第58話 決勝戦 ~獅子王レオネスVS狼牙王ディアス~ 下
リングに鮮血が舞う。
その血は、攻撃を仕掛けたはずのディアスの物だった。
「お前、それは……!」
後方に飛び退き、レオネスから距離を取るディアス。
傷を押さえていたレオネスの左手には真紅の鋭利な爪が生えていた。
レオネスは真紅の爪でディアスを攻撃したのだった。
「少しは驚いてくれたか? 俺のとっておきの奥の手、血魔法だ!」
会場がざわつく。
「私に隠れて夜な夜な怪しいことしてると思ったら!」
ミレスが声を上げる。
「剣魔法といい、血魔法といい、何であいつは特殊魔法ばかり身に付けるんだ……」
頭を抑えるセンジ。
「剣魔法も血魔法も、高度な魔力操作が必要だから、レオネスにとっては、とっつきやすかったんじゃない?」
復帰したルナリスはレオネスの試合を観戦し、考察する。
「それにしても、血を無駄にしないって、そういう意味だったのね……」
ルナリスは試合前にレオネスが言っていたことを思い出す。
「まあ、レオネスさんは凄いってことですね!」
よくわかっていないフェレティス。
レオネスの身体の傷は血魔法によって塞がれていた。
「さあ、戦いはここからだぜ、ディアス!」
「お前という男は、俺を何度も驚かせてくれる!」
レオネスもディアスも剣を構え直す。
「これは急展開! ディアス選手の攻撃でやられたかと思ったレオネス選手の血魔法による反撃! これは目が離せない展開になってまいりました!」
レオネスは左手の真紅の爪を振るう。
真紅の爪は、血の斬撃に変化し、ディアスへ襲い掛かる。
ディアスは血の斬撃を斬り払い、防御する。
「アルハザード流奥義の参・
レオネスは
──
闘気の斬撃を収束して放ち、離れた場所の敵を切り刻む奥義である。
「それは防ぎようがないな!」
ディアスは
ディアスが居た場所は、
「何度も撃たせるわけにはいかん!」
ディアスは
強烈な突きに、レオネスも突きで応戦する。
レオネスは
「隙は与えん!」
ディアスは魔法剣・黒爪牙を放つ。
闇の魔力が斬撃となり、レオネスへと飛来する。
レオネスは剣を下段に構え、飛んでくる黒爪牙を迎え撃つ。
「アルハザード流奥義の壱・
剣から強力な闘気の衝撃波を放出する。
闘気の奔流は黒爪牙を巻き込んでディアスへと襲い掛かる。
ディアスは闘気の奔流に向けて剣の弾丸を爆発させる
闘気の奔流は
「おおおぉぉぉ!!」
レオネスはディアスとの距離を詰め、闘気をまとった振り下ろし・
「ちっ、そうだったな……!」
ディアスはバックステップでレオネスから距離を取り、腕の痺れをほぐす。
「はぁ……、きついな……!」
レオネスは息が上がり、肩で呼吸していた。
血魔法で傷を塞いでいるとはいえ、身体を大きく斬られ、血を流した事実は変わらない。
また、血魔法で傷を塞いだのであって、治癒したわけではないため、ディアスの
「勝負を掛けるか……!」
気を高めるレオネス。
さらに血魔法・
身体能力と瞬発力をブーストさせ、レオネスはディアスと切り結ぶ。
「速い……!」
一気にディアスとの距離を詰め、斬りかかるレオネス。
赤い蒸気をまとい、超スピードを発揮するレオネスの一撃を弾くディアス。
レオネスの一撃はディアスの神速の居合のスピードに匹敵していた。
連撃で攻めるレオネス。
ディアスは繰り出される強力な一撃を防御し、弾き、回避する。
レオネスの真紅の一撃を防ぐ毎に、ディアスの体力は削られていく。
赤い魔剣と青い妖刀の軌跡が行き交う。
激しい攻防が行われ、少しずつディアスに切り傷が付けられていく。
(くっ……! 押されている! だが、長期戦に持ち込めば……!)
ダメージを受け始めるディアスだが、防御に徹し、レオネスの攻撃を捌く。
レオネスが行った
さらに、血流を加速する
ゆえにディアスは長期戦に持ち込めば、レオネスのスタミナが尽きると考えた。
しかし、ディアスの予想に反し、レオネスの攻撃は時間がたつほど激しさを増していく。
(どうなっている! 体力切れどころか、強化されている!)
ディアスは魔法剣・光重牙を繰り出し、レオネスを攻撃する。
ディアスの剣に光の剣が追従し、一振りの剣閃は三つの斬撃に分裂し、レオネスを襲う。
レオネスは紅の斬撃で三つの斬撃を弾く。
光重牙を防御したレオネスの隙を突き、レオネスから距離を取るディアス。
「どうやって光重牙を、……そうか、血の斬撃で防いだか!」
レオネスは光重牙と同じ原理で、剣に血の斬撃を追従させ、光重牙を防いだのだった。
「くっ!」
体勢を崩すレオネス。
しかし、剣を地面に突き立て、何とか踏ん張る。
「
立っているのがやっとのレオネス。
身体への負担を押して、徐々に
「何となく、こうなる気はしていた。だから血魔法を選んだんだ!」
レオネスの身体から無数の赤い触手が現れる。
赤い触手はレオネスの身体や手足に絡みつき、また、手足を貫く。
「お前、そこまでして……」
ディアスが言葉を失う。
レオネスの身体は限界を迎え、動かすのもやっとの状態であった。
そこでレオネスは血魔法を身体中に張り巡らせ、血魔法で自分の身体を魔力で操ることにしたのだった。
「俺の身体はまだ動く、まだ戦える!」
剣を構え直すレオネス。
(……なんだ)
違和感に気付くディアス。
(震えている? この俺が恐怖を感じているのか)
レオネスの気迫に無意識に恐怖を感じるディアス。
(……勝利への渇望は俺も同じだ、臆してどうする!)
ディアスは狼牙王を固く握り、震えを押し殺す。
魔力から形成された剣・
魔剣レグルスレクスの赤い斬撃と
ディアスは二振りの剣を受け止め、弾き、レオネスと切り結ぶ。
レオネスは血魔法で身体を無理やり動かしているため、アルハザード流を撃つ事が出来なくなっていた。
対するディアスもレオネスの猛攻による疲労とダメージの蓄積でトビカゼ流や魔法剣を撃つ体力が残っていなかった。
互いにただ剣を振り、攻撃し合う。
振り下ろし、弾き、斬り上げ、回避し、一進一退の攻防が続く。
レオネスの突きがディアスの左の脇腹を掠め、ディアスの剣はレオネスの左肩を斬り裂く。
互いにダメージを受け、後退し、片膝を突く。
しかし、すぐに立ち上がる二人。
限界が近い身体を勝利への渇望と精神力で奮い立たせる。
「これで最後だ……!」
レオネスは魔剣レグルスレクスと
「あれをやる気だ!」
ミレスがレオネスの行動から繰り出す技を察する。
「巨獣を倒したあの技!」
ミレスの言葉にルナリスも察する。
レオネスが天に掲げた二振りの剣は一振りの剣となる。
「
ディアスもレオネスの繰り出す攻撃を察する。
武器に
ディアスは魔力を切り裂く特性を極限まで高めた剣魔法・
剣魔法奥義といえど、もとは魔力である。
魔法のことごとくを魔力に分解して霧散させる
レオネスは
「構えが違いますよ!?」
「巨獣討伐の時は斬り上げるように放っていたのに」
一度、
「アルハザード流奥義の終・
──
アルハザード流の最終奥義であり、闘気を撃ち出す奥義の壱・
闘気の剣により、闘気の斬撃を収束した闘気の奔流を放つ、それが
さらにレオネスは
魔剣レグルスレクスが振り下ろされ、剣魔法の銀色の魔力で放たれる
「うおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
ディアスは全ての魔力を
巨大な魔力の奔流を斬り裂くディアス。
「はああああぁぁぁぁ!!!」
ついにディアスはレオネスの究極の一撃を耐え抜く。
「ハァ……、ハァ……!」
すべての魔力を使い果たし、肩で息をするディアス。
「ハァ……、ハァ……、これでも倒せないのか」
レオネスもまた、息を荒くしていた。
血魔法の効果も切れ、無理やり身体を動かす事も出来なくなり、血魔法で塞いでいた傷口から血があふれ出す。
(もう無理だ……、こいつは強すぎる……)
限界を迎えたレオネスの身体は前のめりになり、倒れ始めていた。
(すまない、師匠……)
ディアスとの力の差を受け入れ、レオネスは敗北を受け入れ始める。
「レオネスーッ!」
ミレスの叫びが朦朧としたレオネスの意識を覚醒させる。
(ここまで来れたのは俺一人だけの力じゃない。仲間が、みんながいたからここまで来れたんだ……)
「そうだ、俺は負けるわけにはいかない……!」
レオネスは歯を食いしばり、足を踏み出し倒れかけた身体を起き上がらせる。
そして、よろけながらもディアスの元へ歩き出す。
手に力が入らず、魔剣レグルスレクスはレオネスの手から抜け落ちる。
それでも歩み続けるレオネス。
「何がお前を支える! 剣聖の弟子というプライドか!」
ディアスもレオネスの方へ歩き出す。
その手には狼牙王は握られていなかった。
「この戦いは俺だけの戦いじゃない、
レオネスとディアスが対峙する。
お互いに拳を構える。
「仲間の戦いに報いるためにも、俺は負けるわけにはいかないんだ!」
レオネスとディアスの拳が交差する。
レオネスが最後に選んだのは師匠に恥じぬ栄誉より、仲間と共に掴む勝利だった。
「俺の、負けだ……」
ディアスがリングに沈む。
激戦を制したのはレオネスだった。
「レ、レオネス選手の勝利ー! 優勝は
静まり返っていた観客席から歓声と拍手が沸き起こる。
「やった! やりましたよ!」
「優勝なんて夢みたい……」
「やったな、レオネス!」
「レオネス……!」
「やったぜ……!」
レオネスもリングへと倒れ込む。
「レオネスっ!」
レオネスに駆け寄るミレスたち。
仲間に向かってVサインを送るレオネス。
「死にそうだけど、何とか生きてる」
「早くこれを飲んで!」
レオネスの口にエリクサーをねじ込むミレス。
「ぷはっ、少し寝る、ぜ……」
レオネスは気絶するように眠り込む。
「あれだけの激戦だ、こうなるのも仕方ないか」
センジがレオネスを背負い、控室へと運んでいく。
「惜しかったですね、ディアスさん。まあ、これをどうぞ」
ディアスの元へ駆けつけたディアスの部下たち。
ローゼリンデはディアスの口にエリクサーを流し込む。
「最後まで剣聖にこだわった俺と、仲間のために戦った
「どうでしょうね、強い方が勝つ。戦いってそういうものでしょう?」
「お前はいつも優しくないな」
「そんなことないですよ? 倒れた上司にエリクサーを飲ませるくらいには優しいです」
「ローゼちゃん、あんまりフランシア隊長をいじめるんじゃないよ」
ジャックがディアスを抱える。
「我々も精進しなければいけませんね」
マリーネがディアスに言葉を掛ける。
「そうだな、この借りはいずれ返さないとな」
ディアス班も控室へと戻っていく。
「さあ、優勝チームが決まりました! 今回の結果はこちらになります!」
「一日間の選手の療養期間を経て、表彰式と閉会式を行います!」
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