第35話 王国騎士団精鋭部隊 ~ロイヤルナイツ~

「見せてやる、剣魔法、その奥義をな!」


 レオネスは血塗れの左手に魔力を剣状に収束し、魔刃剣フォースエッジを形成する。

 魔剣レグルスと魔刃剣フォースエッジを天に掲げるレオネス。

 交差した魔剣レグルスと魔刃剣フォースエッジは徐々に混ざり合い、一つの剣となる。

 魔刃剣フォースエッジをまとった魔剣レグルスを構えるレオネス。

 魔力の剣と一体化した魔剣レグルスは強烈な衝撃波を放つ。

 レオネスは魔剣を振り抜き、極光の斬撃を撃ち出す。


「行くぞ、剣魔法奥義! 魔刃装纏斬まじんそうてんざん!」


 剣に魔力をまとわせ、爆発的に性能を向上させ放つ究極の斬撃、それが剣魔法奥義、魔刃装纏斬まじんそうてんざんである。


 レオネスにより放たれた極光の斬撃は巨大蛇竜ギガントヴルムを貫き、その後ろにあるヌンガ渓谷の一部すら削り取る。


「これが、剣魔法の奥義……」


 誰もが極光の剣閃に見とれ、ミレスが呟く。


「これで、どうだ!」


 胸部を極光の剣閃に貫かれた巨大蛇竜ギガントヴルムは立ったまま絶命する。


「! レオネス逃げて!」


 ミレスの言葉にレオネスも気づく。

 絶命した巨大蛇竜ギガントヴルムがレオネスの方に向かって倒れようとしていることに。


「道連れにする気か……!」


 逃げようするレオネスだが、足に力が入らず、思うように動けない。


(しまった、魔力を使い過ぎたか!)


「レオネスーっ!」


 巨大蛇竜ギガントヴルムは地響きを立て、レオネスの上に倒れる。


「そんな、レオネス……」


「うそ、よね……」


「レオネスさん……」


 ミレスたちはその場で泣き崩れる。


「勝手に殺すな」


 下敷きになったはずのレオネスの言葉に一同は振り向く。

 そこには一人の男に担がれるレオネスが居た。


「いや~、ギリギリのところで、このお兄さんに助けられたよ」


「あ、あなたは……!」


「兄さん……!」


 驚く王国騎士団とミレス。


「俺たちが来る前に片を付けるとは、魔剣術師ソーディア、噂に違わぬ実力といったところか」


 レオネスを担ぐ男が呟く。


「ディアスさ~ん、相変わらず早いですね~」


「ローゼリンデ様!」


「……あの、この人たち、誰?」


 横にいた王国騎士を小突き、聞くルナリス。


「ああ、この人たちが増援の王国騎士団精鋭部隊ロイヤルナイツのディアス班だよ」


「えっ! この人が剣聖の再来!? 名前は知ってるけど、初めて見た」


 ルナリスと王国騎士の会話を聞いたレオネスは自分を担いでいる男をじっと見る。


「あんたが剣聖の再来……」


「そうだ」


 ディアスは静かに答える。


「俺もお前とは話したい事がある。しかし、治療と巨獣の後始末が先だ」


「俺もあんたと話したいが、たしかに、そっちの方が先だな」


 レオネスは担架に乗せられ、救護室へと運ばれていく。

 ミレスは兄に会釈し、レオネスについて行く。


「頑なに独りソロを貫いていたミレスティアあいつがクランに入るとはな。レオネス・レオルクス、大した奴だ」


 ディアスはミレスを見送り、王国騎士団に指示を出す。



◇◇◇



「腹が減った……」


 ベッドで起き上がったレオネスの第一声がそれであった。


「あっ、レオネスが起きた!」


 レオネスに抱き着くミレス。


「うお、大げさだなミレス、ちょっと寝てただけだろ?」


「何言ってるのよ! あの後、救護室に運ばれてから三日も眠ったままだったんだから!」


「……マジで?」


 大蛇竜リンドヴリムの群れとの連戦による疲労に加え、左腕への深刻なダメージ、そこに剣魔法の奥義を使い、レオネスは巨獣討伐ギガントハントの日から三日間、眠り続けていたのだった。


「どおりで腹が減るわけだ……」


「レオネスが起きたって?」


「大丈夫ですか、レオネスさん?」


「フッ、その様子だと大丈夫そうだな」


 ルナリス、フェレティス、センジと仲間たちが病室へ入ってくる。


「ああ、左腕も動く。大丈夫そうだ」


 レオネスは左手を握ったり開いたりして具合を確かめる。


「ミレスに感謝しなよ、ずっと側にいたんだから」


「そうなのか?」


「まあ、うん……」


 ミレスは赤くなってうつむき、帽子を目深まぶかにかぶる。


「私たちも入れ替わりで居たんですけどね」


 フェレティスが付け加える。


「……心配かけたみたいだな」


「レオネスが無事だったからいいよ」


 ミレスは微笑んで答える。


「ところで、ここはどこなんだ? ゴジョーの都でも無さそうだが……」


「王都ディリガルだよ」


「王都!? なんで、そんな……」


 現在、王都の王国騎士団本部の病棟にいると教えられるレオネス。

 レオネスの左腕のケガは深刻であり、後遺症が残らないように、王都の騎士団本部で治療されていたのだった。


「いや、確かに、ズタズタの腕で奥義を使ったけども、王都かぁ……」


 窓の外の光景を見るレオネス。

 すると、ドアがノックされる。


「どーぞ」


 レオネスが返事をすると一人の男が入ってくる。


「ディアス・フランシア……!」


 レオネスの病室を訪れたのは、レオネスを助けた王国騎士団精鋭部隊ロイヤルナイツの一人、そして、ミレスティアの兄であるディアスだった。


「具合は良さそうだな」


「おかげさまでこの通り」


 左腕をディアスに見せるレオネス。


「そうでなくてはな。完全に治癒していなければ、王都に連れてきた意味が無い」


「どういうことだ……?」


 ディアスの言葉に疑問を感じるレオネス。


「悪いが、二人にしてくれないか?」


「兄さん……」


「話をするだけだ」


「……みんな、出ましょう」


 ミレスは他の仲間を連れ、病室から退室する。


「ミレスから聞いたが、レオネス、お前は剣聖ディルコットの弟子だそうだな」


「ああ、そうだ」


「俺ですら習得できなかった剣魔法の奥義、あれを眼にしなければ、剣聖の弟子など到底信じられない話だったがな……」


 ディアスはレオネスを正面から見据え、言葉を口にする。


「俺と戦え、レオネス・レオルクス!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る