4-9 王国への殴り込み

「まどかさん…、俺の持つ“無”のスキルの意味が分かったよ。」

「ん?そうなんだ…。」


 まどかさんの表情が暗くなる。


「もしかして、スキルの内容って、何となく分かってたの?」

「うん…。何となくだけどね。一応あたしも“賢者”だから…。」


 やはり、まどかさんは知っていたんだ。

それを使うとどうなるかも…。


「問題は召喚者のまどかさん達がどうなるかなんだよね。」

「うん…。召喚者という存在が無くなれば、あたしはどうなるのかなって…。」

「そうなんだろうね…。それに勇者4人も…。」

「多分、召喚者という存在が無くなれば、勇者という存在についても干渉されると思う…。

 だから、どうなるのかは全く分からないんだよね。」


まどかさんも俺たちの存在自体が無くなるという事に心配している…。


「何か良い方法は無いのかな…。

 例えば、召喚という言葉だけ無くすとか、召喚術自体を無くすこととか…。」

「ダーリン、今何て言ったん?」

「え?言葉を無くす?」

「ううん。その後。」

「召喚術自体を無くす事?」

「それだよ!召喚術という方法を無くせば、召喚者は今後来なくなる。

 ただ、今までの召喚者は召喚されたという事実は残る。これをどうするのかなんだよね。」

「召喚ではなく、この世界に来たという事か…。

 それなら、“異邦人”という言葉が適切なのかな?

それとも違う世界に来た“迷い人”という事も良いかもね。」

「お、ダーリン!だんだん冴えてきたね!

 召喚されたという事実ではなく、前の世界から迷い込んだという再生を加えれば、あたしも勇者達も何とかなるのかな…。」


 違う認識を再生させることが可能なのだろうか。

一度テストしないといけない。


「まどかさん、一度テストしてもいいかな?」

「良いけど、ダーリンとのイチャイチャラブラブな生活という記憶を変えないでね。」

「そんな事はしないよ。今ここにある枕がどうなるのかをやってみたいんです。」

「まぁ、枕ならいいよ。」


 枕を3つ並べる。


「まどかさん、枕は何個ある?」

「3つだよ。」

「んじゃ、1個消すね。」


・・・


「枕は3個あった?」

「ううん。2個しか無いよ。」


 ここで枕を出す際に、新しい枕を持ってきたという思いを持ちながら枕を出す。


「まどかさん、枕は何個ある?」

「3個だよ。ダーリン、何言ってるの?」


 成功だ…。

でも、何か心に穴が空いている。


「まどかさん…。成功はしたけど…」

「罪悪感だね…。」

「多分そうだと思う…。」

「ダーリンは優しいから…。」

「だよね…。俺がこのスキルを使っていれば、俺だけ真相を知っている。

 でも、俺のスキルを知っているヒトは、もしかすると自分の記憶も書き換えられているんじゃないかという疑念を持ってしまうと、今までの関係がギスギスしてしまう。」

「うん…。だから、みんなはダーリンのスキルを知らない方が良いのかもしれないね。」

「まどかさんはそれで良いの?」

「え?だって、ダーリンのスキルだから、あたしが何か言える立場ではないけど…。」

「そうじゃないと思うよ。

 まどかさんは俺の妻であり、俺はまどかさんの夫だよね。

 その夫が記憶を操作してまどかさんとイチャイチャラブラブしているとは思ってほしくないんだ。」

「うん。そんな事は思っていないし、思いたくもない。」

「だったらさ、俺にそのスキルを使わないで、と言うより、そのスキルを消してほしいって言ってくれないかな?」

「でも、ダーリンのスキルだよ。」

「でも、俺は今までそのスキルって使ってなかったよ。」



「ダーリン…」

「まどかさん…。」

「あたし、ダーリンの事愛してる。

 だから…、ダーリンのスキルを消してほしい…。」

「分かった。まどかさ…、まどか、ありがとう。」


まどかさんと抱き合い、長い口づけをする。


「ダーリン…今晩は離さないでね。」

「うん。

 まどか、明日王国へ行こう!

 召喚という存在を無くし、迷い人として再認識させたら、俺のスキルを消そう!」

「うん…。

 ダーリン、ごめんね。」

「これも、まどかと遥のためだよ。」

「ふふ。瑞穂のパパだもんね。

 瑞穂はいい子でねんねしてるから、少しだけエッチい事しても良い?」

「ダーリンパワーの充電だっけ?」

「うふふ。そう。いっぱいちょうだい!」



うん…。翌朝は、相変わらずの灰色だよ。

でも、今日は踏ん張るよ!


「まどかさん、それじゃ、行こうか!」

「うん!ルナ、ターニャ、留守番と遥の面倒をお願いね!」


まどかさんと俺はナタリーさんの背に乗り、フーギまで行き、ブレイクさん、マデリーンさん、ニーナさんと一緒に、リルクア王国の王都まで行く事にする。


「しかし、壮大だな…。

 四龍さんって、こんなに大きかったんだ…。」


四龍さんが龍の姿に戻る。

全員が50mくらいある。デカすぎないか?


「カズしゃん、これくらい盛ればリルクア王国は完全に委縮しますね。」

「ニーナさん…、都市とか消滅させないでくださいよ。」

「それは、相手次第ですよ。」

「でも、この姿はなんだか恥ずかしいですね。」

「ん?何で?」

「だって、下着も付けてないんですよ。」


あ、龍は全裸状態か…。

いかん…、そんな事を聞いちゃうと、ムズムズしてくる。


「ふふ、まどかさん、今晩はまどかさんと四龍とで、お相手しないといけないですね。」

「だね~。ダーリン、もう心ここにあらずだもんね。」

「ちょ、そんな事言わないように!

 ただでさえ、エロいワードなんですからね。」

「ははは。ダーリンはピュアだからね~。

 頭脳は大人、身体は青春!そんなところかな?」


 おい、ヒトをコ●ン君のように言わないでほしいよ。


「それじゃ、王都に向けて行きましょう!」


 今回はニーナさん(黄龍)に乗っていくこととした。


 しかしまぁ…、何だよね。

今回初めてマデリーンさん(青龍)とニーナさんの本来の姿を見たけど、荘厳であり圧巻。

四龍さんすべてが、モン●ンに出てくる古龍のような威圧感満載だ。

完全にビビるよな…。


「ダーリン、乗り物酔いしてない?」

「ありがと。大分慣れてきたから大丈夫だよ。」

「あとさ、最初、王国の奴らとはあたしが話せばいいのかな?」

「いや。俺が仕切ることにするよ。

 まどかさんと四龍さんが凄いオーラを振りまいてくれれば、王国の奴らはビビるでしょ。」

「まぁ、四龍が集まって王国を攻めてきたという事になれば、国よりも世界が滅びるくらいの厄災だからね。」

「そうやって考えると、四龍さんって俺のご飯食べることで満足してるのかな?」

「ええ。満足してますよ。

 それに我が子もできましたし。」


 ナタリーさんがルンルンで話をする。


「そうですね。帰ったら、あの辛い鍋を食べたいです。」

「あ、私はカツ丼で!」

「私はお好み焼きですね。」

「私は…、えと…、えと…、カズしゃんで!」

「ニーナさん…、俺は食べ物ではありませんよ…。」


 緊張もせず王国に向かって飛んでいるが、こんなにリラックスしてて良いのか、と思うくらい笑いながら移動している。


「さて、カズしゃま、ここより王国の領土となりますので、少し低く飛びますね。」

「ん?何でって、王国のヒトにみんなの姿を見せるって事かな?」

「そうです。少しくらいブレスしても良いですか?」

「へ?そんな事すると王国はガクブルするんじゃない?」

「はい。それが狙いですからね。」

「うーん…。荒れ地なら良いかもしれないけど…。

 あ、そうだ。レインさん居る?」

「ここにおります。」

「うぉ!隠遁はやっぱりびっくりするね。

 そう言えばまどかさんや俺たちが召喚された神殿みたいな場所って覚えてる?」

「はい。右前方の山すそにありますよ。」

「確か森の中なんだよね…。

 森というか自然を破壊しないように神殿を跡形も無くすことってできる?」

「森を焼かずに破壊は難しいですね。

 私たちのスキルよりも、カズしゃまのスキルで神殿ごと無くせばよいのでは?」

「あ、そうか!

 俺、完全に無能だと思ってるから、分かんないんだよね。」

「それがカズしゃまですから。あ、あそこですよ。」


山すそに朽ちた神殿があった。

上空からその施設に掌で覆い被せ、無くすようにイメージする。


「お!消えたね。

 それじゃ、王都に向かおうか。」

「カズしゃま、少しくらいブレスを撃っても良いですか?」


 そこに戻るんだ…。


「んと、それじゃ、一人一回で10分の1の力で撃つという事でどうかな?」

「いいですね。」

「場所は俺が指定するけど良いかな?」

「はい(((はい)))!」


 それから先、荒れ地やヒトが住んでない場所を探すのに苦労した…。

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