第43話 二回戦 ~憤怒の剣~

「それではレオネス選手対アイム選手! 始め!」


 ゴングが鳴る。

 相手の出方を窺うレオネス。

 センジの魔獣兵団カース・オブ・レギオンとの戦いを見て、状態異常攻撃を警戒していた。


「ふ、魔剣術師ソーディアというから警戒したが、噂ほどではないということか!」


 アイムが動く。

 レオネスが攻撃してこないことを好機と捉え、先制攻撃を仕掛ける。


紅蓮裂照ぐれんれっしょう!」


 アイムは炎をまとった拳を地面に叩きつけ、火柱を発生させる。

 火柱はレオネスに向かい直進する。

 レオネスは火柱の攻撃をかわし、火柱から距離を取る。


「どうした、自慢の剣魔法で炎を斬らないのか?」


 攻撃してこないレオネスを挑発するアイム。


「そうだな、反撃と行くか」


 レオネスは考えていた。

 攻撃を喰らう、または、防ぐだけでも何かしらの状態異常が発生するかもしれない。

 勝ち抜き戦で状態異常を受けたままで戦うのは得策ではない。

 ならばどうするか。

 相手の攻撃を受けず、また、相手に触れず触れられず倒す、それがレオネスの出した答えだった。


 自身の周囲に無数の魔力の剣・魔刃剣フォースエッジを展開するレオネス。


「あれが剣魔法!?」


 攻撃態勢に移ったレオネスを警戒するアイム。


「望み通りその炎、斬り裂いてやるよ」


 レオネスは魔刃剣フォースエッジを展開したままアイムとの距離を詰める。

 展開した魔刃剣フォースエッジはブラフであり、アルハザード流を撃ち込むために近づく。


「ふん、接近戦なら勝てると思ったか!」


 アイムは両手の炎を放射し、炎の壁を作り、レオネスの接近を防ぐ。


「そういうの待ってたぜ!」


 レオネスは炎の壁に向かって、剣から衝撃波を飛ばす裂破衝れっぱしょうを撃ち込む。

 裂破衝れっぱしょうは炎を巻き込み、炎をまとってアイムに襲い掛かる。


「何だと!?」


 アイムに炎をまとう衝撃波が直撃する。


「自分の炎の味はどうだ?」


「ぐ、貴様ぁ!」


 膝を突くアイム。

 しかし、すぐにアイムは立ち上がる。


「この俺に炎で攻撃するとはな。だが、これならどうだ!」


 アイムは咆哮し、気を高める。

 高めた気に呼応して両手の炎が大きくなり、やがて、アイムの全身を包む。

 炎の衣をまとうアイム。


「さあ、戦いはここからだ!」


 炎をまとい、レオネスに向かうアイム。

 対するレオネスは再び裂破衝れっぱしょうを放ち、衝撃波を繰り出す。


「む……!」


 しかし、レオネスの裂破衝れっぱしょうは炎の衣によって防がれてしまう。


「そんな攻撃では俺の炎はかき消せんぞぉ!」


 レオネスとの距離を詰め、炎の剣を形成し、斬りかかるアイム。

 レオネスは炎の剣をかわし、距離を取る。


「なら、こうだ!」


 レオネスは周囲に展開していた魔刃剣フォースエッジの一本をアイムに向けて射出する。

 剣の弾丸・剣弾ソードブリットとして射出された魔刃剣フォースエッジはアイムの炎を貫くことは出来なかった。


「ははは、剣魔法と言えどこの程度! 魔剣術師ソーディア、恐るるに足らず!」


剣弾ソードブリット一発でそれだけ削れるなら、問題ないな」


「はい?」


 レオネスは現在展開している魔刃剣フォースエッジの数を更に増やす。

 実に20本を超える魔力の剣がレオネスの周囲に展開された。


「行け、剣弾連火ソードバルカン!」


 レオネスの号令と共に大量の剣弾ソードブリットが一斉掃射される。


「うおおおおお!!!!」


 アイムは気を高め、全身の炎を燃やし、剣弾連火ソードバルカンに耐える。


「がら空きだな」


 一か所に集中して放たれる剣弾ソードブリットがアイムの炎を破るのにさほど時間はかからなかった。

 レオネスは炎の剥がれた個所に無数の衝撃波を撃ちこむ。


裂破連刃衝れっぱれんじんしょう、一撃で倒れないなら、連撃を撃ち込むまでのこと」


 剣の弾丸・剣弾ソードブリットと無数の衝撃波を浴びせる裂破連刃衝れっぱれんじんしょうの集中砲火を受け、アイムの炎は消え、地に倒れ伏す。


「おーっと! アイム選手ダウン! これは気絶してますね。勝者レオネス選手!」


 レオネスの勝利に歓声が上がる。


「さあ、次だ。時間が無いんだろ? こっちも早く終わらせて仲間を迎えに行きたいんだ」


 レオネスは魔獣兵団カース・オブ・レギオンの次の選手を指で招く。


「次は俺が行こう」


 リングに上がるのは魔獣兵団カース・オブ・レギオンの戦士ゼパル。

 武器は巨大な斧槍ハルバードである。


「それではレオネス選手対ゼパル選手! 試合開始!」


 ゴングが鳴り、試合が始まる。

 レオネスは裂破衝れっぱしょうで衝撃波を撃って攻撃するが、ゼパルは斧槍ハルバードを機敏に動かし、裂破衝れっぱしょうを防ぐ。


「……同じ手は使えそうにないな」


 レオネスは再び自身の周囲に数本の魔刃剣フォースエッジを形成する。


「数頼みか? その手は食わんぞ!」


 ゼパルは斧槍ハルバードを回転させ、構える。


「わかってるさ」


 レオネスの周囲に展開された複数の魔刃剣フォースエッジは一本の魔刃剣フォースエッジに収束されていく。


「喰らえ、剣弾貫転ソードペネトレイト!」


 複数の魔刃剣フォースエッジが収束した剣の弾丸・剣弾ソードブリットである剣弾貫転ソードペネトレイトは、先の戦闘で放たれた剣弾連火ソードバルカンとは比にならない超スピードでゼパルを強襲する。


「ぬぉ!」


 回転が加わり、貫通力が増大した剣弾貫転ソードペネトレイトは屈強なゼパルの大腿部を貫通する。

 大腿部を撃ち抜かれ、膝を突くゼパル。


「続けるか?」


 ゼパルに魔刃剣フォースエッジを向けるレオネス。


「当り前だ!」


 ゼパルは痛みをこらえて立ち上がり、斧槍ハルバードを構え直す。


「そうか。なら、もう少し痛い目に遭ってもらう」


 レオネスとゼパルの戦いは続く。

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