閑話 秋穂



秋穂は昔見たアニメの影響で、語尾が「〜っす」になった。

その影響か、彼女に対する周りの認識は「変な子」だった。

だから姉妹以外に必要以上に関わることはなかった。


「えーと…僕は春葵。君の名前は?」


―――そこに春葵が現れた。


物心ついてすぐに孤児院に預けられたこともあり、最初は彼を警戒していた。

しかし、彼にすぐ絆された。

そして、小学三年生の頃だっただろうか。

春葵に対して「好き」という感情を自覚した。

その感情は秋穂の体を歳不相応に成長させた。

何度か教師や男子生徒に襲われそうになったこともあった。

しかし、毎回春葵は助けてくれた。

優しい言葉をかけてくれた。

そうして、秋穂の「好き」はどんどん膨らんでいって―――はじけた。

無理矢理に春葵を自分のモノにしようとしたのだ。

夏穂がいなかったら大変なことになっていただろう。

その一件で少し抑え気味になったが、その気持ちは今もくすぶり続けている。


そんな秋穂は帰宅後、何かをメモしていた。


「たまに考え込むことあるが、概ねいつもどおり…と。」


その内容とは、兄――春葵の様子である。

それを「日記帳」というタイトルのノートに書いていた。

タイトルを「日記帳」にした理由は、春葵がこれを見かけても、彼の性格的に中を覗かないだろうというのがあるからだ。

裏を返せば、春葵に見られたらまずいものということである。


「ふふふ…兄貴ぃ〜ずっと一緒にいるっすよ〜」


秋穂はそんなことを呟きながら、引き続き書き込んでいく。

その目は――――闇に染まっていた。









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