1-10 ついでに加工もしておきます
「あとは病気ですね…。ターニャさ…ターニャお願い。」
「はい。病気は種族によってまちまちです。
ですが、ほとんどの病気は薬草と治癒魔法で完治しますね。」
「その薬草と治癒魔法が得意な種族は?」
「ダークエルフや精霊が薬草、魔法はエルフやダークエルフ、ウィッチ、精霊といったところでしょうか。」
ふむ…。やはり魔法を扱える種族は限られている、と。
「治癒はどの種族でもできるの?」
「出来る場合とできない場合があります。
治癒全般で言えば、私となりますね。」
「それじゃ、ターニャが魔法に適性のあるヒトを選りすぐって育てていくってのが一番早いかな。あ、そう言えば魔法ってどんなものなんですか?」
「では初歩の魔法からお見せいたしますね。」
ターニャさんが初歩と言われる魔法を見せてくれる。
魔法が発動するには、何か呪文を言うようだが、旋律によるらしい。
端的に言えば、“何を”、“目的物に”、“どうしたい”という文律で成り立っているようだ。
“ライト”という魔法は、“光”を“この空間”に“照らす”という事だと教えてくれる。
俺も真似てやってみるが、まったく発動しない…。
「シメさんのスキルは“無”だからね。」
まどかさんがケラケラ笑う。
「そうなんだけどね…、何か自分もできるかなって思うんだよね…。」
敢えて強がりを言ってみるが、何も変わりはしないんだよね。
「シメさんは、魔法よりもシメさんの知識が私たちの役に立っているからね!」
うぉ!傷口に塩を塗りやがったな。
ま、下着も作ったから良しとしようか。
「それじゃ、こんな所で進めていきますか?」
「そうだね。んじゃ、明日にでも部族長を呼んで説明するね。
あ、そうだ、その時にシメさんの事を紹介するね。」
は?俺を紹介?
「まどかさん、紹介なんていいですよ。
そんな柄じゃないし、何よりも自分は相談役ですからね。
事の進め方はルナさんが説明すれば良いことですから。」
「そんな事だめだよ。やっぱりヒトと接する方が何かとシメさんにとってプラスになるから。あ、これはマドゥーカからの命令って事で、よろしくね!」
ウィンクしてる…。
一体何があるんだ…、恐ろしい。
「んじゃ、今日はこれくらいにして、後はご飯食べてゆっくり休みましょうか!」
「魔王様、ではそのように準備いたします。
それと、ジュークさんに御付きの者を付けた方が良いかと思いますが…。」
へ?御付きって何?
「まどかさん、御付きって何?」
「んと、メイドさん…かな?」
「必要なしです!」
「えー、良いと思うんだけど。」
「ダメです。それに昨晩いらっしゃったレインさんだって、命令ですからって言って、ずっと廊下で立ってようとしたんですよ。」
「ま、昨日はシメさんが心配だったからね。今日は違うから。」
「夜通し監視されるのはイヤです。トイレの場所とお風呂の場所さえ教えていただければそれで問題ありませんから。」
「あーー、言ってなかったっけ?
シメさん、ここお風呂ないんだよね…。」
は?まどかさん、何言ってる?
日本人ならお風呂でしょ?シャワーはいかんよ。湯船に浸かって一日の疲れをとる。
コレ、ニホンジンノジョウシキアルヨ。
「風呂が無い?!それじゃ、皆どうしているんですか?」
「クリーンって魔法で終わり…かな?」
「石鹸は?シャンプー、リンスは?」
「そんなのないよ~。ホシイケドね。」
「風呂場も無いんですか?」
「あ、それならあるよ。でも使えないよ。」
「一度見せてもらってもいいですか?」
・
・
・
「何だ?この広さは?」
「無駄に広いだけなんだよね~。それにこれだけの風呂にお湯を入れるのって結構大変だから、皆やめちゃったんじゃない?」
うん。長さ25mで8レーンくらいの広さがあるよ。
しかし、あるなら使えば良いんじゃないか?
あ、お湯がないのか…。
「まどかさん、ひとつお願いがあるんだけど…」
「ん?何?」
「ここにお湯をはることはできる?」
「そんなのできないよ~。」
「でも賢者だよね。」
「賢者モードですが…ナニカ?」
何故にそんな無駄な言葉を知っている?
「賢者って、魔法を合成したり作ったりすることはできないんですか?」
「そりゃ出来るけど、そんな事やった事ないし。」
「それじゃ、試しにやってみましょうよ。
そうですね…、温度は40℃くらいで。」
「だからお湯を出す魔法なんて無いから…。
あ、水出して火を当てれば温かくなる?」
「それだ!」
「んじゃ、アルルもターニャも手伝ってぇ~。」
どうやらアルルさんは火でターニャさんは水を出すようだ。
「んじゃ、行くよ!アクア!」
まどかさんとターニャさんの魔法で水が浴槽一杯に溜まる。
次は火か。
「んじゃ、次は火だね。アルル行くよ~、ファイヤーボール!」
水の中に勢いよく火の玉が入っていき、すごい水蒸気が上がった。
「ん~いい感じかな?
どれどれ、お湯加減は…、あっつーーーーーー」
そりゃそうでしょ。あんな大きな火の玉入れたら熱くなるでしょうね。
「魔王様、なかなか力加減が難しいですね。」
「そうだね。んじゃ、少し温度を下げて、アイスブレッド!」
何本もの氷の塊がお湯の中に入る。
「これでどうかな?…うん。まぁまぁだね。
シメさん、こんな感じでどう?」
「うん。いけると思う。」
「やったー!それじゃ、わたしが一番に入るね!」
キャイのキャイの言いながら、皆が脱衣所に向かった。
まぁ、お風呂が使えるようになれば、今度は石鹸とシャンプーとリンスだ。
何とかできないかな…。
そんな思いを持ちながら、浴室を後にした。
「カズさん、お風呂空きました。」
ターニャさんがホカホカの湯気を立てながら俺を呼びに来た。
「お風呂って気持ちが良いのですね。」
「うん。風呂は正義だ!って誰かが言ってたよ。」
「正義ですか…。良いですね。」
「ターニャ、石鹸って知ってる?」
「存じ上げませんが、それはどういったモノですか?」
「説明が難しいんだけど、固形のモノでこうやって手に水をつけてこすると泡が出るんだ。」
「シャボンの事ですか?」
あるんかーい!
「シャボンってのを見せてもらっても良い?」
「でも、あれは衣類などを洗うものですよ。」
という事は、洗濯用の石鹸…シャボンはあるから、少し弱めのものを作れば身体も洗えるようになる。それに香りの良いハーブとかも混ぜれば、良い香りになる。
そのシャボンを改良すればシャンプーにもなる。
よし!明日はこれを完成させるぞ。
「じゃ、明日早速石鹸を作ってみようか。
錬成術とか調合スキルを持っているヒトを集めてもらってもいいかな?」
「両方とも私ができますよ。」
「お!すごいねターニャ。それじゃ明日にでも作ってみようか?」
「いえ、明日と言わず、まだ夕餉には早いので、早速作りましょう。」
2人で研究室に向かう。
「こちらがシャボンです。」
「粉末なんだ。」
「そうですね。これを固めるというイメージで良いのですか?」
「粉末なら液体にした方が良いから…、そうだね、このボトルに出来たモノを入れようか。
多分、このまま使うと少し強いと思うから、希釈して…10倍でいっか。
それに香りの良いこの草のエキスを混ぜてっと。
んじゃ、これを調合っていうか、攪拌してもらえるかな?」
「攪拌とは?」
「混ぜることだけど…。別に魔法使わなくても手で混ぜればいいか?」
その辺にあった気の棒で液体を混ぜ始める。
シャボンとハーブと水が混ざり始め、泡も出てきた。
「おぉ!いい感じだ。どれどれ?
うん。こんな感じだな。じゃ、試作品は完成っと。
それじゃ試しに自分で使用してみるね。」
「あ、あの…カズさん…、これってシャボンですか?」
「あ、シャボンと同じようなんだけど、用途が違うって事ね。
これはボディーシャンプーって言って、身体を洗うシャボンだよ。」
「え、こんな簡単にできるのですか?」
「まぁシャボンがあったからね。あとはアロマオイルとかあるかな?」
「アロマオイルとは?」
「植物から抽出した香りの良い油の事だよ。」
「それなら、何種類もあります。」
「よし!それじゃ、シャンプーとリンスも作っちゃうか!」
ボディーシャンプーをもう少し希釈し、シャンプーとする。
ただこのシャンプーは髪をキシキシにしてしまうから、リンスで保湿とか指通りを良くしておかないといけないんだよな…。
成分についてはまったく分からないが、シャボンを作った際に出るグリセリンも使い、それにアロマオイルやら、ターニャさんが言う良いモノを少しずつ入れていく。そして混ぜ合わせる。
「ま、自分の知識だと、これくらいしか作れないから、後はみなさんで研究すると、もっと良いモノができると思うよ。」
これでシャンプーとリンスの試作品も出来上がった。
あとは、自分で使ってみて感触を確かめればいい。
「それじゃ、お風呂行ってくるね!」
「あ、あの…カズさん、これを使われるのですか?」
「うん。そうだよ。
やっぱ、作ったヒトが感触を確かめないといけないからね。」
ターニャさんが何やら考え事をしている。
「分かりました!では、私も感触を確かめさせていただきます!」
へ?ターニャさん、あんた何言ってる?
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