第29話 万象の消滅者
(秋穂side)
「秋穂……君は何を言ってるんだ?」
「……は?」
「固有魔法とか…
「兄…貴…?」
どういうこと?
兄貴の記憶は残したはず…
現に兄貴はあの交差点での出来事を覚えていた…
なのになぜ……異世界のことを覚えてないんすか…?
まさか…これが能力の限界…?
私の
…まさかこんな弱点があったとは……
こんなことって無いっすよ…
「…ここが引き時っすかね。続きは向こうでしたほうが良いかもっすね」
「……?秋穂、君は何を言って…」
「だめだよ、秋姉。」
「……」
「「え?」」
そこにいたのは―――夏姉と冬穂だった。
――――――
(春葵side)
「「え?」」
声のした方を見ると―――夏穂と冬穂がいた。
夏穂は下を向いていて、非常に暗い表情をしており、冬穂は秋穂の方をじっと見ていて―――睨んでいるようにも見えた。
二人共今まで見たことが無いような冷たい目をしている。
「…夏姉」
「うん……『
夏穂がそう言うと、冬穂は薄く、そして美しい笑みを浮かべた。
対象的に秋穂は苦虫を噛み潰したような顔をしていた。
「ちょっ!何をする気っすか!……まさか!」
「……大丈夫……痛くないから。…ごめんね、お兄ちゃん…『
「え?」
途端、視界が暗転した。
最後に、夏穂の悲しそうな顔が見えた気がした。
―――――
「ん……」
僕は目を覚ました。
知ってる天井だ。
毎朝起きる時に見るこの天井。
ってことは……
「え?朝⁉」
おかしいな。昨日寝た覚えがないぞ。
というよりかは、昨日夕食後に部屋に戻ったあたりからの記憶がきれいに消え去っている感覚だ。
すると、部屋がノックされて、冬穂の「入るね、お兄ちゃん」という声が聞こえてきた。
少し焦ったような声だったが、どうしたんだろう。
「お兄ちゃん、何か体調悪かったりしない?」
冬穂は開口一番そう言ってきた。
別にどこか痛かったり、咳が出るわけではないので、「大丈夫だよ」と言ったら、冬穂は心底安心したような顔をした。
「…人間に使うの始めてだったからお兄ちゃんがなんとも無くて良かった。…秋姉はどうでもいいけど。」
冬穂がなにか呟いたような気がしたが、気のせいだろう。
僕は着替えた後、まだ眠い目をこすりながら居間の食卓に向かった。
そこでは、もう冬穂たちは食べ始めていた。
「兄さん遅〜い」
「寝坊っすよ〜兄貴〜」
そう言って夏穂と秋穂が背中を叩いてくる。
どうやら二人はもう食べ終わったらしい。
僕は少し急ぎ目に食べ終わると、時計を見た。
時刻は7時半で、まだ少し余裕がある。
(よし…行くか)
僕は先ほど「荷物を取ってくる」と言って部屋に戻った夏穂の部屋に向かった。
部屋に着いたところで、部屋から出てくる夏穂に鉢合わせた。
「に、兄さん⁉どうしたの?」
「夏穂、何か僕にしてほしいことってない?」
「…それってなんでも?」
「うん。僕が実現可能ならなんでも」
「そっか〜」
夏穂はしばらく考えた後、冗談めかして言った。
「じゃあ…私とキスしてくれない?…あははっ!な〜んちゃ…」
「分かった」
うん。知ってた。
「え?……ん⁉」
僕は夏穂の唇を自分の唇でふさいだ。
舌を入れると、夏穂は不慣れながらも絡ませてきた。おそらくファーストキスだろう。
そしてその状態が十数秒続いたが、さすがに息が苦しくなったので離した。
僕と夏穂の間に銀色の橋が架かる。
夏穂は少しの間瞳の奥にハートマークを浮かべ、顔を真っ赤にしながら、名残惜しそうな顔をしていたが、ふと我に返ったらしい。
「に、兄さん?きゅ、急にどうしたの…?」
「どうしたって……夏穂が『キスしてくれ』って言うから…」
「そ、そんなの冗談に決まってるじゃん!…もう、兄さんったら!」
「ごめんごめん。…機嫌直してくれないか?」
「…じゃあ、私の好きな時にまたしてくれる?」
「しょうがないな。」
「えへへ……わ〜い!」
何この可愛い生き物。
よく考えたら割とやばめの提案を受け入れた気がするが…まあいいか。
まずはこれで夏穂を救えると思えば。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ラブコメのタグ入れようかな…枠余ってるし。
多分訳わからないと思うんで、今回登場した固有魔法紹介しときます。
説明:物事に制限をかけることができる。作中では冬穂の能力に制限をかけて、使えなくしている。一つしか制限をかけることはできない。例えば、冬穂の能力を制限している場合、他に何かを制限することはできない。
説明:名前の通り、何でも消滅させることができる。文字通り何でも。消滅させるものが大きいほど、魔力を消費する。
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