第20話 ルナリス ~狐人族の魔法銃士~

「……悲鳴みたいな声、聞こえませんでした?」


 フェレティスが二人に問う。


「特に聞こえなかったけど?」


「俺も聞こえなかったけどな」


「聞き違いかな?」


 足を止めたフェレティスは再び歩き出す。


「まあ、待てよ。もしかしたら、助けを求めている奴がいるかもしれない。ちょっと周囲を探してみようぜ」


「そうね。ま、あとは帰るだけだし、何もなければそれはそれで、ってことで」


 レオネスの提案で、フェレティスが聞いた悲鳴の主を探すことにする。


「それで、フェレティス。どっちの方から聞こえて来たんだ?」


「う~ん、こっちの方からだった気がします」


「行ってみましょうか」


 フェレティスの後をついて行くレオネスとミレス。

 ある程度進んだところで、レオネスとミレスも気が付く。


「誰か戦っているな」


「行ってみましょう」


 戦いの音のする方へと向かうレオネス達、そこには三匹の人型の魔物と戦う冒険者が居た。

 狐人族アレプ魔法銃士マジックガンナーの冒険者は、魔物を相手に苦戦しており、負傷もしていた。


「加勢するぞ!」


 狐人族アレプの冒険者に飛び掛かる魔物に、レオネスは闘気の斬撃を撃ち出し、魔物を叩き落とす。


 ──アルハザード流・裂破衝れっぱしょう

 剣から闘気を衝撃波として放つ遠距離攻撃。


 レオネスの裂破衝れっぱしょうにより、残りの魔物もレオネス達の存在に気づく。


「俺が二体やる、残りは任せたぞ」


「分かったわ!」


 レオネスは向かってくる魔物二体の相手を引き受け、ミレスとフェレティスはレオネスが撃ち落とした魔物と対峙する。


 レオネスは向かってくる魔物に、無数の魔力の戦輪チャクラムを放つ、円輪連刃アサルトチャクラムを展開する。

 円輪連刃アサルトチャクラムの斬撃により、魔物は防御の体勢を取る。

 魔物の動きが止まった隙にレオネスは一気に距離を詰め、突き技である突襲迅とっしゅうじんを繰り出す。

 突襲迅とっしゅうじんによる強烈な突きを受けた魔物は吹き飛び、地に倒れ伏す。


「あと一体」


 もう一体の魔物に攻撃を仕掛けるレオネスだが、レオネスの剣は魔物の鱗に防がれる。


「お前は少し出来る奴みたいだな……!」



 狐人族アレプの冒険者をかばうように立つミレスとフェレティス。

 ミレスは魔物へ向けてウィンドスラッシュを放つ。

 しかし、風の刃は魔物の前でかき消されてしまう。


「魔法防御!? 厄介ね」


 ミレスは腰の細剣を抜き、前に出る。


「フェレティス、援護して!」


「はい!」


 フェレティスは魔法銃を撃ち、魔物を攻撃する。

 しかし、魔力弾は魔物の魔法防御に弾かれ、ダメージを与える事が出来ない。


「レオネスほど速くはないけど……!」


 効かないとはいえ、無数に撃ち込まれる魔力弾に気を取られる魔物に近づき、ミレスは剣技を繰り出す。


 ──アルハザード流・瞬連嵐牙しゅんれんらんが

 無数の突きを繰り出す瞬連突しゅんれんとつに、風の魔力をまとわせ、暴風の如き連続突きを繰り出す魔法剣である。

 アルハザード流は無属性の魔法剣であるが、属性を付加することで一部の技を強化・変化させる事が出来るのだ。


 暴風の如き突きで魔物の身を削り、止めとして闘襲撃とうしゅうげきで闘気をぶつけ、魔物を吹き飛ばす。


 魔物との交戦中にミレスのアルハザード流の派生技を見たレオネスはミレスに応援を頼む。


「ミレス、こっちに土魔法を!」


 ミレスはレオネスに向けて土魔法を発動する。

 土属性をまとった剣でレオネスは、魔法剣を放つ。


「いかに鱗が硬かろうが!」


 ──アルハザード流・剛衝発破ごうしょうはっぱ

 衝撃波を伴う剛剣である剛衝破ごうしょうはに土の魔力をまとわせ、剣を振り下ろし、地面を隆起、岩の槍を発生させて攻撃する魔法剣である。


 無数の岩の槍に鱗を砕かれ、魔物は身体を貫かれる。


「これで終わりか」


「こっちも片付いたわよ」


 ミレスたちの方へ駆け寄るレオネス。


「お前の学んでた流派って、アルハザード流だったんだな」


「そうよ、実はレオネスと同門だったわけ」


「っと、それよりもだ。大丈夫か?」


 負傷している狐人族アレプの冒険者に声をかけるレオネス。


「ありがとう、助かったわ」


 狐人族アレプの冒険者は右腕を抑えながら礼を言う。


「見てください!」


 フェレティスの言葉に、レオネス達はフェレティスの指さす方を見る。

 倒した三匹の人型の魔物は、人間へと姿を変えたのだ。


「人間が魔物化してたっていうの!?」


 ミレスの言葉に、野を駆ける牙獣ワイルドファングとの戦いで魔物化したアランが脳裏をよぎるレオネス。


悪魔の種エビルシードか」


「そうよ」


 レオネスの言葉に狐人族アレプの冒険者が同意する。


「私はルナリス。ルナリス・ウルペクスよ」


 狐人族アレプの冒険者、ルナリスは名乗り、レオネス達も名乗る。


「聞きたい事はいろいろあるが、手当てが先だな。肩を貸そう」


「悪いわね」


 レオネスはルナリスを担ぎ、ルナリスの手当てのため、剣の魔術師ウィザーディング・ブレイドの宿屋へ戻る事となる。


 この出会いが新たな戦いの始まりの合図だった……。

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