第41話 交渉

精霊はその属性を司る存在だ。

だからなのかは知らないが、知性がある。

なので、自らを使役した人間の指示にはだいたいは従うし、よっぽどののことなら拒否するぐらいの自我もある。

だから僕はこう考えた。


(案外交渉次第でなんとかなるんじゃね?)


いやさ、分かってるよ?

そう上手く行ったら苦労しないなんてことぐらいさ!

しかし、やりたいんだ。

だって―――交渉でなんとかなったら、かっこいいじゃん?


そういうことで、絶賛交渉中だ。でも……

――――

「あんたのご主人どこにいるか知らない?」

『……』

「串焼き一本あげるから教えてくれない?」

『………』

「わかった。二本でどうだ?」

『…………』

――――

とまあ、こんな感じで交渉を試みているが、全く手応えはない。


まあ交渉といってもなんとか術者の居場所を聞き出そうとしてるだけだが。


学園の近くにいつもある出店の串焼き美味しいのにな……

肉が嫌いなのだろうか?もしくは宗教上の理由で食べれないとか?

確か、あそこは鶏肉を串焼きにしている。

……鳥を神聖視して、鶏肉を食べれない宗教なんて聞いたこと無いぞ?


……ていうかそもそも精霊は、人間の食べ物を食わないのかもしれない。


そうだとしたら、やっぱりリンの言う通り、普通に戦って勝つしか無いのか?

ただ、精霊から攻撃してくることは今のところ無い。

だから、別にこの精霊に恨みがあるわけではないので、倒すのは気が引ける。


(八方塞がりとはこのことか……)


ここが前世なら、コンビニへ直行して羽を生やすところなんだが……残念ながらこの世界にはない。

また、そこで働いていたこともないので知識チートもできない。

……そもそも邪道知識チートなんて全くする気は無いけど。


(さて、どうしようか……)


僕は考えた。

もう、めっちゃくちゃ考えた。

考えに考え抜いた結果――――


(あ、そうだ)


―――思いついた。


「『創焉の世界録アンコール・リバイバル』」


説明が遅れたが、僕の『創焉の世界録アンコール・リバイバル』は、端的に言うと、

例えば、誰かが使った魔法を、僕は100%コピーできる。

ただし、再現できることは僕が知ってることに限る。


そういう能力だ。


この能力は、僕が謎の世界線からこっちに戻る直前に『ナスカ』と名乗る少女(?)からもらった能力だ。

僕が知ってる限りでそんなことが出来るのは神ぐらいだが、あのちんちくりんが神とは思い難い。


親戚の杵築兄さんが、「ちっちゃい少女には気をつけろ」と会うたびに言ってたけど、こういう能力を押し付けられるからかもしれない。

まあ正直僕は得しかしていないんだけど。

……杵築兄さんの過去に一体何があったんだろう…?


それはそうと。

僕が考えたのは、外国人相手にこっちの言葉で話しかけても意味ないよねってことだ。

つまり―――


「『再現アンコール』……


―――精霊同士で話し合ってもらおうってことだ。


―――――――――――――――――――――【補足】

杵築兄さんは他作品の主人公です。

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