第19話 まずはこれだよね?

「……座学を…教えてほしいです…」


そういえばリンって頭が弱かったっけ。


実技は上級クラスでも指折りだと思うんだけどな〜


成績は座学との合算だから、実技極振りは少し危うい。


「授業中寝なきゃ良かったのに」


「うわ〜ん。眠いんだも〜ん!」


リンはいつも最後まで寝てるから、教室の鍵を渡されるほどの怠けっぷり。


でもこの数ヶ月で分かったことだけど、リンは毎日基礎練習を夜遅くまでやって、朝早く起きて学園に行くまでに少しする―――という修行ずくめの生活を続けていた。


しかもそれをずっと前から続けているらしい。


つまり―――


「リンは真面目だな」


「ふぇ⁉どしたのししょー?」


「その真面目さを座学でも活かしたら良いのに」


僕がそう言うと、リンは苦い顔をして、言った。


「実は…昔から机に向かって何かをするのが苦手で…」


てへっ☆っと舌を出すリン。かわいい。


ヨシノちゃんとは違った愛らしさがリンの魅力だと思う。


「……それで、どこがわからないんだ?」


「全部」


……は?


聞き間違いかもしれない。


リプレイで見てみよう。


【シガンの脳内リプレイ】

『……それで、どこがわからないんだ?』


『ないよ!』


よし。


大丈夫みたいだな。


「なら大丈夫じゃないか?」


「全然大丈夫じゃない!」


え?でも……


「『ないよ!』って言わなかったっけ?」


「私は全部って言ったの!」


おかしいな。


そんな記憶ないぞ。


くっ!頭が痛む!


……しかし、どちらにしよ大前提となることがある。


僕は自分が出来る最大限の作り笑いで言った。


「授業、受けよっか?」


まずはこれだよね?


「……はい」

――――

「はい。今日の授業はこれで終わりです。解散!」


ふう…終わったか。


「(しかし……前世の知識はどこで役に立つかわからないな…)」


僕は眠くなるたびに体に雷魔法を撃っていた。


そのおかげでなんとか寝ずに済んだようだ。


眠くて微調整が出来なかったので、かなり痛かったが。


こういう時に回復魔法って便利。


少し複雑ではあるが。


先祖に礼を言いながら殴ってやりたい気持ちだ。


さあリンはどうだっただろうか。


やっぱり撃沈してるかな。


九州沖での戦艦大和かな。


リンは席が僕より後ろなので、確認することができない。


期待と不安を抱き、様子を見てみると―――案の定だった。


「えへへ…ししょー…」


幸せそうな顔(かわいい)をして寝ている。


(起きていたら)普段はそっけないリンが、こんなにかわいい顔で寝言を言っているなんて、キャラ崩壊もいいところだ。


さすがに起こすかな。


「ふふふっ!ししょー…」


だめだ。起こせない。


すると僕はリンのサラサラな髪に目が行った。


欲望に負けて撫でてみると、「えへへ…」と嬉しそうにそれを受け入れる。


なんだこのかわいい生き物。


さすがに起こすのは忍びなさすぎるので、僕は起きるまでずっと寝顔(かわいい)を僕は眺めていた。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

こんにちは。椛みさかです。


補足です。リンネの修行は、とても基本的なことばかりです。周りのものに魔力を流す練習や、魔力の流れを整える瞑想などをします。ちなみに瞑想中に寝てしまうこともあります。

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