第20話 図書館へ

次の日


この日は勉強を教えるためにリンと図書館に行くのだが―――


「……ししょー」


「どうした?行くの嫌か?」


どうもリンの機嫌が悪い。


(あれ〜僕何かしたっけな)


全く思い当たらない。


「別に嫌じゃないもん。場所はともかく、むしろししょーと出かけられて嬉しい。でも何で……」


リンが暗い顔をする中、


「シガン様〜こんなやつほっといてもう行きましょうよ〜」


「いや、今日はリンのためだから…」


「だから!なんでこの女がいるの!」


リンがそう言って頬を膨らませる。


「かわいい…」


「にょわぁ⁉」


リンが突然うずくまる。


具合でも悪いのだろうか。


「リン、体調悪いなら今日はやめとくか?」


「昨日は10年ぶりに早く寝たので体調はバッチリです!」


「そ、そっか……」


依然として、うずくまったままだし、耳も赤い気がする。


原因がわからないから対処しようがないなぁ…


そういえば僕って前世で何かに足を滑らせて死んだっけ。


なんか銀色の…あ!あれ工具か!


なんであんなところにあったんだろう…


おっと、だめだ。


こんな現実逃避をしてる場合じゃない。


……仕方ない。


「ちょっと失礼!」


「え?」


僕はリンをお姫様だっこした。


「もう埒が明かないからこのまま連れてくよ!」


「ふぁ、ふぁい……」


リンの顔が真っ赤になってる気がするが、気にしない。


「さ、行こう。ヨシノちゃ……」


すると背後から凄まじい殺気を感じた。


すぐさま後ろを振り返るが、そこには笑顔のヨシノちゃんしかいなかった。


しかし依然として殺気は続いている。


するとヨシノちゃんが口を開く。


「シガン様……は、何?」


「何って……リンだけど…」


「違う。その持ち方は何?って聞いてるんですけど」


「あ、えーと……」


だめだ。


ここで『お姫様抱っこ』とか言ったら―――殺られる!


とりあえず、殺気で顔色が戻ったリンを下に降ろす。


リンがこの世の終わりみたいな顔をしているけど、今は……気にしない。


とりあえず僕は宣言しなくてはいけない。


「何もないです!」

――――

「ふう…やっと帰ってこれた…」


今日はとにかく疲れた。


あれから図書館に行ったものの、ずっとリンとヨシノちゃんが睨み合ってて、正直勉強どころではなかった。


僕は知らぬ存ぜぬを貫いてなんとか二人に勉強を教えたが、はっきりしたことがある。


―――僕は絶望的に教えるのに向いていない。


僕は前世から勉強方法(教科書を一回サラッと読む)を変えていないので、それを教えたけど、ダメだった。


やはり個人差というのは大きいらしい。


(今日は…日課をしてる場合じゃないな…)


こんなに疲れた日にするもんじゃない。


それから僕は適当に食事を済ませて、布団に入った。


尚、今日はヨシノちゃんには「今日だけは一人でゆっくりさせてくれ」と言ったので布団には僕しかいない。


いつもより布団が広く感じる。


さあ寝よう―――と思ったら、窓の方で音がする。


何かと思って開けてみると、そこには鳩がいた。


手紙が足にくくりつけてあるので、伝書鳩らしい。


その内容を見て、僕は絶句した。


要約するとこうだ。


『テストが終わったら一回家に帰ってきなさい。


僕は明日、胃薬を買いに行こうと決めた。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

こんにちは。椛みさかです。(この挨拶いらんくね?)


補足です。この世界の郵便は、専門の商人に持っていってもらうことがほとんどです。しかし、それは庶民の話であって、貴族は伝書鳩を使うことが多いです。ただし、それだと大きめのものや、重要な書類は送りづらいので、使用人に持っていってもらうこともあります。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る