第43話 再会

なんやかんやで、Y(殺ることしか)D(出来ない)K(くそばか)のヤミルのおかげで部屋には入れそうだ。

ただ……


「もうちょっとマシな方法は無かったのか⁉」

『考えるのもエネルギー使うからな。変に魔力使われたく無いだろう?』

「余計なお世話だよ!考えることを放棄するな!」


こんなやり取りをしてる方が疲れるんだよ!


それはそうと。


(部屋……入るか)


今更ビビってるわけではないが、あんな精霊を守備に置いているくらいだ。

もしかしたら、やばい組織の支部にでもなってる可能性だって否定しきれない。

……犯罪の温床とかになってたら嫌だなぁ。

僕は覚悟を決めて部屋を開けた。

そこに居たのは―――


「ヨシノちゃん…⁉」

「シガン……様⁉」


―――――――――――

(ヨシノside)


「今日の授業は以上です。はい解散〜」


今日もつまらない授業を終えた。

正直なところ、教科書を読みながらリンさんに勉強を教えるほうが自分のためになると思うが、そんな気持ちはそっと飲み込んで帰る用意を始める。


私は手早く用意を終えると、誰よりも早く中級クラスを出た。

理由は、愛するシガン様に会うためだ。


上級クラスと中級クラスの教室にはかなり距離(具体的には学園の端から端)があるので、少し小走りで向かう。


(次、おじいちゃん理事長に会った時は中級クラスの位置を上級クラスの目の前にしてもらおう)


そんなことを考えていると、いつの間にか着いていた。

うん。いつもどおり上級クラスには邪魔な人はいない。


えっと…シガン様は…あれ?いない?

いつもなら自分の席(一番窓側の列の後ろから二番目)で机に伏せて可愛らしい寝息を立てて眠っているのに…


しかし、シガン様がいつも枕代わりにしているクッションは机の上に残ったまま。

もしかしたらトイレにでも行ったのかもしれない。


私はシガン様を待つ間、羨ましくもシガン様の後ろの席で寝息を立てているリンさんを眺めて待つことにした。


―――待つこと数時間。

時計を見ると、もう10時近くなっていた。


その時間になって、やっとリンさんが起きた。


「やっと起きましたかリンさん。」

「ふぇえ?…ししょー?」


この子は本当にシガン様に懐いているらしい。

起きて第一声が「ししょーシガン様」だとは……


「申し訳ありませんが、私はシガン様ではありません」

「え…?ヨシノさんがいるならししょーもいるんじゃないの?」

「それはこっちの台詞です。リンさんがいるならシガン様もいるんじゃないんですか?」

「「……え??」」


この言い方から、リンさんはシガン様の行方を知らないらしい。


(……シガン様?)


「……ヨシノさん、ひとまず帰って話し合いしませんか?顔色も良くないですし、なによりこんな時間まで学園に残ってることがししょーに知られたら、『女の子なんだから早く帰らないと危ないよ』ってお叱りを受けますよ?」

「そうですね……」


私達はひとまずリンの言うとおりにするのだった。


―――――――――――――――――――――

【補足】

この世界にも時計はありますが、どの家にもあるというわけではありません。

学園にはもちろん最高級の物が置いてあります。

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