第35話 帰還


「『無に帰せ《リセット》』」


秋穂がそう言った刹那、僕の意識は闇に沈んだ。


―――――

ズドーン!


「………ん⁉」


そんな轟音が鳴り響き、僕の意識は覚醒した。


(ここは……あ、上級クラスの教室か!……久しぶりに来たな〜)


しかし、すぐに思い出に耽る暇はなかったと思い知らされることとなる。


「夏姉……あなたは消さなきゃ……」

「……出来るもんならしてみなよ!」


ふと、轟音をした方を見ると、夏穂と冬穂が睨み合っていた。

ものすごい剣幕だ。


(ちょ、お〜い!何してんだ!……って、あれ?)


おかしい。声が出ない。

すると、僕はあることに気づく。


(…え?……手⁉なんで僕の口を塞いでるの⁉)


誰かが僕の口を塞いでいた。

しかも、後ろに引っ張られそうなぐらい体重が乗っている。

まあ……軽いけど。

無理やり手を解くと、まずはやらなければいけないことがある。


「ああ〜空気がおいしいな〜!」


別に美味しくもなんともないのだが、口を塞がれた後はこれをやるものと、相場が決まっている。

つまりあれだ。

「魔◯のレストラン」で、あんまり好みじゃなくても「うまい!」って言わなきゃいけないのと同じだ。

それがなきゃ始まらないってやつ。

まあ、さっき(?)までいた世界よりはこっちのほうが空気はきれいそうだが。

車とか存在してないしね。

ふと、後ろを見ると―――秋穂がいた。


(完っ全に忘れてた!)


しかし僕は気づく。


(あ、なるほど。手の正体は秋穂だったのか)


なんで僕の口を塞いでいたかは不明だが。

それはそうと。

をどうにかしなきゃね。

今の僕には簡単だ。


「冬穂!」

「……お兄ちゃん⁉」


僕は別に鍛えてもないけど、元の運動神経は前世の倍はあるであろう体で全力疾走し、冬穂の頭に触れる。

ついでに撫でる。

すると冬穂はさっきまで放っていたさっきを引っ込めてくしゃりとはにかむ。


「えへへ……」

「「可愛い……」」


守りたいこの笑顔。

同じく殺気を放っていた夏穂も思わずそう呟き、僕とシンクロした。

……ずっとこの笑顔を眺めてたいところだが、仕方ない。

元の目的を達成する必要がある。


「ごめんな……『微雷・改』…おやすみ、冬穂」

「ふぇ?………すぅ…」


……流石は僕の(前世での)妹。

寝顔まで可愛すぎるだろ。

とりあえず眠って僕に倒れ込んだ冬穂をその場に丁重に(⇦ここ重要)降ろす。

さて次は―――


「兄さ〜ん」


そう言って夏穂が抱きついてくる。

……何で(前世での)うちの妹はこんなにみんな可愛いのかな。

思わず撫でてしまうじゃないか。


「えへへ…」

「可愛い…」


なにこれめちゃ可愛いんですけど。

しかし、やはり姉妹なんだな。

撫でた時の反応がおんなじだ。

ふと、夏穂が眠った冬穂の方を見る。

殺気を出すかと思ったが、むしろ表情がゆるくなった。

ちょっと気になったので、僕も冬穂の方を見る。

……なるほど、寝顔まで天使だ。

とても床に転がされてるとは思えない。


(さて、とりあえず外にでるかな……)


僕は夏穂と手分けして冬穂と秋穂を運び出す。

すると、そこにいたのは―――なんか見たことあるやつだった。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

こっから三章始まります。


とあるコメントもらって気づいたんですけど、主人公の性格変わってる気がします。

しばらくタイトル詐欺してるし。

こっから軌道修正がんばりますので、よろしくおねがいします!


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