最終話 エピローグ ~剣聖を継ぐ者~

 激動のエルスペリオル王国・武闘武術大会から一カ月。

 レオネス達はエルネスの森を訪れていた。


 エルネスの森。

 リフィアの町から少し離れた場所にある樹海で、レオネスが剣聖ディルコットと出会い、修行を積んだ場所である。


「ここに来るのも久しぶりだな。てか、外出そのものが久しぶりだ」


 森の中を歩きながらレオネスが呟く。


「誰かさんは血魔法で無茶するから、全治一カ月で病院生活だったからねぇ」


 ルナリスがレオネスの方を向いて言う。


「フェレティス、やってやれ」


「はい!」


「ひゃぁ……!」


 レオネスの指示に従い、フェレティスがルナリスの尻尾を揉む。


「お前たちはいつもこんな感じなのか?」


「まあ、大体は」


 困惑するディアスと平然としているミレス。

 レオネス達、剣の魔術師ウィザーディング・ブレイドに、ディアス班も同行していた。


「ここだ」


 森の奥の一軒家。

 かつて、レオネスとテューンが暮らしていた場所である。


「ご先祖様はここに住んでたんだ……」


 感慨深く家を見つめるミレス。

 レオネスは家の鍵を開ける。


「何もないけど、まあ、入れよ」


 レオネスに招かれ、家の中に入るミレスたち。


「って、本当に何もないじゃん!」


 家の中には家具や備品といったものは一切なく、備え付けの暖炉などがあるだけだった。


「帰ってくるつもりが無かったから、旅に出るときに全部処分したんだ」


 レオネスはきっぱりと答える。


「剣聖の私物が見れるかと思ったんだがな……」


 肩を落とすセンジ。


「まあ、物品があると泥棒に入られるかもしれないから、これでよかったんじゃない?」


 ローゼリンデがフォローする。


「まあ、大事な物は地下室にあるんだけどな!」


 レオネスの言葉に全員の眼の色が変わる。


「地下に何があるんだい?」


 ジャックがレオネスに問いかける。


「見たい?」


 ニヤニヤと笑うレオネス。


「貴様、じらすつもりか!」


 マリーネがレオネスに声を荒げる。


「わかった、わかった」


 レオネスは部屋の隅の方へと移動する。

 その様子を見るミレスたち。

 レオネスが魔法陣を展開すると、床に隠し扉が現れる。


「隠蔽の魔法か」


 ディアスが隠し扉に近づく。


「ここのことは他言無用だぞ」


 隠し扉を開け、地下へと降りて行くレオネスとそれに続くミレスたち。


「これは……!」


 そこにはテューンの武器コレクションが納められていた。


「これはロイヤルセイバー! 50年前に製造が終了したと聞くが、現物を見れるとは!」


 センジが壁に掛かっている剣を鑑賞する。


「わぁ、このダガー、欲しい」


 エリュティアが飾ってるダガーを物欲しげに眺める。


「まるで刀剣博物館だね」


 ミレスもまた、テューンのコレクションに息をのむ。


「つまり、レオネスさんのお師匠さんは凄いってことですね!」


 よくわかっていないフェレティス。


「……師匠」


 レオネスは使い古された木刀を見つめる。

 それは、テューンとの修行で用いられた木刀であった。


 一通りテューンのコレクションを見て回った一行は地上へと戻る。


「さてと、今回の目的を忘れていないだろうな?」


 テューンのコレクションにテンションが上がっている一向にレオネスが声を掛ける。


「もちろん」


「当然だ」


 ディアスやミレスは魔法の小袋マジックポーチから花や酒を取り出す。


「こっちだ」


 レオネスは家の裏へと案内する。


「テューン様……」


 そこにあったのは剣聖テューン・ディルコットの墓だった。

 レオネスはテューンの墓参りに、テューンの末裔を連れて来たのだった。


「師匠は騒がしいのが嫌いだったが、今日ぐらいは許してくれるだろう」


 一行は墓前に花や酒を備える。


「ねえ、レオネス、ご先祖様はどんな人だった?」


 ミレスがレオネスに問う。


「超厳しい。多分、容赦って言葉を知らないと思う」


 レオネスの言葉に、目が点になるミレス。


「まあ、でも、魔物に襲われた俺を助けようとしてくれたり、俺を拾って面倒を見てくれたり、なんだかんだ優しい人だったよ」


 レオネスの優しい笑みにテューンの人となりを想像するミレス。


「そういうところはディアスとミレスきみらに似てるかもな」


「……そう?」


「ディアスさん、うれしそう」


「余計な事を言うな」



◇◇◇



 墓参りを終えた一行はリフィアの町に戻る。


「俺たちは王都に戻る、お前たちはどうするんだ?」


「俺たちは冒険者だ、これからも冒険を続けるさ」


 ディアスの問いにレオネスが答える。


「そうか、これからの活躍に期待しよう。さらばだ剣帝レオネス


「またな、二代目剣聖ディアス


 ディアス班と別れる剣の魔術師ウィザーディング・ブレイド


「レオネスは剣聖の名を継がなかったけど、いいの?」


 ミレスはレオネスに尋ねる。


「ああ、二代目じゃなくて、師匠みたいに何かの初代になろうと思ってな。そっちの方が師匠と肩を並べられそうだろ?」


 レオネスの言葉にクスリと笑うミレス。


「それで、何の初代になる気?」


 ルナリスがレオネスに尋ねる。


「血刀術、なんてどうだ? 剣魔法と血魔法を組み合わせた俺のオリジナルだ!」


「誰も習得できずに、一代で終わりそうなんですが、それは……」


 フェレティスがレオネスにツッコミを入れる。


「そこはまあ、使いやすいように工夫してだな!」


 レオネスが具体的な理論の説明を始めるが、フェレティスには理解できなかった。


「俺たちもそろそろ行くか」


 魔術理論を説明するレオネスを止めるセンジ。


「そうだな、エルスペリオル王国・武闘武術大会に優勝して王国最強なんて言ったって、冒険者にはまだ上がある。大会に参加しなかったSSランクやSSSランクの冒険者も多い」


 レオネスは王都の方角を見る。


「目指すはSSSクランね!」


 ミレスがレオネスに賛同する。


「そういうことだ、俺たちの冒険はまだ終わらない」


 レオネス達はさらなる高みへ向かって歩み続ける。




魔剣術師冒険譚

~無能と呼ばれ、パーティを追放されたが、魔法剣士に拾われて才能開花、剣術無双で成り上がる~


--完--

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魔剣術師冒険譚~無能と呼ばれ、パーティを追放されたが、魔法剣士に拾われて才能開花、剣術無双で成り上がる~ シン01 @Shin-01

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