第18話 新たな問題
あの時から早ニヶ月。
僕は、新たな問題に直面していた。
「ししょー!」
そう言ってリンがいつものように抱きついて来るのだが、まあそれはクラスメート(主に男子)から、冷たい目で見られるだけなので、大丈夫である。
前世では中高と一緒だった、越智と浦野という有名なバカップルがいたので、そういう目線を向ける側だったのがなんとも懐かしい。
なるほど。二人はこんな気持ちだったのか。
浦野に聞いてみたら『慣れ』と言っていたのだが、たしかにそうだ。
……まあ僕とリンは恋人とか、そういうのじゃないんだけどね!
アハハ、自分で言ってて悲しくなってくるや。
……そんなことはどうでもいい。
なんと……なんと……
……テストが迫ってきているのだ。
前世ではテストなんて平均98点を下回ったことなかったから余裕だと思ってたけど、この世界のテストはどうも勝手が違うらしい。
座学と実技の2つに分かれているのだ。
座学は、教科書なんて一回サラッと読めば覚えられるからいいが、実技が問題だ。
何が問題かと言うと――
―――内容次第では無双できないかもしれない。
シンプルな戦いだったら僕は無双出来るだろう。
しかし、例えば教師が最上級魔法を撃ってきて、「これを防げ」とでも言われたら、僕は華麗に無双ではなく、ただその魔法を消すことしかできない。
おそらくリンだったら火魔法の『獄炎』を撃って相殺すればしまいだろう。
でも、僕は上級魔法は深淵魔法を除いて、雷魔法の『轟雷』しか使えない。
その上の最上級なんて以ての外だ。
空気魔法の修行の時間の一部を、他の魔法の練習に当てれば良かったと後悔している。
僕の人生の本分は無双だ。
今はまだできていないが、絶対に無双してみせる!
僕が心の中でそんな決意を固めていると、さっきから「ししょー!」と抱きついてくるが、完全に無視をしていたリンの目がうるうるしだした。
「ししょー、何で私を無視するのぉ!」
「あーごめんごめん。少し考え事をしていてさ」
「なら許す〜」
そう言うとリンはさらに抱きつく力を強めた。
最初のうちは、「あのリンネ・テンセイが懐いている⁉」という目を向けられたが、今は皆慣れたのか、むしろ僕に憐れむような目を向ける者もいる。
「…で、なんの用なんだ?リン。」
リンには「目的がないのに来るな」と言ってある(若干涙目になっていた)から、その言いつけを守っているなら何かしらの目的があるはずだ。
するとリンの表情が曇り、絞り出すように言った。
「……座学を…教えてほしいです…」
僕は心の底から納得した。
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こんにちは。椛みさかです。
補足です。リンネは可愛いですが、貴族なので言い寄られたりはしません。普段の態度がシガン以外にはそっけないという理由もあります。
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