第57話 決勝戦 ~獅子王レオネスVS狼牙王ディアス~ 上

魔剣術師ソーディアレオネス・レオルクス対剣聖の再来ディアス・フランシア! それでは試合開始ですッ!」


 戦いを告げる鐘が鳴り響く。

 互いに鞘から剣を抜く。


 魔剣獅子王レグルスレクス

 真紅の刃を持つセンジが鍛えたレオネスの魔剣である。


 妖刀狼牙王ルプスレクス

 ディアスの持つ青藍の刃を持つ東洋の武器、カタナの中でも魔剣に近い性質を持つ武器である。


 二人は剣を構え、剣魔法を展開する。

 無数の魔力の戦輪チャクラムを展開する円輪連刃アサルトチャクラムを撃ち出すレオネス。

 対するディアスは剣の弾丸を連射する剣弾連火ソードバルカンを繰り出す。

 戦輪チャクラムと剣の弾丸がぶつかる。

 互いに相殺し合うと思われた剣魔法同士の衝突だが、レオネスの円輪連刃アサルトチャクラムはディアスの剣弾連火ソードバルカンを斬り裂き、ディアスへと飛来する。


「何だと……!?」


 ディアスは魔力剣を展開した魔力障壁・魔刃防盾ソードバリアを展開し、飛来する円輪連刃アサルトチャクラムを防御する。


「ふむ……」


 レオネスはディアスの魔刃防盾ソードバリアに剣の弾丸・剣弾ソードブリットを撃ち込む。

 剣弾ソードブリット魔刃防盾ソードバリアを貫通することはなかった。

 しかし、レオネスの剣弾ソードブリットはディアスの魔刃防盾ソードバリアに深々と突き刺さっていた。

 剣魔法を撃ち合った二人は理解した。


「どうやら、お前の剣魔法の方が精度が高いらしいな。流石は剣聖直伝といったところか」


「そういうアンタも独学でここまでの剣魔法を操るとは、すごい奴だよ」


 互いに称賛するレオネスとディアス。

 剣聖である師匠から直接、剣魔法を教わったレオネスの方が剣魔法の精度が高く、ディアスの剣魔法より強力であった。


「精度はお前の方が上だが、それが勝負の全てではない!」


 ディアスは剣の弾丸を雨の如く降らせる剣弾襲雨ソードストームを繰り出す。

 今度はレオネスが魔刃防盾ソードバリアを展開し、上空から飛来する剣弾襲雨ソードストームを防御する。

 レオネスが上空からの剣弾襲雨ソードストームを防御している間に距離を詰めるディアス。


「はあっ!」


「くっ!」


 斬り込むディアスの剣戟を己の魔剣で弾くレオネス。

 戦いは剣魔法による遠距離戦から、剣術による近距離戦へと移行する。


「トビカゼ流・瞬牙連刃しゅんがれんじん!」


 ──トビカゼ流。

 東洋の剣術流派を源流とする流派であり、ディアスの使う『カタナ』と相性が良い。


 ディアスは高速で連続斬りを放つ瞬牙連刃しゅんがれんじんを繰り出す。


「ならば! 裂空凍破れっくうとうは!」


 レオネスは闘気をまとった連続斬り、裂空斬れっくうざんの属性派生技である裂空凍破れっくうとうはで応戦する。

 氷の斬撃と高速の剣戟がぶつかり合い、必殺を狙う斬撃は、絶命を狙う剣戟によって弾かれる。

 互いに高速連撃を繰り出し、斬撃が斬撃を防ぎ、互いの攻撃は拮抗する。

 拮抗状態を打開するべく、ディアスは後方に下がり、剣を鞘に納める。

 居合の構えである。

 ディアスは加速し、レオネスに居合斬りを浴びせる。


「トビカゼ流・双牙裂刃そうがれつじん!」


 始めてみる居合にレオネスの反応は遅れ、高速の十字斬りを受ける事となる。


「そんな技も、あるんだな……!」


 胴を十字に斬られるレオネス。


「手ごたえが浅い……。咄嗟に後方に飛んでダメージを軽減したか」


 レオネスの着ているベストは斬られたが、その刃は身体まで届いてはいなかった。

 今度はレオネスが踏み込み、攻勢に転じる。


「アルハザード流・氷衝炎撃破ひょうしょうえんげきは!」


 十字斬りと衝撃波の追撃を放つ衝破裂風しょうはれっぷうの属性派生技を放つレオネス。

 氷の十字斬りと爆炎の闘気がディアスに襲い掛かる。


「魔法剣・炎翔牙!」


 ディアスは魔法と剣技を組み合わせた高等技術である魔法剣で氷衝炎撃破ひょうしょうえんげきはを迎え撃つ。

 炎をまとう二連撃の斬り上げ・炎翔牙が氷の十字斬りを防ぐ。


「まだだ! 水輪牙!」


 さらに、水の斬撃による回転斬り、水輪牙を繰り出し、爆炎の闘気を相殺する。


「魔法剣か、センジにレグルスレクスに強化してもらってて正解だったな」


 剣単体でアルハザード流の属性派生技の使える魔剣レグルスレクスゆえに、属性と剣技の合わせ技である魔法剣に対抗が可能だった。

もし、魔剣レグルスのままディアスに挑んでいれば、危なかったと思うレオネスだった。


「俺のトビカゼ流と魔法剣、お前のアルハザード流と属性派生、お互い似た技を使うようだな」


「らしいな」


「ならば、ますます負けるわけにはいかんな!」


 ディアスは刀を下段に構える。


「いくぞ!」


 ディアスはレオネスに突進し、突きを繰り出す。


「トビカゼ流・襲牙刺刃しゅうがしじん!」


 ディアスが繰り出す強烈な突きを弾くレオネス。

 だが、ディアスは弾かれた勢いを利用し、次の攻撃を繰り出す。


飛牙翔刃ひがしょうじん!」


 弾かれた勢いを利用し、回転、遠心力を上乗せして斬り上げを放つ。

 レオネスは剣を構え、飛牙翔刃ひがしょうじんを防御する。

 ディアスは回転斬り上げの勢いを利用し上空に飛び上がり、さらに追撃を行う。


落牙墜刃らくがついじん!」


 上空から落下の勢いを利用して繰り出される兜割り。

 レオネスは両手で剣を構え、ディアスの攻撃を防御するが、怒涛のトビカゼ流三連撃にレオネスは後退する。


「くっ、なんて連撃だ!」


 ディアスと距離を取り、体勢を立て直すレオネス。


「剣の腕はほぼ互角か、ならば……!」


 ディアスは再び居合の構えを取る。


「トビカゼ流奥義で決める!」


 ディアスは居合の構えのままレオネスとの距離を詰める。


「居合か、なら……!」


 レオネスは突き技である突襲迅とっしゅうじんを放つ。

 高速の居合斬りに対し、リーチで勝る突きを繰り出すレオネス。

 しかし、レオネスが突襲迅とっしゅうじんを放った時には、すでにレオネスはディアスに斬られていた。


「がはっ! 何が起きた……!」


 双牙裂刃そうがれつじんの居合斬りと違い、今度はレオネスの身体に深々と居合斬りの痕が刻まれる。


「トビカゼ流奥義・抜刀砕牙ばっとうさいが。相手の動きを先読みして見切り、後の先を取る神速の抜刀術」


 リングを血で濡らしながら、フラフラとディアスから距離を取るレオネス。

 片手で剣を構え、片手で傷を押さえていた。


「その傷で戦うのは自殺行為だ、降参しろ」


 降参するように言うディアス。


「クソ痛ぇし、そうしたいところだが、そうもいかない。俺にも負けられない理由があるからな……!」


 トビカゼ流奥義・抜刀砕牙ばっとうさいがを受けながら、なおも戦う意思も見せるレオネス。


「ならば、その意地ごと叩き切る!」


 レオネスとの距離を詰めるディアス。

 ディアスは剣を振りかぶり、リングに鮮血が飛ぶ。

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