第48話 準決勝 ~VSビフレスト~ ③

 二挺拳銃を構え直すルナリス。

 分身を含め、リング内には3人のルナリスが存在していた。


(ただでさえ、何をしているのか分からないんだ。それなのにこれ以上、攻撃の手を増やされるのはマズい)


 マリーは銃を持つルナリスに向かう。

 近づいてくるマリーにルナリスは二挺拳銃で応戦する。


「アサルトファイア!」


 ルナリスは二挺拳銃を高速連射し、マリーに集中砲火する。


「くっ!」


 フェレティスの突撃銃の比ではない魔力弾の量にマリーは回避と防御に専念せざるを得なくなる。

 走ることで少しでも魔力弾の命中率を下げようと考えるマリーであるが、ルナリスの正確無比の銃撃は走った程度で避けられるものではなかった。

 マリーは立ち止まり、魔力弾を弾くことに専念する。

 防御に専念したマリーは背後から近づくルナリスの分身に気付けなかった。


「チェックメイト」


「なにっ!」


 ルナリスの銃撃が止んだと思えば、マリーは後頭部に銃を突きつけられていた。

 マリーは先ほどまで銃撃していたルナリスの方を見る。

 そこには確かにルナリスが居た。


(ん? さっきまで銃撃していたはずなのに、武器を持っていない?)


「降参してくれると嬉しいんだけど?」


「それも一つの手だが、お前のやっている事が何となくわかった」


「……へぇ?」


 マリーは剣を地面に突き立てる。


堅岩隆槍けんがんりゅうそう!」


「っ!」


 ルナリスの足元から岩の槍が飛び出す。

 岩の槍に貫かれたルナリスは、影となって消える。

 そのまま正面にいるルナリスに向かうマリー。


「確率は二分の一だ!」


 マリーの攻撃を防ぐルナリス。


「こちらがアタリだったようだな!」


「むぅ!」


 ルナリスの表情から余裕の笑みが消える。

 マリーの剣を弾き、距離を取るルナリス。


「お前は攻撃を受ける寸前に分身と自分の位置を入れ替えていたんだ、そうだろう?」


「ご名答、さすがは上級冒険者といったところかしら」


 ──残影疾走シャドウシフト

 分身と自分の位置を瞬時に入れ替える技である。


火龍炎牙かりゅうえんが!」


 マリーは最後のルナリスの分身に炎の斬撃を繰り出し、霧散させる。


「これでもう逃げられないぞ!」


「そうみたいね。ま、もう逃げる必要もないけど」


 マリーは今までのルナリスとの攻防でかなり消耗していた。

 対するルナリスは、まだ余力を残していた。


「一気に決めるわよ、タクティカルバレット!」


 ルナリスは二挺拳銃を回転させ、銃を構える。

 マリーは防御の体勢を取り、銃撃を迎え撃つ。

 ルナリスの放つ魔力弾は様々な個所を狙い、また、高速連射される。


(速い、それにさっきより数が多い!)


 一か所を狙ったアサルトファイアに比べ、タクティカルバレットは様々な個所を攻撃するため、防御の難易度が跳ね上がる。

 魔力弾をさばき切れず、徐々にダメージを受け、片膝を突くマリー。


(激しい攻撃だが、一発の攻撃力は低い。上手く体勢を立て直せば……!)


「反撃なんてさせないわ!」


 反撃の糸口を探すマリーに止めとなる強力な魔力弾が直撃する。


「かはっ!」


 溜め撃ちされた魔力弾を喰らい、吹き飛ぶマリー。

 マリーはリングに倒れ、起き上がろうとするが、身体に力が入らない。


「魔力弾を浴び過ぎたか……!」


「マリー選手ダウン! 勝者ルナリス選手!」


 テンカウントが終わり、マリーは敗北する。


「もっと早く残影疾走シャドウシフトを見破られてたら、ヤバかったかも」


 仲間に運ばれていくマリーを見ながら呟くルナリス。


「それでは四戦目! ルナリス選手対ティファ選手! 両者位置について!」


 次の対戦相手はティファ・フォイエニクス。

 炎の巫女の異名を持つ冒険者である。


「試合開始ぃ!」


「魔術師が相手か、早めに終わらせたいところね……」


 ルナリスはティファに先制攻撃する。

 しかし、ティファは魔力壁を展開し、ルナリスの銃撃を防ぐ。


「やっぱりそう来たか……」


 ルナリスが危惧していたことが起こってしまう。

 魔力供給タイプの魔力銃の魔力弾は他の魔力と反発する特性を持っており、他の魔力由来のものには弾かれてしまうのである。

 そのため、魔力壁のような魔力による遮蔽物は魔力供給タイプの魔力銃の天敵となる。


「これはもう、近づいて殴るしかないわね……」


 ルナリスは一体だけ分身を作り出す。


 ──影分身オンブルゲンガー

 込める魔力が多いほど強くなる分身である。


 ルナリスは現在の魔力の半分を使い、影分身オンブルゲンガーを作り出す。

 分身と二人で接近戦をする作戦である。


(どこまでやれるか分からないけど、ミレスに繋ぐために弱らせないと!)


 ルナリスは分身と二手に別れ、ティファに接近する。


「ファイヤートルネード!」


 ティファは杖を回転させ、地面に突き立て魔法を発動させる。

 ティファが起こした炎の竜巻は二つに別れ、ルナリスと分身へと向かう。


「ヤバっ!」


 ルナリスは魔力を溜め、通常より強力な魔力弾を撃つ技、チャージショットを繰り出し、炎の竜巻の軌道を反らす。

 遠距離攻撃の手段が無い分身は炎の竜巻に巻き込まれ、影となり消滅する。


「うぇ、いきなりやられた!?」


 早くも魔力の半分を込めた分身が倒されたことに焦りを感じるルナリス。


「こうなったら、魔力量は少ないけど、一か八か!」


 ルナリスは片方の銃をホルスターに戻し、両手で銃を構える。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る