第42話 二回戦 ~策略~
「では二戦目、センジ選手対エリゴス選手! 両者位置について!」
エリゴスはリングに上がり、センジは位置に着く。
「それではぁ! 始め!」
戦いのゴングが鳴る。
「そろそろ効いて来たんじゃないか?」
意地の悪い笑みを浮かべるエリゴスの言葉にセンジの違和感は確信に変わる。
「体が重い、さっきの奴の矢に何か仕掛けたな」
「ああ、レラジエの矢は受けるほど動きが鈍る。そして!」
加速し、一気に距離を詰めるエリゴス。
エリゴスの剣戟を大剣で受けるセンジ。
「俺の魔剣スカーレットは衝撃が斬撃となる!」
「ぐっ!」
「センジっ!」
エリゴスの剣を大剣で食い止めたはずのセンジであるが、その身体には剣で斬られた傷が出来る。
「剣を防いだところで、ダメージは防げん!」
エリゴスは魔剣スカーレットでセンジを追撃する。
剣がぶつかり、衝撃が発生すれば斬撃が飛んでくるため、センジは武器を使わず、回避に専念する。
しかし、エリゴスの呪いにより、身体が重くなり、動きが鈍っているため、思うように回避できず、傷は増える一方である。
(こいつらを相手に勝ち抜き戦は相性が悪い。だが、レオネスに繋ぐために俺が一人でも多く数を減らさねば!)
センジは大剣を構え、エリゴスに突きを繰り出す。
「おっと、攻撃してくるとはな、血を流しすぎて判断力を失ったか!」
エリゴスはセンジの突きを防ぎ、センジの身体には新たな刀傷が刻まれる。
(普通に戦っても勝ち目はない、自滅覚悟で行くしかない!)
センジは大剣に土属性を付加する。
土属性をまとった大剣は重量を増加する。
センジは大剣に土属性を付加し、必殺の一撃で叩き、押し潰す作戦に出た。
「うおおぉぉ!!」
センジは傷だらけで、重い身体を動かし、エリゴスに横薙ぎを喰らわせる。
センジの剣を受け止めようとしたエリゴスは、強烈な威力の大剣を受け止めきれずに吹き飛ぶ。
「ぐあっ! こいつ、やりやがる!」
エリゴスの腕はセンジの大剣を受け止めた時の衝撃で痺れ、また、痛みを感じていた。
(骨にヒビでも入ったか?)
センジを見るエリゴス。
あれほど強烈な衝撃が発生したのだ、センジはただでは済まない。
「はぁ……、はぁ……!」
センジの身体には巨大な切り傷が刻まれており、かなりの血を流していた。
「まだだ……!」
倒れてもおかしくないダメージだが、センジは歯を食いしばり、気合で立っていた。
「へっ、死にかけが、次で終わらせてやる!」
剣を強く握りセンジへと向かうエリゴス。
「終わらせるのはこっちだ!」
センジは剣に炎をまとわせる。
センジは大剣を逆手に持ち、炎をまとった大剣を大きく斬り上げる。
──フレイムドライブ。
センジが修行して身に付けた炎の斬撃を飛ばす我流の魔法剣である。
「なにぃ!?」
予想しなかった炎の斬撃が直撃し、エリゴスは場外へ吹き飛ぶ。
場外に吹き飛んだエリゴスを見に行くマオルゥ。
エリゴスは炎の熱さと斬撃の痛みで白目をむいて失神していた。
「これはダメですね、ということで、勝者センジ選手!」
満身創痍でありながら勝利を掴み取ったセンジに喝采と拍手が送られる。
「炎の斬撃とは、俺の株を奪うような技を……」
次の対戦相手、アイムはリングに登りながら呟く。
「それでは三戦目、センジ選手対アイム選手! 両者位置について!」
二人は位置に着くが、センジは呪いと傷で立っているのもやっとの状態であった。
「始め!」
試合開始のゴングが鳴る。
「このまま放っておいても死にそうだけど、悪いね。仲間が帰ってくる前に倒すぜ」
アイムは両手に炎を灯し、センジに炎の弾を飛ばす。
「ぐおぉ!」
センジは何とか大剣を盾に炎の弾を防ぐが、その熱までは防げず、大剣越しに火傷を負う。
「まだ立っているなんて、動けるなんて、大した気合いだ。だが、終わらせる!」
再び両手に炎を灯すアイム。
今度は両手の炎で直接センジを殴るために、センジとの距離を詰める。
センジにアイムを迎え撃つ体力は残っておらず、アイムの攻撃が直撃する。
「
アイムが繰り出した炎の
気力も体力も尽きたセンジは、もはや起き上がることは出来ず、敗北を喫する。
「センジ選手ダウーン! 勝者アイム選手!」
「しっかりしろセンジ!」
レオネスは吹き飛ばされたセンジに駆け寄り、上体を抱え起こす。
「すまない、俺はここまでだ。後は頼んだぞ“
「ん? ああ、任せろ!」
センジはレオネスを名前で呼ばず、異名である
さらにセンジは相手チームに聞こえるように、
「とりあえず、これ飲んで寝てろ」
レオネスはセンジの口にエリクサーを流し込む。
エリクサーは死んでいなければ、だいたいの傷は治るという凄い霊薬である。
エリクサーの効果で傷が回復し始めるが、出血量が多く、血が少なくなっているため、レオネスはセンジを入退場門の側に避難させ、寝かせる。
「……なるほどセンジ、そういうことか!」
センジの応急処置を済ませ、リングの方へと戻ってきたレオネスは、動揺する
“
レオネスの異名であり、『剣魔法』を使う『Sランク冒険者』の代名詞でもある。
レオネスの名を知らずとも、
ゆえにセンジはそのネームバリューを利用し、
「あいつが
「奴の剣魔法は魔力を斬り裂くと聞く……」
「よりにもよって一番厄介な奴が残ったわけか……!」
リングに上がるレオネス。
「一人残らずぶっ飛ばす!」
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