第56話 決勝戦 ~ミレスティアVSローゼリンデ~

「試合も大詰めですね! それでは、ミレスティア選手対ローゼリンデ選手! 試合開始です!」


 ミレスは魔剣エメラルディアを抜き、構える。


(魔剣エメラルディアの能力は魔法を斬り裂くわけじゃない、魔力を吸収しすぎてパンクさせないようにしないと……!)


「二勝一敗、ディアスさんには悪いけど、私で終わらせる」


 ローゼリンデが杖を振るうと、ミレスの周囲に爆炎が巻き起こる。


「最初から攻めさせてもらうよ」


 爆炎を斬り裂き、ローゼリンデに向かうミレス。

 ミレスが向かってくることは想定内であり、ローゼリンデは次の攻撃に移る。


「フリーズランス!」


 ミレスの足元から氷の槍が突き上がる。


「はあぁ!!」


 ミレスは氷の槍をかわし、ローゼリンデに斬りかかる。

 その瞬間、ミレスは爆風に吹き飛ばされる。


「なに!?」


 着地し、態勢を整えるミレスだが、何が起きたのか理解できなかった。


(接近したら爆発して吹き飛ばされた。まさか……!)


「インビジブルマイン……!」


「ええ、あなたは魔法使いというより、魔法剣士に近い。ゆえに近づかれては私の負け。だから、近づかせない!」


 ローゼリンデの周囲には見えない魔力の地雷が仕掛けられており、迂闊に近づくことは出来ないようになっていた。


「見えなければ、斬れないでしょ?」


 ローゼリンデは杖をミレスに向け、光線を照射する。


「シャイニングレイ!」


 放たれた光線を魔剣エメラルディアで受け止め防御するミレス。


(このまま受け続けたらマズい……!)


 ミレスは魔力を放出し、シャイニングレイを押し返す。

 魔剣エメラルディアの魔力でシャイニングレイの相殺に成功する。


「近づけないなら、離れて攻撃するまで!」


 ミレスは裂破連刃衝れっぱれんじんしょうで無数の衝撃波を放ち、ローゼリンデを攻撃する。


「ストーンウォール」


 ローゼリンデは石の壁を形成し、ミレスの攻撃を防ぐ。


(数でダメなら、貫通力を上げる!)


 ミレスは突襲迅とっしゅうじん裂破衝れっぱしょうを放つ。

 強烈な突きである突襲迅とっしゅうじんの勢いを上乗せした闘気の衝撃波・裂破衝れっぱしょうは貫通力を上げ、ローゼリンデのストーンウォールを貫く。

 ストーンウォールを突破されたローゼリンデは風魔法をぶつけ、裂破衝れっぱしょうの衝撃波の軌道を反らす。


「惜しかったわね……!」


 ミレスの攻撃は、あと少しのところでローゼリンデに届かなかった。

 しかし、あと少しで攻撃が直撃していたという事実がローゼリンデを動揺させる。


「剣士が私の守りを貫くとは……!」


 ローゼリンデは6つの雷の槍を作り、ミレスに向かって射出する。

 雷の槍の速度は早く、剣で防ぐのは不可能と判断したミレスは回避に専念する。

 雷の槍を回避するミレスだが、そのうちの一本が左のわき腹をかすり、雷がわき腹を焦がす。


「うぐっ!」


 火傷を負った左のわき腹を抑えるミレス。

 再び雷の槍を射出するローゼリンデ。


護衡光魔陣ごこうこうまじん!」


 ミレスは地面に剣を突き立て、光の結界を張り、雷の槍を防ぐ。

 光の結界の中でミレスは詠唱する。


「“炎よ、彼の者を焼き穿たん、フレイムジャベリン”!」


 光の結界を解き、雷の槍の仕返しに炎の槍を放つミレス。


「フリーズランス!」


 ミレスの炎の槍に氷の槍をぶつけ、相殺するローゼリンデ。

 炎の槍と氷の槍がぶつかり、周囲に蒸気が充満する。


「目くらましのつもり?」


 ローゼリンデは蒸気によってミレスの姿を見失う。

 しかし、ローゼリンデにはインビジブルマインがあるため、ミレスは容易に近づけない。

 その考えがローゼリンデの油断に繋がった。

 蒸気の中から奇襲を掛けるミレス。

 ローゼリンデの前に現れたミレスは炎の闘気・闘襲炎鬼とうしゅうえんきを放ち、遠距離攻撃を繰り出す。

 炎をまとった闘気を撃ち込まれ、防御魔法を展開していなかったローゼリンデは、炎の闘気を喰らい吹き飛ぶ。


「あぐぅ!」


 ローゼリンデは起き上がり、光魔法で火傷を治癒する。


(蒸気に隠れて、遠距離攻撃を撃ちこんでくるとは……!)


「やった! 攻撃が当たった!」


 ローゼリンデにダメージを与えたことに喜ぶミレス。


「今のままではぬるいということか」


 ローゼリンデは杖を構え、魔法を発動させる。


「アイシクルミラー」


 ローゼリンデは氷の鏡を作り出す。


「グランドスピア」


 さらに、ミレスに向かって岩の槍が襲い掛かる。

 ミレスはステップで岩の槍を回避する。


「ディープイラプション」


 ミレスが回避した場所に火柱が上がる。

 火柱を斬り裂いてミレスが転がり出てくる。


「上級魔法の連発はヤバいわね……!」


 ローゼリンデの怒涛の攻めにミレスは回避に手一杯だった。


「サンダーストライク」


 再び、ミレスに向けて雷の槍が投擲される。


「一か八か……!」


 ミレスは飛んできた雷の槍を剣で受け止め、そのまま斬撃を放つ。

 魔剣エメラルディアの魔力吸収と魔力放出の能力を応用し、サンダーストライクを吸収する前に放出し、雷の槍を撃ち返したのだ。

 ローゼリンデはアイシクルミラーで跳ね返されたサンダーストライクを防ぐが、氷と雷では相性が悪く、アイシクルミラーを貫かれてしまい、自分のサンダーストライクを喰らってしまう。


「うぐぐ……、やってくれる!」


 腹部に刺さった雷の槍を霧散させ、回復魔法で傷を塞ぐ。


「うぐ、ちょっと無茶したかも……!」


 サンダーストライクを撃ち返したミレスも無事ではなかった。

 スピードの速いサンダーストライクを撃ち返すためにミレスは通常の何倍もの集魔闘法しゅうまとうほうを使い、身体強化を行った。

 その反動は大きく、身体に多大な負荷を与えていた。

 互いに膝を突くミレスとローゼリンデ。

 ミレスは剣を、ローゼリンデは杖を支えに立ち上がる。


(魔力も体力も残り少ない、次が最後の攻撃になる)


 剣を構えるミレス。


(これが最後、これで決める)


 杖を構えるローゼリンデ。


「アルハザード流秘剣・斬衡衝竜剣ざんこうしょうりゅうけん!」


 竜を象った闘気を撃ち出すミレス。


「“天灼き、地を焦がす神の雷霆、ケラヴノス”」


 巨大な雷の槍を撃ち出すローゼリンデ。


 闘気の竜といかづちの槍は衝突し、激しい衝撃を発生させる。

 竜の牙は雷の槍を噛み砕き、その爪で敵を引き裂く。


 ローゼリンデはミレスの斬衡衝竜剣ざんこうしょうりゅうけんを受け、地に倒れ伏す。


「私の最強の魔法が破れるとは……、こんなこともあるもんなんだねぇ」


 剣を杖にして、何とか踏みとどまるミレス。


「ローゼリンデ選手ダウン! カウント入ります!」


 マオルゥのカウントが始まる。

 ローゼリンデに立ち上がる力はなく、敗北を受け入れていた。

 5カウントが経過した時に、ミレスは崩れ落ち、地面に膝を突く。


「おーっと、ミレスティア選手もダウン! ですが、先に倒れていたのはローゼリンデ選手なのでミレスティア選手の勝利です!」


「舞台は整えたわ、あとはお願いねレオネス」


 フェレティスとセンジに担がれ、リングから運ばれていくミレス。

 ミレスと入れ替わるようにレオネスがリングに上がる。

 ローゼリンデはエリュティアとマリーネに担がれ、リングから運ばれ、入れ替わりでディアスがリングに立つ。


「いよいよ大将戦! 魔剣術師ソーディア・レオネス対剣聖の再来・ディアス! 一体どんな戦いが繰り広げられるのでしょうか! この戦いを制した者が王国最強のチームです!」

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