第30話 夏穂、テンパる

「夏姉〜?兄貴〜?もう時間っすよ〜」


「「わかった〜すぐ行く〜」」


あれから夏穂と駄弁っていたらどうやら時間が来たようだ。

そして僕は気づく。


「あっ!カバン部屋だ!ごめん夏穂、先行っといてくれる?」

「りょうか〜い!」


(こんなことなら着替えた後、荷物も一緒に持って降りれば良かった…!)


そんな後悔をしながら急いでカバンを取り、全力で階段を下りていたところ。

――――事件は起きた。


(あ…)


ドドドドドドドドドーン!


普通に階段を踏み外してこけてしまった。

しかも、こけた拍子に手摺りに頭をぶつけてしまい、かなり痛い。

結局僕は8段ほど落ち、膝の部分が青くなっていた。つまり、青あざが出来ていた。

しかし、僕は使、治した。

つくづくこういう時に魔法って便利だと心から思う。

すると玄関の前で待っているはずの三人が駆け込んできた。


「兄さん大丈夫⁉」

「あ、兄貴⁉怪我してないすか⁉」

「…大丈夫?お兄ちゃん」


三人ともとても焦った表情をしている。

しかし、その表情はすぐに驚きへと変わる。


「兄貴…なんかピンピンしてるけど痛くないんすか…?」

「……すごい音した。絶対に痛いはず。お兄ちゃん…我慢してる?」


「いや、回復魔法で治したから大丈夫。痛くないよ?」


その瞬間、空気は凍りついた。

―――――

(夏穂side)


「いや、回復魔法で治したから大丈夫だよ?」


えええええええええええええええええ!!!!!!!!!!!

何を言ってるのこの馬鹿……じゃない!そんなもの程遠い!愛してるよ兄さん!!

………少し落ち着こうか。

まず状況を整理しよう。

まず兄さんが私に先に行くように言ったので秋穂達と待っていたら、なにやら階段から落ちる音が。

心配で駆けつけたら「回復魔法で治した」やら「痛くない」やら……うん、どういうことぉぉぉぉ!!

少なくとも昨日の時点では

なのに、今日になってさも当然かのように回復魔法を使うって…

嘘にしても、あれだけ派手な音が出るような落ち方で傷一つ無く、涼しい顔を……あああああああああ兄さんの涼しい顔カッコよ過ぎるぅぅぅぅぅ!!!!!!

………………少し落ち着こうか(2度目)

要約すると、「昨日まで魔法なんて知らなかった兄さんが急に当たり前かのように魔法を使った」と……。

あーもーわかんないよ〜!どゆこと〜!


「……夏姉?さっきから百面相して…どうしたんすか?」

「…夏姉が壊れた…?……ぎゅ…」

「っ⁉……な、夏穂……どうかしたか?」


はっ!なんか兄さんのことそっちのけで、全員に心配されてる気がする!

なっ!いつの間にか冬穂が兄さんにひっついてる⁉羨ましい!!

もう…兄さんったら侍らしちゃって…

……これは某アニメの西◯寺世界にならないといけないかも…?

いや、あんなに兄さんはクズじゃない!

そもそも、私が兄さんのことを後ろから刺すなんてありえない!!

…まあ…兄さんにだったら妊娠させられてもいいかな……


「えへへぇ…」


「「っ⁉(かわいい!)」」


「……夏姉、戻ってきて?…時間、無い。」


「はっ!」


こうして遅刻ギリギリに学校に駆け込むことになり、ひとまず兄さんのことはうやむやになったのだった。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

作者は夏穂が好きなので、ついついたくさん書いてしまう…


こういう好きな人のことになるとポンコツになる子、可愛くないですか?


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