第12話 過去 ~在りし日の思い出~ (後編)
変わり始めたのは
クランが成長し、メンバーも経験を積み、冒険者の仕事にも慣れてきた。
メンバーに目立たない縁の下の力持ちであるレオネスの働きより、戦闘職の活躍によって、ここまでクランが成長した、そんな傲りが出始めたのである。
「アランさん、上に居ます! 先に倒しましょう」
「うるさい! 目の前のやつを優先する!」
そのため、戦闘時のレオネスのアドバイスをアラン達は聞かないようになり始めた。
「おいレオネス。目の前の敵から倒しても、うまく行ったじゃねぇか」
「そうですね、すみません……」
メンバーの実力も上がっているために、レオネスのアドバイスを無視しても、敵を倒せるくらいの力がついていた。
「チッ。そもそも、
次第にアランは、レオネスを戦わない癖に口を出す面倒な奴と思うようになる。
アランのそんな態度は他のメンバーに伝染し、次第にレオネスはクランの荷物として冷遇されていくようになる。
「せめて、戦闘以外のところは邪魔にならないようにしないと……」
レオネスは、自分は戦闘職ではないため、他メンバーの邪魔にはならないように努めようと努力する。
前衛への助言はやめたレオネスだが、以前と変わらず、冒険に必要な物の買い出し、後衛への補助は行っていた。
そして、アラン達はもはや戦えないレオネスが不要だと考えていた。
レオネスが買い出しに行っている間の事であった。
「レオネスの事だが、
アランはレオネスを除いたメンバーを集め、レオネスの事について話す。
「あいつは便利ではある。だが、戦闘では正直、足手まといだ」
クラムはアランの言葉に同意する。
「あたしらもAランクだし、これからの依頼で死なれたりしたら寝覚めが悪いわ」
ファニアもレオネスの追放に賛成であった。
「あいつの武器の補充は便利だけど、まあ、なくても支障は無いか」
ラントンもレオネスが居なくても支障は無いと考えた。
「みんな異論は無しだな。それじゃ、レオネスが帰ってきたら話すか」
自分の居ない所で、自分の追放の話が行われているなど夢にも思わないレオネスは買い出しから帰ってきて、買ってきたアイテムを片付ける。
「レオネス、来てくれ」
「何ですか?」
アランに呼ばれ、部屋へと赴くレオネス。
そこで告げられたのは、思いもよらぬ言葉だった。
「レオネス、お前は今日でクビだ」
◆◆◆
「俺に対する風当たりが強い自覚はあったが、ランクの昇格が出来るかどうかでストレスが溜まっている物だと思っていた。まさか、クランを追い出されるとは思わなかった」
レオネスは自虐じみた笑いを浮かべミレスに話した。
「そのあと、剣の師匠と出会って修行して、今に至るわけだ」
「そうだったの……」
レオネスの過去を聞き、ミレスはなんと言葉を掛ければ良いのか分からなかった。
仲間だと信じていた者に、ある日突然、クランを追い出されたのだ。
今の自分に置き換えて考えれば、ある日突然、レオネスに必要ないと切り捨てられることだった。
それは辛く悲しい。
果たして、自分は耐えられるだろうか。
「その、なんて言ったらいいか……」
ミレスは言葉に詰まる。
「昔の話さ、今はミレスとクランを組んで楽しくやってるしな!」
「そ、そう?」
自分といて楽しいといわれ、若干の照れくささを感じるミレス。
「それにしても、ひどい話だよね。レオネスも頑張ってたのに」
「目立たない仕事をしてたからな」
「戦闘職至上主義、いるのよね。戦えるから偉いと勘違いする馬鹿が。サポートあってこその戦闘職だっていうのに」
「そういってくれるミレスと組めて良かったよ」
「もう、さらっとそういうことを言う!」
「俺はそういう奴なんだ」
頬を赤くするミレスと、それをからかうレオネス。
二人の会話が一段落着いたときにドアが叩かれた。
「どちら様?」
ミレスが聞く。
「ギルドの者です。
「俺だ」
レオネスはドアを開け、応対する。
「レオネス様宛に緊急
レオネス宛に緊急
「俺に緊急
「さあ? 行ってみましょう」
レオネスとミレスは今度こそギルドへと向かった。
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