第37話 再会 ~エルスペリオル王国・武闘武術大会~

 ──エルスペリオル王国・武闘武術大会、当日──


「出場選手の方は控室にてお待ちくださーい!」


 レオネス、ミレス、ルナリス、フェレティスの四人は剣の魔術師ウィザーディング・ブレイドの控室にいた。


「センジはまだか。まあ、今日は開会式だけだから、サボってもいいようなもんだが……」


 姿を現さないセンジにレオネスが呟く。


「まあ、時間はまだあるから。それより久しぶりだね、ルナリスとフェレティス!」


「そうね、同じ建物で寝泊まりしていたなんて信じられないほど、顔を合わさなかったわね」


 修業のために3グループに別れてから、サンドゥの里に帰ったセンジを除き、レオネス、ミレス、ルナリス、フェレティスの四人は王国騎士団の用意した宿に泊まっていた。

 しかし、修行の時間帯などの生活リズムの違いから、この一カ月間、まともに顔を合わしていなかった。


「どう? そっちは強くなった?」


 レオネスに問いかけるルナリス。


「ああ、俺はスタミナを中心に鍛えた。今までは奥義を使うたびにぶっ倒れてたからな」


「そういえば、エビルファングの時も巨大蛇竜ギガントヴルムの時も倒れてたわね」


「あれはダメージを受けた状態で奥義を使ったからなのでは……?」


 レオネスの答えに納得するルナリスと疑問に思うフェレティス。


「それに、とっておきの奥の手も用意してるしな。もう巨獣討伐ギガントハントの時みたいにを無駄にはしねぇよ」


「へー、楽しみね。で、ミレスはどう?」


 ミレスにも問うルナリス。


「私の方はアルハザード流の腕を上げたわ! 奥義は習得できなかったけど、奥義に匹敵する秘剣は習得したから!」


 控えめな胸を張り、得意げにするミレス。


「それで、そっちの方はどんな仕上がりだ?」


 今度はレオネスがルナリス達に聞く。


「そうね、幻術を習得したわ。やっぱり狐人族アレプといえば幻術よね」


「私は身のこなしを中心に鍛錬しました!」


 幻術を習得したルナリスと身のこなしを磨いたフェレティス。


「すまない、待たせたな」


 センジが控室に入ってくる。


「来たか! 今、修行の成果を話していたところだ」


「そうか、俺は俺で剣術を磨いた。それと……」


 センジは荷物から一振りの長剣を取り出す。


「これをミレスに」


「私に?」


 長剣を受け取るミレス。


「自分の修行と並行して作ったから時間が掛かってしまった。魔剣レグルスの能力を基に作った魔剣だ」


 ミレスは長剣を鞘から引き抜く。

 そこには透き通る翡翠の刀身があった。


「綺麗……」


「魔剣レグルスと同じく魔力に呼応して性能が向上する。そして、魔法使いのミレス用に属性付加エンチャント能力の強化機能を付けてある。これで、アルハザード流の属性派生技の威力が上がるはずだ」


「すごい! ありがとうセンジ!」


「俺の剣に属性付加エンチャント能力を付けてくれたら、自分だけで属性派生技が撃てるようになるんですが、それは?」


 新たな剣を受け取ったミレスを横目に、自身の剣の改良案を言うレオネス。


「その手があったか!」


「それは思いつかなかったのかよ!」


 センジの言葉にツッコミを入れるレオネス。


「出場者は会場に集合してください」


 アナウンスが入り、話を切り上げ、会場へ向かうレオネス達。



◇◇◇



 エルスペリオル国王や王国騎士団長の演説が行われ、大会のトーナメント表が発表される。


「これにて開会式は終了です! 選手の皆さん、明日から頑張って下さいねー!」


 開会式が終わり、控室に荷物を取りに帰るレオネス達の前に立ちはだかる集団が現れる。


「お前たちが剣の魔術師ウィザーディング・ブレイドか」


「あんたたちは?」


 ガラの悪い男たちに声を掛けられ、何者か問うレオネス。


「お前たちの一回戦の相手、『ベルセリオン』だ」


 リーダーとおぼしき長髪の男が答える。


「しかし、ラッキーだな。弱そうなやつしかいねぇ」


「おまけにメンバーの半分以上は女だ」


 他の男たちも長髪の男に続く。

 ベルセリオンの一人があることを思いつく。


「そうだ、俺たちが勝てば、お前らのメンバーの女三人を俺たちに一晩貸せよ」


「へっへっへ! それはいい考えだ!」


 ゲラゲラと笑いを浮かべ、ルナリスたちを舐め回すように見るベルセリオンのメンバー。


「上等よ!」


 ベルセリオンに食って掛かるルナリス。


「おい、ルナリス!」


 ルナリスを止めようとするレオネス。


「ハッハッハ! 威勢のいい女は嫌いじゃないぜ? お前はたっぷり調教してやる」


「あら、もう勝ったつもり? まあいいけど。でも、私たちが勝ったら、アンタ達は変身魔法で一生美少女になってもらうわ!」


「は?」


 ルナリスの発言にベルセリオンのメンバーだけでなく、レオネスとセンジも唖然とする。


「……意味が分からねぇが、いいだろう。ま、俺たちが負けたらの話だがな!」


 ハハハと笑いながらベルセリオンの五人は去っていく。


「おいルナリス、面倒なことになっちまったぞ」


「大丈夫、勝てばいいのよ!」


 レオネスの心配をよそに、余裕の態度のルナリス。


「それにあいつらを美少女にして、狙われる側の気持ちを味わわせてやるわ!」


 フフフと悪い笑みを浮かべるルナリス。


「そもそも、レオネスは私たちがあんな奴らに負けると思ってるの?」


「いや、思っていないけど」


 ルナリスに問われ、答えるレオネス。


「じゃあ、いいじゃん」


「お前らはそれでいいのか?」


 ミレスとフェレティスに聞くレオネス。


「私はいいわよ? 負けないし」


「私も負けないので大丈夫ですよ!」


 ミレスもフェレティスも負ける気は毛頭なく、自分たちの貞操が掛かっているという心配など一切していなかった。


「まあ、お前らがそういうなら、もういいよ」


 引き下がるレオネス。


「心配してくれてありがとう」


 ミレスがレオネスにひっそりとつぶやく。


「お、おう……」


 ミレスの感謝に少し照れくさくなるレオネスだった。

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