第17話 修羅場

「おかえりなさい、シガン様!」


日課を終えて寮に戻ると、いつもどおりヨシノちゃんが出迎えてくれた。


今日があったから、ヨシノちゃんの笑顔(かわいい)にはとても癒やされる。


「ここが天国か…」


「違いますよ⁉勝手に死なないでください!」


「そうだぞししょー、死んじゃダメだぞ!」


「「え?」」


僕とヨシノちゃんの声が揃う。


そこにいたのはまさかの――――リンだった。


―――

とりあえず気になるんだけど…


「リンはなぜここにいるの?」


「ししょーをストーキングしました!」


「おい」


サラッと犯罪行為をするな。


「ていうかここ男子寮なんだけど…」


「弟子は関係ないと聞いて…」


「どこで聞いたんだよそれ〜!」


「……シガン様?」


ヨシノちゃんの方を見ると――――凄まじい殺気を放っていた。


「ど、どうしたのヨシノちゃん?」


「弟子」


「へ?」


「弟子ってどういうことですか!」


ヒィ!


「これには深い事情があって…」


「ほう…?」


ヨシノちゃんが怖すぎる…


この恐怖は実家にいた頃、日課の飛び降り(自殺とは言っていない)で、頭からいきそうになった時以来だ…


「それについては私から説明するぞ!」


「リン⁉」


「へぇ……リン、ねぇ…」


やばい…僕の第六感が逃げろと言っている。


多分逃げたら死ぬけど。


するとリンが説明し始めた。


「まずは自己紹介からいこう。私はリンネ。リンネ・テンセイだ。ししょーとは深い絆で結ばれている!」


おおい!


紛らわしい言い方するんじゃねぇよ!


「…私はヨシノ。ヨシノ・ビート。シガン様は私の運命の人。誰にも引き裂けない。」


ヨシノちゃんも、紛らわしい言い方やめて!


「「ふふふ…」」


バッチバチじゃないか…


……逃げ出したい。


しばらくにらみ合いが続いた後、ヨシノちゃんが口を開いた。


「それで、弟子というのは?」


「ああ!忘れてた!」


忘れるなよ。


「ししょーはこの学園で唯一私に勝てる人なんだ!……秘密も知られてしまったが。」


秘密?


……なんのことだろう。


「で、それと師匠とでなんの関係が?」


「……私はネコハ王国の貴族なんだ。しかも武功での成り上がりのな」


へぇ〜そうだったのか。


ちなみに僕とヨシノちゃんはネトゲノフレ王国出身だ。


「……で?」


「…私は一人っ子なんだ。だから後を継ぐために幼少期のころから鍛錬を重ねてきた。…その時間に費やしすぎて勉学は今ひとつだがな」


……『睡眠狂』、『現代版眠り姫』だったっけ。


つまり、昼間は寝ていたのか。


「……で?」


「…この学園に来ても、実技では負ける気がしなかったんだ。バトロワでも全員倒したしな」


…参加しなくて良かったかも。


「それをししょーはあっさりと越えてきたんだ!水魔法も使わずに『獄炎』を消滅させるなんて…もうこれは弟子入りするしかないと思って弟子入りしたんだ!」


……嘘泣きまで使われてな。


「それで、ここは男子寮だぞ?なんでいるんだ?」


お前が言うな、リン。


「私はシガン様の運命の人ですから!いいんです!」


「…それに関して、話してもらえるか?純粋な興味なんだが…」


「いいでしょう!」


あ、やばい。


「シガン様は…」


「ごめんヨシノちゃん!『初級:微雷・改』!」


「ふぇあ⁉……すぅ…」


これで平和は守られた。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

こんにちは。椛みさかです。


補足です。リンネの身長は女子にしては高めです。シガンは平均ぐらいですが、それより数センチ低いぐらいです。


600PV感謝です。

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