1-7 ブリーフィング
「えと…、自分の方から少しお願いしてもよろしいでしょうか…。」
まどかさんと三将さんズがワイのワイの騒いでいる中、少し提案してみる。
「ん?シメさん何?」
「あの…、まどかさんは“シメさん”で確定で構わないのですが、アルルメイヤ様、ルナリア様、ターニャ様が自分を呼ぶ際、同じ名前で呼ばれるとどなたが呼んだのか分からないことがあって…。」
「あー、なるなる。
この三人、結構声似てるもんね。んじゃ、アルルメイヤはどう呼びたい?」
「私ですか?私は今のままで。」
「だぁかぁらぁ~、それがシメさんが混乱するって事なんだよ。
んじゃ、アルルは“カズ殿”でいっか。ルナリアは、シメさん、ターニャはカズさんで。
みんな、それでいい?」
「は((はい))。」
「あ、ルナリアが私と被るから…、んじゃ、あたしは“しめっち”にしょっと。
んで、シメさん、何で“シメ様”は嫌なの?」
「他意はないんだけど、様って柄じゃないし、それに“シメ様”って言われたら“しめさば”って聞こえるでしょ。」
「あははは!受ける~!しめさば!いいねぇ~。
んじゃ、あたしは“しめさばさん”って呼ぼうかな?」
「断固、お断りです!」
「それじゃ、さばさんは?」
「既に苗字でもなんでもなくなってますが…。」
「いいんだよ~、名前なんてそんなもんだよ。
あ、そう言えばシメさんの漢字はどう書くの?あたしは〇〇君の君と難しい方の路、まどかは平仮名だよ。」
「自分は、すべて漢数字で、七五三と書いて“しめ”って呼ぶんですよ。んでかずみは一と三。」
「何それ、小学校1年ですべて自分の名前漢字で書けるんだ!凄いね!
全部足すと19か…。あ、ジュークってのも有だね。」
「何ですか?そりゃ?そりゃ足せば19ですが、それが何故にジュークって。
あ、まどかさんが訛ってマドゥーカと一緒ですか。」
「そう、それね。結構良いと思うんだけど、誰かシメさんのことジュークって呼ぶの使う?」
「では、私めがジューク様とお呼びさせていただきます。」
「だから、ルナリア様、“様付け”は止めて…。」
そんなに偉いヒトではないのに、様をつけられると歯がゆいんだよね。
「では、ジュークさんで。
しかし、他の種族には“ジューク様”と呼ばせますので!
それと、私たちのことも様付けで呼ばないようお願いしますね。」
齢53にして、なんとなく格好いいあだ名ができたよ…。
今までは、“七五三”とか、“しめ縄”とか“漢数字”が多かったな…。
少し嬉しい。
「えと、それじゃ、この国の事情を聴かせてもらってもよいですか?」
「うんうん、シメさん、やる気出てきたね~。」
まどかさんがケラケラ笑う。
笑顔が可愛いね。芸能人に似てると思うんだけど、誰だっけ?
じゃじゃじゃ?じぇじぇじぇ?あ、違う。
あの子だよ、あの子…。
“半分〇い”に出てた…、そう!永●芽●ちゃんだ。
それと、後の三将さんも誰かに似ているんだよね…。
アルルメイヤさんは、ジョン・ウェインの映画に出ていた…、あのヒト…。なんていったっけ?あ、ゲイル・ラッセルさんだ!
ルナリアさんは、『若草物語』に出てたジャネット・リー、ターニャさんは、『北北西に進路を取れ』のエヴァ・マリー・セイントさんに似ている。
先ほどのアラクネさんもそうだったけど、みんな美人なんだよな…。
もしかして美形しか城に入らせないとか…。
こうやってヒトの顔と名前を憶えておかないと、すぐに間違うんだよな…。
それにしても、女優の名前も出てこなくなったということは脳が廊下しているんだよな…。
何とか現状維持しておかないと、数年後には“あれだよ!あれ!”って指示語だけで会話が進んでいく形になってしまうぞ…。
しかし、道を覚えるのは得意なんだけど、ヒトの顔と名前を覚えるのが苦手なんだ…。
齢もあるんだろうな、なんて考えながら、ルナリアさんが滔々とこの国の事情を説明してくれている。
しかし、何で城しかないんだ?
これじゃ、勇者がそのまま城に来てしまうじゃないか…。
街とか防衛拠点なんかが無いと守れないんだけど…。
「…という事ですが、ジュークさん理解できましたか?」
「え、あ、はい!
理解できないことを理解しました!」
まどかさんが、“あちゃー”という仕草をする。
「国の事情は大体分かりましたが、この国には何故街とか拠点とかが無いんですかね?」
「え?そこですか?」
「はい。だって、勇者がこの国に来て目指す場所はここですよね?
であれば、この城に至るまでに街や壁、防衛拠点を作れば、少しは相手を弱くしたり、こっちも準備できるのかと思いまして。」
「え、準備…ですか?」
「えぇ、勇者が来ても、少しの間でも足止めさえできれば、勇者の力や能力、そういったモノを分析して対応できるのではないかと思うんですが。」
・
・
・
「シメさん…。」
「まどかさん、どうしました?」
「その考えは無かったわぁ~。」
「へ?」
「あのね、私が闘った魔王って、いつも城に居て『ふふ、待っておったぞ、勇者よ!さぁ、存分に戦おうぞ!』とか言って、あそこの広間で戦ったんだよね。」
「は?魔王はアホか?初見で闘うってどれだけ強いんですか?
それとも、相手の能力を知らなくても勝てるとでも思っているの?」
「うーんと、慣例でこうなってます…た?」
「まどかさん…、少し考えようか…。それとアルルさん、ルナリアさん、ターニャさんも皆で考えましょう。」
戦闘についてはアルルメイヤさんを除き、全員が素人。
まどかさんに至っては、勇者の時も戦闘というより後ろから砲台として魔法撃ってただけだったらしい。
軍師と言えるルナリアさんは、戦略は立てたとしても、それを動かす兵が居ない。
ターニャさんはどちらかと言えば後方支援に向いている。
「なんか、終わってる…。」
「シメさん、そんな事言わないで、私たちを助けてよ~。」
「あのね、まどかさん、軍事もそうだけど内政も大切なんだよ。
例えば、兵士を動かすとなるとその兵士が一日に食べる食事を調達しなきゃいけないし、彼らも家族とか居るならお給金も払わなくちゃいけないし、それに戦闘に勝ったら、軍功を上げた人に報奨とかもあげないといけないし…、勿論負けたら賠償とかもある訳だし、勝っても負けても、やる事がいっぱいあると思うんだけどね。」
そうなんだよね…。
若い頃からKO〇Iのシミュレーションゲームにハマった俺は、何度も何度も繰り返したんだよね…。すぐに忠誠心が下がる呂〇とか、序盤に出てくる趙〇をゲットできるまで、何度も公孫〇の国に離反の計を使ったもんだ…。
内政も大切なんだよな…。
内政担当の武将がなかなか在野に居ないんだよ…。
兵糧が無かったら、兵士数も制限されてしまうんだ…。
何回“三〇志演〇”を読んで年表拾ったことか…。
まどかさん達が真剣に悩んでいる。
「それに、この国には今どれくらいの食料が備蓄されているんです?」
「そりゃ、2,3日はあるよ。」
「籠城になった時は、何人で守るんですか?」
「アルルが居れば問題ないよ。城の入り口にずっと立っててもらえば問題ない!うん!」
「ま、確かにこのお城って入り口は一か所しかないように見えたけど、もし、この城を捨てなければならなくなったら、どこから逃げるの?」
「逃げないよ。ここで死ぬだけ。それが慣例…かな?」
頭痛がしてきた…。
まどかさんは自分の運命というモノを受け入れているんだろうか?
「まどかさん…、自分はまどかさんがそんな賢者じゃないと思っているよ。
それに、まどかさんが勇者に倒されることなんてさせたくはない!
であれば、考えることは一つ。勇者を追い返すことだと思うんだけど。」
「そうしたら、今の勇者はどうなるの?」
「あ、用済みになるか、新しい勇者を召喚するか…って事になるかも。」
「であれば、世代交代みたいな事じゃないかな。」
「あの…。その考えは安直でおっさんは嫌いだな。」
「でも、どうしようもないんじゃない?勇者も召喚されちゃってるし、その勇者達がここに来ないようにもできないし…。」
勇者が来ないようにか…。どうすれば来ないようになるのか。
「例えば、交易とか経済を活性化する、もしくは特産品を作る…とか?」
「格好の餌食になるんじゃない?
そんな良いモノがあれば、ヒトは国ごと欲しがるんじゃないかな?」
まどかさん、ちゃんと考えているんだ。
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