第3話 入学試験

 今日は学園の入学試験。


 入学試験といっても実力を測ってクラス分けをするためのものだ。


 ククク…ここから僕の伝説が始まるのだ!


 学園に向かっている最中のこと。


「キャー!スリよー!誰か捕まえて!」


 向こうの方から声がしたと思ったら、なんか男の人が走ってくる。


 こいつのことかな。


 横を通り抜けようとするので、まあちょっとだけ。


「うわっ!」


 スリ野郎が派手に転ぶ。


 ちょっと足を掛けてやっただけなんだがな。


 転び方が派手すぎないか?


 とりあえず、盗られたであろうカバンを回収して持ち主に返還。


 持ち主の少女(かわいい)は、


「本ッッッ当にありがとうございます!!」


 と言って残像が見えるスピードでブンブンと頭を下げた。


「いや…僕は何か特別なことをしたわけじゃないよ。俺はただ当たり前なことをしただけだから。」


 決まった…


 ラノベ主人公が言いそうなセリフランキング2位の言葉を言ってやったぜ…


 ちなみに一位は「俺がここで引くわけにはいかない!」だ。


 ……あれ?1位と2位逆じゃね?


 まあいいか。


「あの…名前を教えてもらってもいいですか…?」


「ああ。僕はシガン・シナクだ。」


「じゃあそういうことで。」


 そう言って俺は学園に向かった。


 試験もあるしね。


 その時の僕は気づいていなかった。


 少女の目から――ハイライトが消えていたことに。


「見つけた…私の王子様…絶対に離さない…何が…あっても…」


 その少女の呟きは誰の耳に入ることもなかった。


 ―――

 試験会場にて。


「さあ、ここではここにいる全員――500人ぐらいでしょうか?とりあえず全員でバトル・ロワイアルをしてもらいます。最初に倒れた300人が下級クラス。次に倒れた150人が中級クラス。残った50人が上級クラスになります。あ、ここでは肉体的なダメージは全て痛みだけに変換されますので、好きに暴れちゃってください。」


 試験官らしき人が説明を終えた。


 よし!ここから僕の無双伝説は始まるんだ!


「あ、シガン・シナク君はいますか?」


 え?


「はい。僕ですけど。」


 あれ?何かしたっけ


 試験官につれられ、学園のとある場所に連れてこられた。


 なになに…看板には…理事長室⁉


 本格的にやばくなってきたな…


 これは日本人だけが使える必殺技、「DO・GE・ZA☆」を使うしかないのか⁉


「シガン・シナクを連れてきました」


「うむ。彼だけ入れ」


 中に入ると、いかにも強そうな厳かな雰囲気を醸し出しているいかつい男の人がいた。


 あれ〜おかしいな。


 こういうのは女性理事長と相場が決まっているんだがな〜


 とりあえず、これだけは聞く必要がある。


「よく来たなシガン・シナク君。まあ座れ」


「はい…」


 怖ぇぇ〜!!


「わしはカイセイ・ナダ・ラサール学園の理事長をしておる、コマネチ・ビートじゃ」


「ふっ!ゲホっゲホっ!」


「?大丈夫か?」


「はい…すいません…」


 危ない危ない…思わず笑ってしまうところだった。


 ちなみにコマネチの元ネタは、ルーマニアの体操選手らしい。


 どっからだよとツッコみたくなるが。


「それで…何の用ですか?」


「実はな…孫から伝言があってな…」


 え?


 これは何かやらかした説濃厚か…


 奥義土下座の用意をしたほうがいいかもしれない。


「『シガン・シナクという人を上級クラスにしろ』ということなんだが…原因の心あたりはあるかね?」


「え?」


何それどういうこと?


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る