第2章 魔国再建!

2-1 魔王と種族長…

「では、魔王様、ジューク様、部族の長を呼んでまいります。」

「分かったのじゃ。それと一人一人面会するのは面倒くさいので、皆呼んで来るが良い。」

「仰せの通りに。」


ルナさんが向こうの方の扉を開け、大勢連れてくる。


「では、皆の者、魔王様からのお言葉である。」

「ははーーーー。」


皆ひれ伏している。

凄いね…。これだけの部族を数十年間一人で維持してきたんだ…。

俺の嫁さん、凄いよ!


「コホン、皆の者、面を上げい。

 本日、皆に来てもらった理由は2つある。

 先ずは、我が国に長年待ち望んでおった内政担当兼我の相談役が君臨した。

 ここに居られる方がジューク殿だ。

 ジューク殿は、昨日覚醒され、既に幾多の奇跡を産み出した。

 先ずはその成果を皆に見てもらいたい。

 三将軍前へ。」


 アルルさん、ルナさん、ターニャさんがまどかさんの前に立つ。


「彼女たちを見てもらいたい。

 一見何も変わらないと思うだろうが、彼女たちの香りと髪を見てもらいたい。

 三将軍、向こうまで歩き、戻って来るが良い。」


三将軍は、部族長の間を歩き、反対側まで行って戻って来る。

部族長たちは、彼女たちの香りにうっとりとしつつも、髪がサラサラであることに気づく。


「魔王様、三将軍の方がこれほど美しくなるとは、何か策があったのでしょうか?」


あ、アラクネさんだ。


「アラクネよ、よう申した。

 これは先ず石鹸とシャンプーとリンスというモノを三将軍が使った成果だ。

 さらに、男性、女性とも肌着を改良してくれたぞ。

 試着したい者がおれば後ほど渡す。」


「は、ありがたきお言葉感謝申し上げます。」


「では、次にこの地にある酒を改良してもらった。

 ドワーフ、オーク、竜人の族長よ、確か主たちは果実酒やエールでは物足りないと申しておったな。」

「は!あれは酒ではなく水みたいな物ですな。」

「で、主たちはこれまで酒に改良を加えたのかの?」

「いえ。」

「では、これを飲んでみよ。」


メイドさんがお盆のようなものにショットグラスに注がれた昨日のお酒をいくつか持ってきて、部族長に渡す。


「飲んでみるが良い。ただし、他の部族長もある手前、今日は一杯だけだぞ。」

「は、ありがたく頂戴いたします。」


あ、ドワさん一気に飲んじゃった。


「うぉー!なんじゃこれは!美味いぞ!美味い~!

 魔王様、これをそこに居られるジューク殿が酒を改良していただけたという事か?」

「そうじゃ。どうじゃ?ドワーフの長よ。これで満足かえ?」

「満足も満足。この酒一杯で我が部族は魔王様に終生忠誠を誓います。」

「そうか、オークの長、竜人の長よ、そちたちは如何かな。」

「このようなモノをお作りになられるお方が魔王様の相談役に…。

 これで魔国も安泰ですな。」

「世辞はよせ。これが一つ目の成果じゃ。

 次であるが、先ほども申したとおり、内政を担当してくださる。」

「魔王様、内政とは?」

「この国を富国強兵にしてくれるという事じゃ。

 毎回毎回、勇者にやられておってはたまらんからの。

 そこで、魔国内に担当制を敷き、各部族の得意な点を引き出し、それを作ってもらうこととする。」


 皆がザワザワしている。


「聞けい、皆の者。

 これまでの皆の生活を変えるつもりはない。

 ただ、もっと効率的に作物を栽培し、家畜を飼育すれば、もっとより良い生活が送れるということじゃ。」

「魔王様、俺達は頭が弱いので、もう少し分かりやすく話していただくと嬉しいのですが…」


お、ゴブリンさんだ。


「そうじゃの。では、ジューク殿に説明願おうか。」


うげ!まどかさん、こっちに振ったか…。

ま、仕方がない。


「では、私が説明いたします。

 ゴブリンの族長とお見受けいたしますが、よろしいでしょうか。」

「いかにも。では、よろしく頼む。」

「では、ゴブリン族で芋を100個採取したといたします。

 そのうち50個を部族で食べることとし、50個を衣類などと交換したい。

 でも衣類一枚は芋10個と交換するとなれば、5枚しか衣類と交換できませんね。」

「そうじゃ。」

「でも、衣類を8枚欲しい場合はどうしますか?」

「そりゃ、3枚を我慢するか、食う芋を減らすしかない。」

「そうですね。

 でも、芋の栽培を改良し200個の芋が採れるようになれば、どうなりますか?」

「いっぱい衣類と交換できるという事か?」

「左様です。そういった方法を各部族長の方にお伝えしたいと思います。

 しかし、作物を育てるだけではありません。

 肌着もそうですし、酒もそうです。

 みなさんの部族が、それぞれのスキルを駆使し、一丸となって動けば、もっと生活が良くなるという事です。

 そして、余剰となった食料は国が良いモノと交換いたします。」

「ジューク殿、我々のような戦闘しかできない部族はどうしたら良いのだ?」

「オークの族長とお見受けいたします。

兵士として働いてもらったり、道を良くしたりしてもらいます。

 その働きによって、食料などを渡すという事になります。」

「ほう、自分たちが好きな事をしてモノを作ったり、力を使うという事じゃな。」

「好きな事もそうですが、得意な事というのが正解ですね。」

「のう…、儂らは力も無いが、何かできるのかの?」

「ホビットの族長とお見受けいたします。

 あなた方は細工が得意と聞いております。

 今回、あの酒を造る際に器材が無くて困りました。

 そういった器材を作っていただけることが、得意な事であると思います。」

「おぉ、そうか!そういう事であれば問題ないぞ。」

「では、各部族の得意な事についてはルナリア殿から説明があります。以上です。」


「うむ。シメ…、コホン、ジューク殿かたじけない。

 皆の者、先ずは我を信じ、やってみてもらえないか?」

「おおぅ!((((おおう!))))」


 みんなやる気になってるね。

跡はアルルさん、ルナさん、ターニャさんに任せるとしよう。

まどかさんと俺は玉座を退席し、執務室に戻る。


「ぷはぁーーーー、なんか緊張しちゃったね!

 でも、シメさん格好よかったよん?流石あたしのダーリンだね。」

「はは、まどかさんも素敵でしたよ。

 特に『我を信じ、やってみてもらえないか。』って言えるヒト、なかなか居ませんよ。

 確か、誰だっけ?

 『やってみせ、言って聞かせてさせてみて、褒めてやらねば、人は動かじ』って言った将軍がいたんだよ。」

「へー、シメさんって物知りなんだね。」

「昔のヒトが言った言葉って、すごく勉強になるんだよ。

 思い出したら、いろいろと伝えてあげるね。」

「うん。ありがとね。チュ!」


まどかさんとこれからの事を相談していると、アルルさん、ルナさん、ターニャさんが戻って来た。


「お疲れ様でした。

 皆さんの感触はどうでしたか?」

「カズ殿、先ず報告の前に、我ら妻を労ってもらえないだろうか…。」


あ、忘れてた。

奥様ズになったんだった。

一人一人ハグして頭を撫でてあげる。

ん?4人ハグしたが…、まどかさん…、何故にここに。

ほんとに可愛いね。

それじゃぁと、まどかさん、アルルさん、ルナさん、ターニャさんの順にキスをする。


あ、いかん!

皆、クネクネしながら、変な世界に猛ダッシュしていくよ…。


「で、部族長の感触は?」

「んふふ~、は!すみません。

 すべての部族長が同意し、こちらから提案した事を受け入れてもらえました。」

「皆、ありがとう。

 それじゃ、やれることからやっていくんだけど、アルルさんは明日から軍隊の編成でいいかな?」

「カズ殿の仰せとあれば。」

「ルナさんは市とかの整備と、街道の拠点を考えてもらっていい?」

「ジュークさん、お任せください!」

「ターニャは、魔法に特化した者の選定と治癒の教育という事で。」

「カズさん、分かりました。」

「シメさ~ん、あたしは?」

「まどかさんは、私と一緒に各部族を視察して皆が笑顔で生活できるようにしましょう!」

「分かった~!」


 これで、課題の一つは解消し、次は実践だ。

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