申し上げる。

そして四龍の皆さま、この地にお恵みを与えてくださり、ありがとうございます。

我らリルクア王国はシメ様、マドゥーカ様、そして四龍の御方がおられる地を聖地とし、決して抗うことなく、未来永劫、かの地と友好を築くことを四龍の御方にお約束いたします。」


ツツっとナタリーさんが前に出る。


「リルクアの王よ、その言葉しかと受け取ったぞ。

 四龍を代表し、この白龍がその約束を見届けた。

 リルクア始め、この大陸を統べる各代表に伝える。

 我ら四龍は、ここに居られるシメ殿を主とし、彼と彼の妻が統べる地を未来永劫守っていく事を約束する。

 四龍の主であり夫となるシメ殿には、我らの加護があることをここに宣言する!」


 へ?

なんでこうなった?

なんかドデカいスケールになってるんだが…。

それに、四龍さん…何故にふんすかしてるんだ?


王様はじめみんな地面に額をこすりつけるほど平伏してるじゃん…。

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