第36話 ディルコット ~剣聖の末裔~
「俺と戦え、レオネス・レオルクス!」
それがディアスの言葉だった。
「……なぜだ、俺にはあんたと戦う理由があるが、あんたにとって俺は会ったばかりの、ただの冒険者だろ? 何故あんたが俺に戦いを挑むんだ?」
ミレスを半端者と呼んだディアスにミレスを認めさせる、というディアスと戦う理由がレオネスにはあった。
しかし、ディアスにとってレオネスは、ほぼ初対面の冒険者である。
「お前が剣聖の弟子で、俺が剣聖の末裔だからだ」
「剣聖の末裔だと!? 師匠に子供は居なかったと聞いたが……」
「知らないのも無理はないだろう」
テューン・ディルコットが剣聖と呼ばれるより前、テューンには恋人がいた。
剣の道を志したテューンの邪魔にならぬようにと、その恋人はテューンの下から去った。
しかし、その恋人はテューンの子を身籠っていたのだった。
「俺の曽祖父ティアマス、テューンにとっては息子が生まれてからだ、テューンがエルスペリオル王国武闘武術大会で優勝し、剣聖と呼ばれるようになったのは」
「だから、ミドルネームにディルコットが……」
「そうだ、俺たちが剣聖の直系の子孫だと知る者はほとんどいない。だが、曽祖父は一族の者が剣聖の血を引いていることを忘れぬようにと、俺の家系はミドルネームにディルコットと名付けられる」
「そうだったのか、ミレスの名前にそんな秘密が……」
剣聖本人でさえ知らなかった、剣聖の子孫の存在を知ったレオネス。
「……どちらが剣聖の名を継ぐか、それを決めるというのか」
レオネスがディアスに問う。
「そうだ、血を継ぐ俺か、技を継ぐお前か。どちらが二代目剣聖に相応しいのか、確かめる必要があるだろう」
レオネスは考える。
剣聖の再来と呼ばれ、剣聖の血を引く、剣聖に最も近い男。
ディアスを倒せば、レオネスの目的を果たせるのではないか。
二代目剣聖として、師匠に恥じぬ剣士になれるのではないか。
レオネスの意志は決まった。
「より強い剣士が剣聖に相応しい。勝負を受けるぞ、ディアス!」
「それでこそだ、
レオネスの言葉を聞き、ディアスは満足して立ち上がり、病室を去ろうとする。
ディアスは出入り口で止まり、レオネスに一枚の封筒を投げ渡す。
「これは……!?」
「勝負は一か月後、そこで決着をつける」
そう言い残し、ディアスは病室を後にする。
「あ、兄さん」
「話は終わった、もういいぞ」
病室から出たディアスはミレスと目が合い、用が済んだことを告げる。
病室に戻ってくるミレスたち。
そこには神妙な顔をして一枚の紙を見るレオネスが居た。
「何を見てるの?」
「これだ」
「エルスペリオル王国・武闘武術大会、招待状?」
ミレスはレオネスに見せられた紙の文字を読む。
「エルスペリオル王国・武闘武術大会って、エルスペリオル王国最強の戦士を決める大会じゃない!?」
ミレスが読み上げた文章にルナリスが声を上げる。
「ゲストとして
エルスペリオル王国武闘武術大会に招待されていることを仲間に告げるレオネス。
「す、すごい大会に招待されちゃいましたね……」
「王国最強を決める戦いか……」
大会の規模にたじろぐフェレティスとセンジ。
「
「私は出るよ。だって、この機を逃すと一生出れないかもしれないでしょ? チャンスはものにしなきゃ!」
「さんせー!」
「私も出ます!」
「右に同じ、だ」
ミレスの言葉に同意する仲間たち。
「ありがとう。よし、大会は一か月後だ、それまでにもっと強くなっておかないとな!」
レオネスはベッドから立ち上がる。
ぐううぅぅぅぅ~……
レオネスの腹の虫が鳴る。
「……そういえば、三日間何も食べていないんだったな」
「もう、締まらないわね!」
◇◇◇
翌日、異常無しとして王国騎士団の病棟から退院したレオネス。
「エルスペリオル王国・武闘武術大会、クラン、冒険者ランク共にSランク相当がゴロゴロいる魔境だ。正直、Aランクの今の俺たちだと一回戦敗退は避けられない」
「この一カ月で、どれだけ力を付けられるか、ってことね」
レオネスの言葉に、考え込むミレス。
「王都滞在中の宿代は特別に騎士団が負担してくれるんだったな」
「太っ腹よね~」
センジとルナリスが宿泊代について話す。
「お金のことは気にせず、修行に打ち込めますね!」
フェレティスが付け加える。
「修行だったら、レオネス、私にアルハザード流の奥義を教えて」
「私はルナリスさんに銃技を師事したいです」
「ふむ、では、俺は修行を兼ねて、一度サンドゥの里に戻っても良いか? 装備を新調したいしな」
各々、修行の内容を提示する。
「俺とミレス、ルナリスとフェレティス、センジの三グループに分かれる事になるな。俺じゃフェレティスに銃技は教えられないし、それで行くか。」
食事を終え、三グループに別れ、それぞれの方向に歩き出す。
「一か月後に会おう!」
「ええ!」
「はい!」
「ああ!」
こうして、
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