第26話 ミレスティア ~秘密のフルネーム~
武器屋へと戻って来たレオネス達。
「おう、魔法銃の修理は終わったぞ」
魔法銃を受け取るルナリス。
「わあ、新品みたい」
「ああ、故障していた内部パーツの他に、痛んでいた外装パーツも交換したからな」
戻って来た魔法銃に満足するルナリス。
「それで、俺の剣は誰の作品だったんですか?」
「ああ、兄さんの剣か。驚いたよ、伝説の鍛冶師と言われたゴドー・マシャムニの作品だ。銘は『ネメアーレオ』だよ」
「ゴドー・マシャムニ、師匠の友人の作品か。だとするとその人って結構な年齢じゃないのか……」
「まあ、マシャムニの工房は町の北にあるから行ってみると良い。もし、その剣が直せなかったら、ぜひウチで剣を買ってくれよ!」
「ははは……、考えておきますよ」
武器屋の宣伝に苦笑いを浮かべるレオネス。
「今日は宿を取って、マシャムニ工房には明日行くか」
「日も暮れて来たし、そうしましょうか」
武器屋を後にしたレオネス達は、宿を取り、マシャムニ工房へは明日に赴くことにする。
宿屋を訪れたレオネス達は部屋を取る。
「宿を一晩、二部屋で」
「かしこまりました、一人一泊300
受付で手続きを済ませ、レオネス達は部屋へと向かう。
レオネスと女子チームで部屋を分け、現在はレオネスの部屋に集まり、夕食までの時間、談笑していた。
「ん? 何か落ちたわよ」
ルナリスは床からカードを拾い上げる。
「ギルドカードね。えーと、ミレスティア・ディルコット・フランシア。ミレスのね」
「あー、ありがとう」
ミレスはルナリスからギルドカードを受け取る。
「ミレスさんのファミリーネームって、フランシアっていうんですね。初めて知りました」
初めてミレスのフルネームを聞いたフェレティスはミレスに言う。
「俺も初めて聞いたかも」
「私も」
レオネスとルナリスもフェレティスに続く。
「まあ、その、言わなくてもいいかと思って……」
ミレスは歯切れの悪い答えを返す。
「しかし、ディルコットって、師匠の……」
「あっ! 思い出した、フランシア!」
レオネスの呟きはルナリスの言葉によりかき消された。
「フランシアって、
「……まあ、その人は、兄だけど」
ミレスは言い辛そうに答える。
「な、お前の兄貴って、
レオネスはミレスの兄の正体に驚きを隠せなかった。
レオネスはミレスの兄は自分と同じ剣魔法が使える冒険者程度にしか考えていなかった。
まさか、その相手が王国最強の戦闘部隊である
「あの~、そのディアスって人、誰ですか?」
ディアス・フランシアを知らないフェレティスは話について行けてなかった。
「ディアス・フランシア。若干、二十歳にして王国最強の戦闘部隊、
「剣魔法の使い手で、剣聖の再来の異名で呼ばれているわ。おまけに騎士爵で貴族だし」
レオネスの解説にルナリスが補足する。
「へー、ミレスさんのお兄さん、すごい人なんですね!」
フェレティスの言葉にミレスは何とも言えない表情を浮かべる。
「私が、ディアス・フランシアの妹だって内緒にしていてほしいんだけど」
「まあ、有名人だし、気苦労も絶えんだろう」
ミレスの頼みを肯定するレオネス。
しかし、ミレスの真意はそうではなかった。
「兄さんは凄い人だよ。でも、そんな兄さんと私はずっと比べられてきた。それが嫌でファミリーネームを黙ってたの。みんな私に兄さんのような活躍を求めるから……」
「そうだったの、ごめんなさいね」
「私こそ、なんだか騙すみたいになってごめんね」
暗い表情を浮かべるミレス。
「ま、俺たちにとっては、ミレスが剣聖の再来の妹だろうが、そうで無かろうが、ミレスはミレスだ。」
「そうですよ。それに、ミレスさんも十分凄い人ですよ」
「そうね、ミレスが剣聖の再来の妹だから仲間になったわけじゃないし」
仲間の言葉に顔を上げるミレス。
「お前は
「そっか、みんなが仲間で良かったよ。ありがとう」
わずかに頬を染め、ミレスは仲間に感謝する。
「そろそろ夕食の時間だろう、食堂へ行こうぜ」
レオネス達は食堂へと向かい、夕食を取る。
夕食を済ませ、部屋へと戻るレオネス達。
「明日は朝一でマシャムニ工房にいくから、寝坊するなよ」
「レオネスこそ、ちゃんと起きなよ」
レオネスとミレスは言葉を交わし、それぞれの部屋へと帰っていく。
(そういえば、ミレスのミドルネームのこと、聞きそびれたな。まあ、今度で良いか)
レオネスは風呂に入りながら、そんなことを考えていた。
翌朝、ルナリス以外は食堂へ集合していた。
「ルナリスはどうした?」
「あれ? いないわね。一緒に起きたのに」
「もしかして、二度寝したんじゃないですか?」
「しょうがないな、寝起きドッキリするか」
「おっ、面白そう!」
レオネスは寝ているルナリスの枕元へ行き、耳元に近づく。
「お邪魔します」
レオネスはピコピコと動く狐耳に指を突っ込んだ。
「そうきたか」
ミレスは上下に揺れるルナリスの大きな尻尾をモフり始める。
「そんなことしたら流石に怒られますよ……」
といいつつ、二人のイタズラを見ているフェレティス。
「~~~~~!!!!」
尻尾を揉まれ、狐耳に指を入れられ、飛び起きるルナリス。
「よう、朝だぞ」
「うっさい、ばーか!」
朝食の間、フェレティスの機嫌はずっと悪かった。
「機嫌直せよ」
「そうだよ」
「知らない!」
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