3-2 婚活パーティーは順調に進む?

婚活パーティーは順調に進んでいった。

途中、女性一人を男性二名がお願いするという、あのお決まりのパターンもあったが、振られた方は、サバサバと次に行っている。

たくましい…。


「まどかさん、城で働いているメイドさん達もカップルになったのかな?」

「なれるヒトはなれる、なれないヒトはなれないよ。

 弱肉強食の世界だからね。」


 何か違うような気がするが、取り合えずスルーしておく。


「そう言えば、メイドさんの長で、ロッテン〇イヤーさんに似ているヒトはどうだろうね。」

「誰?その“ロッテン何とか”さんってのは?」

「え?まどかさん知らないの?

 あの有名な“アル〇スの少女ハ〇ジ”に出てきた、メイドさんだよ。

 ほら、ク〇ラの家のメイドさん。」

「ん?そんなヒトいたっけ?

 あたし、そのアニメ見てないから…。

 あ、でもセリフは知ってるよ。確か『ク〇ラで立った~』じゃなかった?」


 おい!まどかさん…、ク〇ラの何が原因で立つんだ?

それに『“で“立つ』って言われるだけだと、完全にアレが勃つと間違えるんだが…。

あ、俺だけか…。


 まどかさんとのジェネレーションギャップを抱えつつ、俺も皆の食事や会話の中に入ろうと動き始めた。


 「ジューク様、少しよろしいでしょうか。」


ん?誰?

振りむいた先になんだか艶やかな女性が立っている。

あ、サキュバスさんか。


「こんばんは。サキュバスさん。楽しんでますか?」

「はい。ありがとうございます。それに、彼氏もできました。」

「それは良かったですね。」

「はい!それとお願いがあるのですが…。」

「あ、マッサージの事?」

「そうです。私たちサキュバスとインキュバスは、マッサージでこの国の繁栄をお助けしようと思います。

 それで…、差し出がましいようですが、私どもの集落にて種族の者にマッサージを教えていただくことはできませんか。」

「うん、いいよ。で、いつからが良い?」

「できれば、魔王様とシメ様が街を作り終える前までに皆ができるようになれば、街の中でも店を持つことができるようになります。」

「そうだね。でも、お店を持つって事は、代金やモノをマッサージの対価として受け取るって事だよね。」

「そうですね…。そこが難しい所です。」

「でも、うれしい悲鳴だね。」


 いろんなヒトと会話をしていく。

そう言えば、ロッテン〇イヤーさんは彼氏をゲットできたのだろうか…。


「おぉ!ジューク様!」


今度は誰だ?あ、ドワさんとホビさんじゃないか。


「こんばんは。楽しんでますか?」

「酒が無いのがいかんが、楽しんどるぞ。特に女性がいるのが良い!

 それと、ジューク様、この度はご結婚おめでと…」

「いやいや、恥ずかしいですから。

それで、皆さんは彼女さんとかはできたのですか?」

「よくぞ聞いてくれた!

 俺のような堅物を好んでくれるヒトも居るんだな。

これまで諦めていたが、ようやく良い運が来たようじゃ。」

「それは良かったですね。」

「でな、儂らもこの城の工房で働くこととなったんじゃよ。」

「あ、それは嬉しいですね。

 いろんなものを作りましょうね。」

「そうじゃな。ジューク様の知識を我らに与えてくださる。それを具現化できるんじゃ、こんな素晴らしいことは無い。

 それに、こんな素晴らしい魔王城を作らせてもらったんじゃ、孫にも自慢できるくらいじゃ。」


 孫はまだまだ先の事だと思うが、ドワさんもホビさんも感無量のようで、涙ぐんでるよ。

うん。みんなが笑っている事が一番だと思う。


「お、良いところに来た。ジューク様、紹介させてもらう。

 今日、儂の彼女になったヒトじゃ。」

「よろしくお願いいたします。」


 あらら、ロッテン〇イヤーさんだった…。


「メイド長さん、良かったですね。」

「はい。これも魔王様とジューク様のおかげです。」

「で、まだ先の事だけど、みんな城で住んでくれるのかな?」

「それが問題なのですが…、ジューク様、近いうちにこの城の麓に街をお作りになられる計画はおありでしょうか?」

「ん?今の所は無いけど…。何で?」

「このパーティーで、少なからずの者が結婚するかと思います。

 そうしますと、夫婦でこの城に住むというのではなく、やはり、戸建てに住みたいと考えます。それに…、子どもが出来ますと…。」

「あ、そういう事ね。分かった。

 それじゃ、今始めている街よりも先に、この城の麓に街を作る事を優先しないとね。」

「はい。ご理解いただき、感謝いたします。」

「でも、メイド長さんも麓から通うって事になるけど良いの?」

「ええ、構いません。やはり、仕事と家庭は別々の場所にしないと気が休まりませんかから。」

「その通りだね。それじゃ、早速まどかさんに伝えておくね。」

「まどか?あ、マドゥーカ様の事ですね。

 なんか羨ましいです。魔王様の事をお名前で呼ぶなんて…。」

「皆、そうすれば良いんじゃない?」

「しかし、私たちには種族名はあっても名前というものはありませんので。」

「へ?そうなの?」

「はい。昔はあったそうですが…。

 ただ…、位の高い方のみだったと記憶しております。」

「それじゃ、誰が誰を呼んだのか分かんないよね。

 それもまどかさんに伝えておくね。」

「ありがとうございます。

 それと…、いささか不躾なお願いをして申し訳ありませんが、名前を付けても良いと魔王様がお決めになった際、即名前を告げたいと思いまして…。

 ジューク様から、何か良いお名前をいただけないでしょうか。」


へ?俺が名付け親になるって事?


「少し荷が重いな…。」

「そんな事仰らず、何か良いお名前を。」


真剣に悩む。名は体を表すと言うから変な名前を付けたら恨まれるよな…。


「カズ様、良い事だと思います。

 私どもは魔王様につけていただきました。

 ここは、皆の気持ちを汲んであげてください。」


おぅ…、いつの間にレインさんが後ろに居たんだ?

全然分からなかったが…。


「レインさん、そんなものなの?」

「はい。因みに私の場合、雨の日に魔王様に拝名していただきました。」


 おい!まどかさん、名前がシンプル過ぎる…。

アルルメイヤとかルナリアとかターニャとか、難しい名前を付けているヒトも居れば、レインやスズといったシンプルな名もあるんだが…。

もしかして、まどかさん途中で飽きた?


「それじゃ、メイド長さんはロッテンマイヤーで、ドワさんはゴン、ホビさんはボビーって名前はどうだろうか。」


 三人が眼を輝かせているよ。

ロッテンマイヤーさんは、あくまでもロッテンマイヤーさんだ。間違ってもアニメに出てきたメイドさんではない。ドワさんとホビさんは…、ごめん。シンプル過ぎた。

あ…、俺、まどかさんの事言えないわ…。


「ジューク様、ありがとうございます。この名前末代まで繋いでまいります。」

「へ?あ、そうなのね…。それじゃ、もう少し格好いい名前の方が良かった?」

「いえ、最初にいただいた名前こそ、個人を象徴する名前だと感じます。」


 ごめん、ゴンとかボビーって付けちゃって…。

ふと、気づくと周りのヒトの目が輝いているのだが…。


「ジューク様、儂にも名を。」

「ずるいです。私が先です。」


あ、いかん。収拾がつかなくなりそうだ。


「ちょっと待ってね。そのまま順番にしてて。

 いま、魔王様に相談してくるからね。」


 まどかさんに事のいきさつを相談する。


「ダーリン、それ良いね!じゃ、カップルになった者じゃなく、結婚したら名前をダーリンから命名してもらうってのはどう?」

「いや…、それでも多いと思うんだが…。それに名前欲しさに結婚を焦るってのはどうかと思うんだけど。」

「まぁ、そこは結婚したら命名するけど、別れたら使えないって事では?」

「そりゃ無理でしょ。個人を呼ぶんだから。」

「むー。。。それじゃカップルでいいじゃん!

 そうしようよ!うん、そうしよう!」


 あ、まどかさん、完全に匙投げたな…。

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