第42話 YDK

元の世界で、日本語しか喋れない人と、英語しか喋れない人でコミュニケーションをとりたい時、どうやってしていただろうか?

ポ◯トーク、ジェスチャー、指文字、テレパシー、etc…

まあ、人によって違うだろう。

しかし、ジェスチャーや、テレパシーは別として、昔から行われてきた、確実かつ、シンプルな方法がある。

それが―――通訳だ。


「『再現アンコール』」


僕は、話が全く通じない相手精霊には、同族精霊に相手してもらおうと考えた。

ちなみに、単純に僕が嫌われている可能性はとっくに淘汰している。


……だって悲しいじゃん!

自分が嫌われていると思い込むような人生って悲しいよ?

僕、前世から合わせたら100年以上生きてるからよく分かるよ?


それはそうと。


とりあえず精霊に命令するか。

僕が「あいつが退いてくれるように説得しろ」と言おうとしたその時。


スススス……


なんと僕が召喚した精霊が自ら進んで相手に近づいていったのだ。

もしかしたら、わざわざ口にしなくても念じるだけで良いのかもしれない。


(こりゃぁ楽だなぁ…)


『黙れ…』

「うわぁっとぉ⁉喋ったぁ⁉しかもいつの間に背後に⁉」


嘘でしょ⁉俺が召喚した精霊――名前、ヤミルにしよう(闇の精霊だから。安直。)が喋った⁉


『貴様……読者に説明してることと、本当の由来が違うぞ……!』

「ギクッ!……ま、まさかそんなことあるわけないじゃないか〜」

『我は分かるぞ……我の名前が『「時々ロシア語でボソッとロシア語でデレる隣のアーリャさん」の登場人物の、それっぽいあだ名をパクっただけ』ということをな!』

「ぐぁぁ!」


こいつ…強い!


「…やるな、お前…!」

『……貴様が勝手にダメージ受けてるだけだがな…』


…あ、そういえば。


「交渉は終わった系?」

『無論』


終わったのか!

……うん?まだ普通にいるんですけど⁉


「終わってねぇじゃん!」

『…だから、無論と言っただろう?』


”無論、終わってない”って意味かよ!


「真面目にやれよ!」

『…善処する』

「それやらないやつだから!」


それからまたヤミルが相手の精霊に近づいていき、なにやら会話(?)をしていた。


(なんだよ…やれば出来るじゃねぇか…!)


どうやらヤミルはいわゆる「YDK(やれば出来る子)」らしい。

なるほど、これが子を見守る親の気持ちか…

しかし、現実はそう甘くはなかった。


ドカーン!


「ふぇ⁉」


僕が感傷に浸っていると、急に爆音が聞こえた。

方向は―――ヤミルたちの方だ。


すると、ヤミルがやってきた。

いつの間にか相手の精霊はいなくなっている。

……何があった?


「おい!お前何した⁉」

『誰も悪くない…全部仕方なかった。だって世界はこんなにも――残酷じゃないか』

「ベ◯トルト!(まともに)話をしよう!」

『だが断る』

「……そろそろ渋滞しすぎだと思わないか?」

『……同感だ』


閑話休題。


「……で、お前何した?…15文字以内で頼む。」

『ムカついたから潰した』

「……は?」

『ここまで話が通じないやつは初めてだったからな。不意を突いて殺った。』

「おいいいい!!!!」


術者にキレられたらどうするんだ!くそばかぁ〜!


結論:ヤミルはY(殺ることしか)D(出来ない)K(くそばか)だった。


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