第44話 二回戦 ~帰還~

 撃ち抜かれた大腿部の痛みを耐え、立ち上がるゼパル。

 対峙するレオネスは再び魔力の剣・魔刃剣フォースエッジを展開する。


「させん!」


 ゼパルは踏み込み、レオネスに突きを繰り出す。

 威力と速度、貫通力が増大した剣の弾丸・剣弾貫転ソードペネトレイトの二発目を撃たせないために、ゼパルはレオネスを猛攻する。

 レオネスはゼパルの斧槍ハルバードかわすが、ゼパルの狙いはレオネスではなく、その周囲に展開された魔刃剣フォースエッジであった。

 ゼパルの槍撃により、魔刃剣フォースエッジは砕かれ、魔力となって霧散する。


「これで剣は飛ばせまい!」


 斧槍ハルバードを薙ぎ払い、今度はレオネスを狙い攻撃する。

 レオネスは斧槍ハルバードかわし、距離を取る。


魔刃剣フォースエッジを狙うとは……!」


 距離を取るレオネスを追撃し、剣魔法を使わせようとしないゼパル。


「だが、剣魔法にはこういうのもある!」


 レオネスは一振りの魔刃剣フォースエッジを生成し、自ら砕く。

 砕かれた魔刃剣フォースエッジの破片をゼパルに向かって投げるレオネス。


 ──剣魔法・剣弾裂砕ソードスプレッド

 魔刃剣フォースエッジを意図的に砕くことにより、鋭利な破片を散弾にする技である。

 威力は低いが広範囲に攻撃ができ、牽制にもなる。


「む! 小賢しい!」


 ゼパルは斧槍ハルバードを高速回転させ、剣弾裂砕ソードスプレッドを防御する。

 その隙にレオネスは再び魔刃剣フォースエッジを展開する。


「させんといったはずだ!」


 剣弾裂砕ソードスプレッドを防御し、すぐに攻撃に転じるゼパル。

 その狙いは新たに展開された魔刃剣フォースエッジである。

 ゼパルは踏み込み、再び魔刃剣フォースエッジを破壊するために斧槍ハルバードを振るう。


「それはやるよ!」


 レオネスはその場に展開した魔刃剣フォースエッジを残し、ゼパルから距離を取る。

 ゼパルは構わず、魔刃剣フォースエッジを攻撃する。

 次の瞬間、魔刃剣フォースエッジが爆発し、他の魔刃剣フォースエッジも連鎖して爆発する。


「剣魔法・剣弾爆撃ソードボンバー。大量の魔力を圧縮した、いわば剣の形をした爆弾だ。それを攻撃すれば、ドカン、というわけだ」


 爆発により派生した煙が晴れる。

 そこには白目をむいて立つゼパルが居た。

 ほどなくしてゼパルは地面に倒れる。


「いやー、剣魔法ってすごいですね! 勝者レオネス選手!」


 レオネスの連勝に観客は歓声を上げる。


「お前で最後だ。早く終わらせようぜ」


 魔獣兵団カース・オブ・レギオンの最後の一人を呼ぶレオネス。


「ゼパル、お前の戦いは無駄にはせんぞ!」


 リングに上がる最後の一人、魔術師アガレス。


「それでは最終戦! レオネス選手対アガレス選手! 始めー!」


 ゴングが鳴る。


「終わりだ! 天空降る霹靂フォールン・ライトニング!」


「こいつ、ゼパルが戦ってる間に詠唱してやがったのか!」


 天空より降り注いだ雷が直撃するレオネス。


「死んだな」


 雷に背を向け立ち去ろうとするアガレス。

 しかし。


「どこに行く、試合放棄か?」


 レオネスの声に驚いて振り返るアガレス。


「馬鹿な! 超級魔法である天空降る霹靂フォールン・ライトニングを受けて生きているはずがない!」


「俺が死人に見えるか?」


 そこには無傷のレオネスが居た。

 その手には魔剣レグルスが握られていた。


「あんたは魔獣兵団カース・オブ・レギオンで唯一、俺に剣を抜かせた。誇っていいぜ?」


「なぜ生きている! 何をした!」


 自身の使える最強の魔法を撃ち込んだにもかかわらず、無傷のレオネスに対し、アガレスは気が気でなかった。


「……幻影破斬ファントム・ソリッシュ、そんなものまで使えるのか」


 レオネスの試合を見ていたディアスが呟く。


「何ですかそれ?」


 隣に座るローゼリンデが問う。


「剣魔法の奥義の一つだ。剣魔法の魔力を切り裂く特性を極限まで高め、魔法のことごとくを魔力に分解して霧散させる技だ」


「なるほど、それで魔法を無効化したわけですね!」


 ディアスの解説に納得するローゼリンデ。


「馬鹿な、そんな魔法が!?」


 レオネスから幻影破斬ファントム・ソリッシュのことを聞いたアガレスは顔面蒼白になる。

 そんな技があれば、魔術師であるアガレスはレオネスに勝ち目はない。

 レオネスに魔術は効かないのだから。


「さあ、どうする? 続けるか?」


「ぐうぅ……! 降参だ」


 アガレスは降参する。

 勝ち目のない戦いを挑み、痛い目に遭いたくはなかった。


「アガレス選手の降参により、レオネス選手の勝利! 剣の魔術師ウィザーディング・ブレイドは準決勝進出です!」


 二対五という圧倒的不利を覆した剣の魔術師ウィザーディング・ブレイドの勝利に観客は拍手と声援を送る。


「ハァハァ……! レオネス、センジ、大丈夫!」


 聞き覚えのある声にレオネスが振り向くと、王都の外に転移されたミレス、ルナリス、フェレティスが疲れた様子で戻って来ていた。


「ああ、今終わったところだ。そっちは大丈夫だったか?」


「ええ、全力疾走で疲れたこと以外わね」


「そうだルナリス、センジに回復魔法を掛けてやってくれ。手酷くやられてな。エリクサーは飲ませたんだが……」


「わかったわ。とりあえず、あそこで横になっているセンジを控室に運びましょう」


 控室でルナリスの回復魔法を受けたセンジは目を覚ます。


「ここは、控室か。試合はどうなった?」


「俺たちの勝ちだ」


「準決勝進出ですよ!」


 目覚めたセンジにレオネスとフェレティスが報告する。


「ごめんね、敵の罠に掛かっちゃって」


「二人で五人の相手は大変だったでしょう?」


 謝るミレスとルナリス。


「謝ることはない、悪いのは君らではなく、罠を仕掛けた相手だ。まあ、確かに二対五は骨が折れたがな」


 苦笑いするセンジ。


「まだ身体がだるいな……」


「ああ、肩を貸そう。宿でゆっくり休むと良い」


 レオネスはセンジに肩を貸し、剣の魔術師ウィザーディング・ブレイドは宿へと帰る。

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