1-11 実践…そして…

「ターニャ…、君は何を言ってるのか分かっている?」

「えぇ、お風呂に入ってボディシャンプーとシャンプーとリンスの実験をします。」

「で、そこに誰が居るの?」

「それは、カズさんと私…?キャー――!」


 ネジ切れたかと思ったよ。


「あのね…。人体実験なんだから、美しい女性がそんな事しちゃダメだよ。」

「美しい女性って…、私の事ですか?」

「他に誰がいるの?ここにはターニャしか居ないでしょ?」


 あ、地雷踏んだ…。

モジモジ、クネクネし始めた…。


「という事で実験は、自分がするからね。」

「え、では、魔王様にご報告だけはしておきます。」

「そんなことすると、まどかさんもお風呂入って来ちゃうよ。」

「しかし…、そんな良いモノを使って…、ズルいですよ。」

「いや…、ズルいズルくないではなく、安全か安全でないかの試験なんだから。

 安全だったら、使ってもらうから。」

「はい。では約束ですよ。」

「はいはい。」

「カズさん!真剣に考えていませんね。」


 実際、どうなるか分からないからな…。

シャンプー使ったら、髪の毛が抜けた…ってなことになったら、ごめんじゃすまない。


 風呂に到着する。

しかし、何度でも言うが広すぎる。

俺一人入ると寂しすぎる…。そのうち住民に開放すればいいか?

なんて考えながら、風呂に浸かる。


「あーーーー、気持ちいいぃーーーー」


何日ぶりの風呂だろうか…。

身体も心も溶けてしまいそうだ。

そう言えば腹に刺さった痕はどうなっているんだ?と見てみると、やはりその部分だけ痣のようなものがある。

ま、手術したと思えば良いか、なんて思いながら、湯から上がり早速ボディシャンプーから使ってみることにする。


 タオルに適量付けて泡立てる…

泡立てる…

泡が想像以上に出ない…。

仕方ない、オーガニック石鹸と同じだと思えばいい。


 それじゃ、と腕から洗い始める。

ヒリヒリ感はないな。後は洗浄が強すぎるとカサカサになってしまうが、保湿成分も入れた方がいいな、って事で少しリンスを混ぜて身体を洗う。

 お!いい感じだ。

泡は少ないが、なんか洗えてるって感じがする。ま、成功としておこう。


 次にシャンプーか…。

少し手に付けて髪に付ける。

泡はやはり少ないが、頭皮の脂が無くなっていき、キシキシいう。

汚れは落ちているようだな。

このままだと髪が痛むから、リンスで保湿すると。

お!いい感じだ。

指通りも良いぞ。それにいい匂いだ。

ま、これも成功としておこうか。


 お湯に浸かりながら、これから先、どうやってシャンプーとリンスのレクチャーをするのかを考える…。

まどかさんに言えば大丈夫だよな…。だって使い方分かってるから。

そんな楽天的な考えを持ちながら湯船から出て脱衣所に向かうと…。


 そこには4人のうら若き美女が座っていた…。

とっさに前を隠す。


「シメさ~ん…、酷いですよ…。

 何で出来たなら教えてくれないんですか?」

「え、だって、肌に悪い結果になったらダメじゃん。単に実験だから。」

「だったら、私達にも実験させてくださいよぉ~。」

「いや、だから人体実験だから。」

「で、その結果は?」

「へ?もう少し改良が必要だけど、まぁ合格ってところかな?」

「よし!それじゃ使いましょう!みんな、行くよ!」

「はい((はい))!」


4人の女性が嬉々として服を脱ぎ始める。


「ちょ、俺いるけど。」

「そんなの関係な~い!シャンプーとリンスをどれだけ待ち焦がれた事か!

 アルル、ルナ、シメさんを拉致りなさい!」


両腕を抱えられ、もう一度風呂に連れて行かれた…。


「で、シメさん、これどうやって使うの?」

「見えませーん。

分かりませーん。

知りませーん。」


皆が洗い場に居る反対側の浴槽の中で背中を向けている。

一応おっさんだけど男だからね。


「もう、シメさん、そろそろ機嫌なおして観念してよ。

 別に取って食おうとしている訳じゃないんだからさぁ。

それに私達タオル巻いてるから問題ないよ。」


 そちらに問題が無くても、こちらに問題があるんです!


「なら、シメさんもタオル巻けばいいじゃん。」


 タオル巻いたら、とんでもない事になるんです!


「使い方分からないから、どんどん使っちゃおっか?」

「魔王様、そうですね。」

「あ、それ待った!あまりつけると頭皮を痛めちゃうからダメだよ。」

「じゃぁ、どれくらいつけるの?」


 はぁ…、結局こうなるのか…。


「ちゃんとタオル巻いててくださいよ。

 でなきゃ、おっさんどうなるか分かりませんからね。」

「うふふ、どうなるか分からないって、いいねぇ。あたしそういうの好きよ。」

「まどかさん!おっさんを揶揄うものではありません!」

「シメさん、かわいい!」


ダメだ…、完全にペースに乗せられている…。


「最初は自分が洗いますからね。みなさん見ててくださいね。」

「はーい((はーい))。」


たしか、この3人まどかさんと契約しているんだよな…。

性格も似てくるんだろうか…。


「みなさん、髪が長いので、これくらいでしょうかね。

 それじゃ洗いますね。」


一回目、泡が立たない…、シャンプーを流す。

二回目、泡が少しだけ立つ…、シャンプーを流す。

三回目、ようやく泡が立ち始めるもまだまだ…。

四回目、普通に戻った…。

って、どんだけ頭皮汚れてるんだ!って言うとセクハラって言われそうだから何も言わないでおこう…。


「泡立たたないよね…、そりゃ数十年クリーンだけで頭皮なんてケアしてないからかな。」

「それ、ハゲマスヨ…。

 まぁ、ようやく頭皮が綺麗になったので、次はリンスです。リンスは髪に十分馴染ませてくださいね。

 あ、身体洗うボディシャンプーには少しリンスを入れるとよくなりますからね。」


まどかさんが終わる。次にアルルさん、ルナさん、最後にターニャさん…。

おっさん、真剣に洗っていたので、皆がタオル巻いているのかいないのか気にもしていなかった。


「なんか、さっぱりして気持ちいいね~。さすがシメさん!愛してる!」

「まどかさん、何言ってるんですか。おっさん揶揄っても何も出ませんよ。」

「え、でも揶揄うと下着は作ってくれるし、ボディシャンプーとシャンプーとリンスも簡単に作ってくれるから、もっと揶揄っちゃおうかなか~。

 ほれ!幸せパンチだよ~。」


まどかさんがスリスリと寄って来る。

こりゃ、おっさんホントにヤバくなるよ。

話をそらさないと…。


「で、髪を乾かした後、感想をお願いしますね。」

「ぷぷ。髪を乾かして感想…、さすがシメさんギャグが冴えてるねぇ。」

「まどかさん…。」

「はいはい。ごめんね。

 でもさ、今日一日すっごく楽しかったんだ。」

「そうですね。魔王様がこれだけ笑顔になられているのは初めて見ますね。」

「それがカズ殿の良さでしょう。」


 そんなに褒めても何も出ませんよ。


「よし、それじゃ、お風呂あがってご飯にしよう!

 あ、シメさん、一緒に食べようね。あと、これ、今日のお礼ね。チュ!」


 頬にキスをされた。

俺、爆発…。顔が真っ赤で頭の中が真っ白になった…。



「・・さん」

「カズさん…大丈夫ですか?」


は!ここは何処だ?

気づくと脱衣所で横になっていた…。


「あ、ターニャ…、俺、なんでここで寝てる?」

「魔王様にキスされ、そのまま湯船に潜られました…。」

「そか…。キスなんて何十年ぶりだもんなぁ…。」

「そうなんですか?

 では、これからは毎日キスさせていただければ耐性がつきますね。」

「誰に?」

「皆からです!」


なに?ターニャさん、何フンスカしてるの?


「ま、それは置いておいて、身体と髪はどんな感じ?」

「それが、今までとは全然違います!

 こんなに綺麗でスベスベでサラサラになるなんて、凄いです!素晴らしいです!

 何なら触ってみますか?」

「へ?」

「髪ですよ、髪!」

「はは、そうですよね。では。お!サラサラですね。」

「でしょ~。カズさん、凄いですよ!たった一日でここまで劇的に変化させていただくなんてすばらしいです。」

「明日は何もないですからね。」

「ふふ。それはどうですかね。

 あ、魔王様が夕食をお待ちですので、お早めに食堂にいらしてくださいね。」

「はいはい。また揶揄われるんでしょうね。」

「さぁ、それはどうですかね。

 あ、これは私からのお礼ですよ。チュ!」


 今日は最高の日か?それとも遊ばれている日なのだろうか…。

美女2名からキスされるなんて、これまでの人生では無かったぞ。


 多分、いい日なんだろう。

そう思う事にした。

…が、脱衣所まで一体誰が運んでくれたんだ?

一瞬で真っ青になった…。

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